結末が読解できない!?緑のルーペの漫画「こいのことば」あらすじ・ネタバレ感想

こいのことば

抒情エロ漫画家、「緑のルーペ」氏の一巻完結作品である。ちなみに、成人指定こそかかっていないが、かなり性描写が露骨。

こいのことば
作品名:こいのことば
作者・著者:緑のルーペ
出版社:太田出版
ジャンル:青年マンガ

漫画「こいのことば」あらすじ

芳川藤之助は20代後半のさえないエロ漫画家。一つだけ特筆すべきことを挙げると、恋人が中学生の少女だということ。名は栗原悠里。

悠里は藤之助のアパートに入り浸り、爛れた性愛関係に溺れている。

藤之助は、悠里が複雑な家庭事情を抱えていることを薄々見抜いているが、大人のズルさというやつで、深入りすることを避けている。

悠里は覚えたてで、性に積極的である。文化祭の発表を見にやってきた藤之助を誘って、中学校の敷地内で事に及んだりする。

そしてそれを同級生に目撃され、悪い噂が立ち、いじめに遭う。とはいえ、それは物語の主題ではないので、そんなに深くは掘り下げられない。悠里は「学校ってつまらないなあ」くらいに思っているだけである。

それより問題は、悠里の家庭の事情である。内容自体は、単に父親が故人で母親(実母)と折り合いが悪いという、それだけの話なのだが、最終的に、悠里は母親との関係を修復し、家庭に戻っていく。藤之助と、4年後の再会の約束をして。

そして、4年の歳月が流れる。

二人は——

漫画「こいのことば」ネタバレ

と引っ張っておいてあえてどうでもいいネタバレから入るが、最初のコマで藤之助が描いている漫画のエロシーンのヒロインがどう見ても『青春のアフター』の十和さくらその人だという小ネタが仕込まれている。

さて。

二人は最終話の結末においてどうなったのか?

実はこれが、分からないのである。

4年後の、30歳になった藤之助には、恋人がいるらしい、という描写はある。その相手が、再会を果たした悠里なのか、それとも、別の誰かなのか、あえて、明示されない作りになっているのだ。

ただ、作中で、メタ視点を持った語り部のキャラクターが、「この物語の結末にハッピーエンドは待っていない」と語っているシーンはある。

かと思えば、「恋の遊びはもう終わりだ 愛の時間を始めよう」と言ったような藤之助の述懐もあるのだ。

考えれば考えるほど、結末が読解できない。というか、考えても分からないようになっている。そういう作品なのである。

漫画「こいのことば」感想

こいのことば

結末」についての論考をさらに続けよう。

少なくとも、4年後の再会を約した時点では、藤之助は、実際に4年後に悠里と再会できることを、本心から期待してはいない。年が違いすぎ、悠里は若い。彼女には、これから青春の時間が待っている。自分とのことなどあっけなく過去にして、別の恋人を作るのだろうと、そう思っている。

だが、さらにこうも思っている。

「だけどそれでも、別に4年後でなくても、いつか遠い未来、悠里が自分のもとに戻ってくることはあるかもしれない」

「自分は、いつまでもいつまでも、それを期待していることができる」

「たとえ死ぬまででも」

「だから 自分は無敵だ」

なんとも醜い、エゴイスティックな、そしてなおかつセンチメンタルな発想である。いや、筆者は藤之助のそういう考え方を否定したいわけではない。さすがに共感まではしないが、しかし、こういう発想というものは、ある。男のエゴとして、ありうるのである。

そして、緑のルーペという作家は、そういう人間のエゴや醜さを描くのが、とてもうまい。まだ全部の作品を読破し切ってはいないが、この作者の物語の登場人物たちは往々にして、そういうような性質を持っているのだ。

そして、そういう「エゴイスティックなセンチメンタリズム」が、この作者の作品に、独特の退廃的雰囲気をもたらすのである。

お勧めの漫画であるか、と問われると、即答できない。少なくとも万人にお勧めではない。合わない人には合わないと思う。だが、ハマる人は本当に深くハマる。少なくとも筆者はそうだった。それが、緑のルーペの世界なのである。

こいのことばが試し読みできる電子書籍ストア

こいのことば
BookLive!のボタン
コミなびのボタン
コミックシーモアのボタン

※各電子書籍ストアにて試し読み可能。電子書籍ストア内にて「こいのことば」で検索すると素早く絞り込みできます。