シオミヤイルカによる『キノの旅』コミカライズ第6巻である。
毎度の説明を説明するが、このシリーズの他に「郷」という作者による『キノの旅』のコミカライズも別にナンバリングされているので、お間違いなきよう。
目次
シオミヤ版キノの旅【6巻あらすじ】
今巻に収録されているエピソードは3つ、各2話ずつ。
「人を喰った話」「機械人形の話」「届ける話」である。
このうち、届ける話という作品は今年出た原作最新刊の収録だそうで、筆者はこれが初読となる。というか、最新の数巻はまだ読んでないんですよね実のところ。
シオミヤ版キノの旅【6巻ネタバレ】

人を喰った話1/2
キノは旅の途上、遭難しているキャラバンに遭遇する。雪に閉じ込められ数カ月、食糧が無くなってしまったのだという。仏心を出したキノはその場で狩りをして、ウサギを仕留めてくる。キャラバンの商人の一人は、礼だと言って宝石のついた指輪を差し出してくる。
人を喰った話2/2
遭遇から三日目。栄養が足りてきたキャラバンの人たち、突如として豹変し、牙を剥く。ライフルを突きつけ、キノに武器を捨てろという。流石のキノも油断していたのがまずかったらしく、不利な状況に置かれてしまう。キャラバンの男たちは奴隷商人で、「積み荷」は「非常食として」食べてしまったので、その代わりになるものが必要なのだという。
結局、キノの持っていた隠し武器、ナイフに偽装された銃で不意打ちをしてかろうじて男たちを全員射殺することに成功するのだが、原作シリーズ中でも屈指の、キノがピンチになるシーンである。本人も「もうだめかと思った」みたいな弱音を吐いている。
そしてキノは、「あなたたちを助けることはできなかったから」と言って、例の指輪をその場に残して去っていく。
機械人形の話1/2
旅の途上、キノは一人の老婆に出会う。この近くにあるはずのとある国を探して来たのだがそれは見つからず、老婆は森の中の屋敷で暮らしているのだという。
老婆は語る。自分は機械人形で、この家の主人たちに仕えているのだと。
その主人なる人たちは確かにいたのだが、なんだか様子がおかしい。会話もぎこちないし、何より、食事を摂らないのである。
機械人形の話2/2
老婆は亡くなった。本人は機械の寿命だとか言っているのだが、「家の主人たち」によれば老衰による死であるという。「やっぱり機械人形なんてありえないと思ったんだ」というキノに対し、「家の主人たち」は言う。彼女は機械人形ではないが、自分達の方こそが彼女の手になる機械人形だったのだと。彼女は有能な科学者だったのだが、戦乱で家族を失って狂ってしまい、自分の造ったロボットたちに囲まれて暮らしていたのである。
届ける話1/2
キノではなくシズが主役の話。そして、時系列が原作中でも相当に早いらしく、シズがキノと初めて出会うよりも前、いつも連れている陸という犬と出会ったころの話である。シズは傭兵として雇われていて、子犬(陸)を顧客に届ける仕事を任される。
届ける話2/2
届けに行った先では政変が起こっており、陸の主人になるはずだった少女も既に亡くなっていた。不憫に思ったシズは、陸を引き取って自分で飼うことにする。突き詰めればただそれだけの話である。
シオミヤ版キノの旅【6巻の感想】

あらすじには書かなかったが、実はもう一篇、「誓い」という作品がこの巻には収録されている。どうも、キノ(当時はキノという名前ではないが)が生まれたばかりの頃の、その父親が書いたと思しき、娘が生まれて自分はとても幸せだ、といったような述懐を綴った作品である。
キノは諸事情で実家とは縁が切れているわけなので、どういう意図をもって書かれた掌編なのかよく分からないのだが、こういうのを拾ってくるあたりやはり「シオミヤイルカ版」らしいなあと思う次第である。

キノの旅 theBeautifulWorld
短編連作の形で綴られる人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅の話。1巻では「大人の国」「人の痛みが分かる国」「レールの上の三人の男」を収録。