リウーを待ちながら【2巻ネタバレ感想】感染拡大…医者にとって勝ち目のない戦いが始まる…

リウーを待ちながら(2巻)

リウーを待ちながら』全3巻中の2巻である。

どうでもいいことを最初に書いておくと、2巻冒頭で判明するのだが疫研というのは「国立疫病研究所」という架空の組織の略称だったらしい。

リウーを待ちながら

リウーを待ちながら【2巻あらすじ】

横走中央病院の周囲には(自衛隊の協力によるものと思われるが)テントが張り巡らされ、もはや完全に野戦病院のごとき様相を呈している。実際、医師たちにとっての戦場だ。

だが、医者がいくら頑張ったところで、このペストには効く薬がないのである。薬剤耐性ペストの患者は、最初に一人発生したとして、3日後に5人に増える。その5人がさらに3日間で5人ずつの患者を増やす。この時点で患者は既に31人となる。

そして次の3日を過ぎると、患者の数は156名となる。お分かりだろうか。これは、初めから医者にとって勝ち目のない戦いなのである。

リウーを待ちながら【2巻ネタバレ】

リウーを待ちながら(2巻)

人口十万たらずの町の火葬場のキャパシティなどとっくにオーバーしてしまっているので、亡くなった患者たちは仮埋葬されることになった。玉木は恐ろしく闘争的な性格の持ち主であり、この状況でもなお治療を続けることをあきらめていないのだが、対して飄然(ひょうぜん)たる性格の持ち主である原神は言う。僕らにはもう人類がペニシリンを発見する以前の治療しかできない、僕らはもう負けたんだ、と。

だが、原神は別に諦めているわけではない。彼はまったく別のことを考えている。彼はテレビに出演して、事態一通り本当のことを喋った。この大疫病について、本当のことを、である。

結果として、彼のもとに「首相」から電話がかかってきた。そして、日本政府はまず緊急事態宣言を発令、そしてそれから間もなく、内閣総理大臣と静岡県知事の名のもと、自衛隊による横走市の封鎖が断行されることになる。

封鎖、と一口にいえば一言だが、説明せずともお分かりいただけるかと思うがここは静岡県で、東西交通の要衝であり、国道なども通っている。それを完全に全周封鎖しようというのだからただごとではないし、ただごとでは済まない。

ちなみに、政府の動きは早かったため、玉木などにとっては寝耳に水の事態であった。玉木は原神に詰め寄る。この町の住民たちをここに閉じ込めてみんな死なせるつもりなのか、と。

原神は平然と答える。

「全部じゃない、三分の二だ。中世と同じならね。この病をこの町だけにとどめておけば、死者は六万人で済む」。

話は終わらない。

「だが、日本全体に広がったら八千万人。世界に広がったら50億人が死ぬ」。

この頃、治療らしい治療を諦めるに至った玉木は、せめて助からない患者が望むこと(家族に会うとか)をさせてやる、という行動に方針を転換していた。その助からない患者の中には、横走中央病院の院長までもが含まれていた。

ところでしかし自衛隊による封鎖も完璧ではなかった。恐怖にかられた人や、その他いろいろな事情のもと、封鎖を抜けて逃げ出す人々が現れ始める。それは「脱走(だつばしり)」と呼ばれた。

未感染者から感染者に対する差別、そして市外の人間から横走の関係者に対する差別なども始まった。

封鎖に当たっている側の自衛隊員にまで動揺と混乱は広がり始めた。兵が軍から逃げることを脱柵というのだが、脱柵した上に脱走(だつばしり)する隊員がちらほらと現れ始めたのである。ある隊員は、死の床にある母の死に目に会いたいという動機から、これを試みるに至る。ここまでが2巻である。

リウーを待ちながら【2巻の感想】

リウーを待ちながら(2巻)

2巻で説明があるのだが、この作品のタイトルにある「リウー」とは、アルベール・カミュの小説『ペスト』の登場人物である医師ベルナール・リウーのことである。

どういう作品なのか読んだことはないので筆者もよくは知らんのだが、このカミュの『ペスト』については最終巻でもまた触れることになるので、ご留意いただきたい。


リウーを待ちながら

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原作・著者朱戸アオ
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富士山麓の美しい街・S県横走市──。駐屯している自衛隊員が吐血し昏倒。同じ症状の患者が相次いで死亡した。病院には患者が詰めかけ、抗生剤は不足、病因はわからないまま事態は悪化の一途をたどる。それが、内科医・玉木涼穂が彷徨うことになる「煉獄」の入り口だった。生活感溢れる緻密な描写が絶望を増幅する。医療サスペンスの新星が描くアウトブレイク前夜!!

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