郷版キノの旅、3巻である。毎度の断り書きとなるが、シオミヤイルカ版とは別のナンバリングで進んでいるので、お間違いのなきよう。
目次
郷版「キノの旅」3巻あらすじ
3巻は4つの短編コミックと、書き下ろしの掌編小説が収録されている。小説の方については解説はしない。
「彼女の旅」という短編が二つあるが、続き物ではなくタイトルが同じなだけで、まったく別の物語を扱っている(キノが出てくることに変わりはないが)。
フォトの日々という作品はキノは出てこない。
郷版「キノの旅」3巻ネタバレ
拘らない国
キノがエルメスに乗って崖沿いの危険な道を進んでいる。他に道がないとかではなく、この先の国の魚料理の評判が良いとかで、そこに向かっているのである。
行ってみたら格別たいした国ではなかった(魚料理については詳述はされていない)。
ただ、ちょっと独特の風習がある。ここは「モノガミーが禁じられた国」なのである。モノガミーとは、一対一の恋愛、つまり我々の価値観で言えば普通の恋愛のことだ。だがこの国では、刑罰をもってそれを禁じているのである。
この国では必ず複数の恋愛上のパートナーを持つことが定められている。ストーカーだの痴情のもつれだの、そういう犯罪を防ぐためである。
キノは散々にナンパされ、もちろん全部断って、うんざりしながら国を出る。
彼女の旅—Chances—
彼女の旅その1。昔、交通事故でとある男性を殺してしまった男がいた。刑務所に十年の刑で入れられた。6年に渡り、その被害者の恋人だか婚約者だかという女性にあてて手紙を書き、刑務所で稼いだわずかな金を送り、謝罪の言葉を連ねた。
6年目、女は男のもとを訪れ、国から旅に出るから護衛をしてほしい、と男に申し出た。男は多少は悩んだが、国外追放を条件に刑務所を出られるというのでそれを受けた。
その出国の日、たまたまキノと出会う。キノもその国を出るところだった。キノは男と女から話を聞き、再会を約して別れた。
そして。
キノの見ている前で、女は男を射殺した。復讐のためだと言って。女はキノに、「自分を撃つか」と尋ねたが、キノは言う。「いいえ。ボクは神様じゃありませんから」。
ちなみに、キノは「こうなること」を予測していたとエルメスには語っている。
彼女の旅—Love and Bullets—
旅の途上、荒野の真ん中で、ある女性に出会うキノ。平和愛好と、銃は悪であるというヒッピー思想を聞かされて、辟易しながら最後まで聞いて適当に相槌を打って、別れ際に「護衛の男」と話をする。
その護衛はキノも警戒するほどの凄腕で、もちろん銃を使うし平気で人を殺す。この護衛がいるから女は旅などしていられるのだが、何のつもりでそんな思想の違う女の護衛をしているのかとキノが聞くと男は言う。「彼女が好きだからさ」。
フォトの日々
キャラバンの奴隷として旅をしている少女がいた。キャラバンのメンバーは毒草に当たって全滅してしまい、彼女だけが生き残った。荷物の中にあったモトラド(エルメスの同類。喋るバイク)が彼女に色々なことを教え、フォトは運よくトラックを駆って近くの国まで辿り着き、そこに住みついた。
荷物の中にあった高価なカメラで、彼女は写真館を始めた。彼女はやがて、フォトと呼ばれるようになった。
郷版「キノの旅」3巻の感想
今回の4篇のうち、上三つはただの読み切りだが、フォトの日々は「続きのある」話である。前にもどこかで言ったかもしれないがキノの旅には四組の「主人公」がいる。キノとエルメス。師匠と弟子。シズとその一行。そして、フォトとソウ(モトラドの名前)である。
シオミヤイルカ版キノの旅にはシズの旅が登場した。郷版には師匠が前に出た。そしてとうとう最後の一組、フォトの登場というわけである。
もっともフォトだけはあまり旅はしない。四組の中で唯一、定住する家を持っている身だからだ。とはいえ、多分郷版で今後もレギュラーとして「写真家フォトの日々」が描かれると思われるので、そのへんご期待いただきたい。
キノの旅3 the Beautiful World
出国手続きを待つキノとエルメスは、この国から旅立とうとしている男女と出会う。男の旅の理由は、同行する女の恋人を事故死させたことを償うためであり、もう国には戻れないらしいのだが……。
「ひとつの国に滞在するのは3日間だけ」というルールで様々な国を訪れる人間キノと二輪車エルメスの旅の物語。