戦争は女の顔をしていない【3巻ネタバレ】現在の世界情勢もあって考えさせられる作品!

戦争は女の顔をしていない(3)

3巻である。内容は今回も壮絶の一言。

戦争は女の顔をしていない【3巻】あらすじ

戦争は女の顔をしていない(3)

2巻から続きとなる12話(中・後編)と、その先17話までが収録されている。テーマはずっと同じなので、前と同じように紹介していこう。

戦争は女の顔をしていない(2)

戦争は女の顔をしていない【3巻】ネタバレ

戦争は女の顔をしていない(3)

12話

夫は戦争に連れていかれ、それっきり帰ってこなかった、という、こう言っては悪いが構図としてはよくある種類の話。しかし、通り一遍の陳腐な作り話とこれが決定的に違うのは、これは取材に基づいた実話の話であって、そしてあの時代、確かに何千何万、いやもっと上の桁か、そういう数に及んでそういう事実があったのだ、という点である。

13話

作者の取材執筆メモに基づく掌編。作者は(取材当時)まだ若く、そして取材対象の人々はみな老境にあったので、それがよくも悪くも取材に大きく影響した、というような話が書かれている。戦争体験という重たいものを引き出す取材は、なかなかなまなかならぬものがあったらしい。

14話

パルチザンに入っていた女性の話。彼女がパルチザンに入ったので、家族(母親)がドイツ人に連れていかれた。ドイツ人たちは森でパトロールをするとき、地元住民を先頭に立てるのである。先頭を歩いていれば地雷があったとき最初に踏むからである。何が怖いって、そういう状況でも(ちなみにそういう人質は大勢いて彼女の家族だけではない)、パルチザンであるからには銃撃を加えなければならなくなるかもしれない、いや実際になったこともあったのだそうだ。ちなみにその母親は、ドイツ軍が撤退していくときに撃ち殺して埋めていった。彼女はそれを掘り返し、水で洗って清めたそうな。

15話

准医師(というのがあるらしい。よくわからないが)である女性の話。戦場の最前線で妊婦が取り残され、頼まれてその子供を取り上げたという話が記された、これも短い話である。子供は無事に生まれ、その医者の名前をもらったが、その後どうなったのかということは分からない。取材も調査も不可能であろうし。

16話

衛星指導員(伍長)の話。基本的にはソ連軍とて女性を前線に出したがりはしなかったのだが、志願して志願して熱意で前線に出たという種類の女性である。ある日、前線で、負傷した兵士が慈悲を乞うた(撃ち殺してくれという意味)。彼女はその銃を持って、そのへんを走っている輸送車を銃撃、無理やり止まらせ、その負傷者を拾って後送したという。

ちなみにこの16話は非常に長い。スターリングラードの激戦に参加していたりもするが、その話は割愛する。それ以上にある意味悲惨なのが、前線で知り合った仕官と結婚するのだが、戦後になってから銃後にいた女性たちに「戦場帰りの女」として壮絶な差別を受けたという話がまあ壮絶で壮絶で。

17話

パルチザンに参加していた医者の話。子供に会いに帰ったら、自分のことが親だと分からないし、石鹸(貴重品)を渡したらそれがなんだかわからず食べようとしたという。そんな暮らしだったのである。

このエピソードで一番心を打たれるのは、負傷したドイツ兵が土を掴んで呻いていたら、ソ連兵が「土に触れるな この大地は我々のものだ」と言ったというくだりである。

戦争は女の顔をしていない【3巻】感想

戦争は女の顔をしていない(3)

これについて紹介するのに、この話をまったくしないのも逆におかしいような気がするから、書いておくが。これを書いている現在、ロシアとウクライナが戦争の真っ最中である。ちなみにこの作品の主題は「ソ連」なので、ロシアもウクライナもそれぞれ元構成国という立場だ(そう言われたくない人もいるらしいが……)。

私はそんな問題について大上段から偉そうなことを言う立場にないので、一切論評のようなことをするつもりはないが、そんな時代に生きてこのような作品を人様に紹介することになった、そのことについてちょっと思うところがある、ということだけ少し述べておく。


戦争は女の顔をしていない

戦争は女の顔をしていない

原作・著者小梅けいと / スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ / 速水螺旋人
価格1,100円(税込)

「一言で言えば、ここに書かれているのはあの戦争ではない」……500人以上の従軍女性を取材し、その内容から出版を拒否され続けた、ノーベル文学賞受賞作家の主著。『狼と香辛料』小梅けいとによるコミカライズ。

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