漫画「新婚のいろはさん」ネタバレ感想!シュールギャグとヒロインの魅力が絶妙なラブコメ!

新婚のいろはさん

漫画「新婚のいろはさん」あらすじ

新妻彩葉(にいづま いろは)は新妻である。つまり、新妻という苗字の、新婚の奥さんである。旦那様の名前は始(はじめ)。軒並(のきなみ)ライジという名前で、漫画家をやっている。

この物語は、そんな二人の、何がどうということもない平和で幸福な日常を描いたラブコメディー4コマ漫画である。

漫画「新婚のいろはさん」ネタバレ&感想

新婚のいろはさん

内容そのものは、ストーリーというほどのストーリーもない。ほんとうに新婚ほやほやの二人が、第一話では新居となるマンションで同居を始める(ちなみに入籍から数日後)。一緒に買い物に行ったり、ピクニックに行ったり、お隣さんと仲良くなったり、そんな感じだ。

OYSTER氏の作風の特色であるシュールギャグは健在であるが、比率としては、「いろはさんの可愛さ」に比重が置かれている度合いの方が強い。OYSTER氏は過去何作となく「可愛い女の子が出てくるシュールギャグ漫画」をものにしているが(なお、単著単行本は全てチェック済みである)、これが過去最も「可愛さ比重」にウェイトが置かれた作品であると見て間違いない。

そして実際、いろはさんの可愛さは過去のOYSTERヒロインの中でも群を抜いた次元にある。

さて。主人公の片割れ(そもそも名前のついた登場キャラクターは三人しか出ないのだが)、新妻始こと漫画家・軒並ライジの作品であると称する漫画が作中作として登場するのだが、明らかにOYSTER氏の普段のギャグ漫画そのまんまである。

そして、最初の数ページを読んだだけでこれはまず間違いないなと思ったので調べてみたのだが、OYSTER氏はいつの間にかご結婚されていた。そうだろうと思ったのである。この作品、実際に結婚したことがある人間にしかまず描けない類の作品だ。(なお、OYSTER氏の結婚の相手が誰であるかとか、調べれば分かることではあるが、そのあたりのことは一応伏せておく)

俗に、「経験したことがないことは描けない」とか「経験したことがないことでも描ける、そうでなければ人殺しにしか殺し屋の作品が描けなくなる」とか、いろいろな言われ方がある。

後者の理屈は、もっともではあるのだが、ある意味において、前者にも一理はあると、筆者は思う。例えば、実際には猫が好きではない作者が観衆受けだけを狙って作った猫作品と、実際に猫好きである作者が作った猫作品は、空気感が異なる。これは同じ作者であってもなおそうである。猫を飼い始めた漫画家が、その後に描いた猫漫画と、その前に描いた猫漫画では、やはり「違い」があるのである。実際、エッセイでそんなことを描いている漫画家を前に見たことがある。

必ずしもそれは、リアリティーとか、リアリズムとか、そうしただけの話ではないのだろうと、思う。作者と世界との距離というものは、どうしたって、どんな作者においてでも、作品と世界の関係を規定するものだ。

ところで、漫画家OYSTERのファンとして、OYSTERの作品史の上でこの作品を解すると、どう取ることができるか。筆者の率直な感慨を書こう。

これだ。これを待っていた。これをOYSTERに求めていたんだ。そんな思いである。

そもそも、本来シュールギャグと萌えというのは、そんなに食い合わせのいいものではない。シュールになればなるほどヒロインの萌えは侵食されるし、萌えを強調すれば、作品のシュールさは薄れていく。

だがこの作品は、シュールギャグが生きているにも関わらず、ヒロインが輝いている。何分人妻であるので萌え、というのとはちょっと違う部分はあるが、いずれにせよ、ヒロインの魅力と、ギャグ漫画としてのバランスが絶妙なのである。

これまでは、OYSTER氏の作品の中でのベストを人に紹介するときは、古いのを承知の上で『男爵校長』の無印、と言わざるを得なかったのだが、今後は胸を張って、この作品が氏の代表作である、と言っていこうと思う。


新婚のいろはさん

新婚のいろはさん

原作・著者OYSTER
価格660円(税込)

なんでもない毎日が、とても幸せ…。鬼才が送る、新婚夫婦の日常4コマ。
新居に引っ越してきた、いろはさんとハジメくん夫婦。ゼロから、少しずつ自分たちの生活を作っていきます。家電を買いに出かけたり、深夜にコンビニへ行ったり、そんななんでもない日常が、二人にはかけがえのない幸福なのです。読むものをたまらなくあたたかい気持ちにさせる(ギャグの冴えもそのままの)一冊です。

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