戦争は女の顔をしていない【ネタバレ感想】女性視点で描かれる生々しい戦争の記憶…

戦争は女の顔をしていない

ちょいと前からネットなどでかなり話題になっている作品だ。

原作はノーベル文学賞受賞者による、小説ではなく取材に基づくジャーナリスティックな(同題の)作品で、それをかなり大きく大胆にアレンジするというか手を入れてコミカライズしているというのが本作品である。

戦争は女の顔をしていない【あらすじ】

ざっくりとあらすじというか概要を述べるならば、第二次世界大戦における独ソ戦の、ソ連側の、それも女性の証言ばかりを集めたルポルタージュである。

原作がどうなっているのかは知らないが、このコミカライズ版では各話完結方式でいくつかのエピソードに分かれて話を構成する形となっているので、ネタバレの項に進もう。

戦争は女の顔をしていない【ネタバレ・感想】

戦争は女の顔をしていない

第一話

独ソ戦はいわゆる「総力戦」であるので、民間人も前線近くに出て活動することがあった。といっても銃を取って戦うわけではない。1話は「洗濯部隊」の話である。部隊といっても軍属ですらなく民間人扱いなのだが。戦時下のことなので洗濯一つとっても大仕事なのだが、彼女らはそれでも結構「女として」ふるまうことを忘れていないあたりが温かくもありまた悲しくもある。

第二話

二話は女性の医者の話。夫が戦死してしまったのだが、主人公はどうしてもその遺体を回収して葬儀を出したいという。大戦争の真っ最中である。ふつうは無理だ。だが女医は「私はこうして私の恋を葬るのだ」といって軍の上官を説得し、夫の棺と対面することに成功するのであった。

第三話

第三話は女性スナイパー(狙撃兵)の話。つまりれっきとした兵隊である。もとから猟師だったとかそんなあれはなく、訓練を受けて狙撃兵になったのだが、初めて敵兵を撃ち殺したときは自分が人を殺した事実が怖くて泣いてしまったという。だが、自軍の捕虜たちが焼き殺された亡骸をある日目撃してからは、ドイツ兵を撃つことにためらいはなくなった、と彼女は語る。何しろ回想録ベースで時系列はあっちへ飛びこっちへ飛びするので、戦後の、戦争神経症というかPTSDというかそういうものに悩まされたりするシーンもある。

第四話

今度は衛生指導員、つまり衛生兵の話。衛生兵は敵と戦う立場ではないが、最前線に出て活動するので極めて危険な立場である。血まみれの兵隊たちの包帯を代えたり、ときには敵兵の真ん前で負傷兵を連れ戻したりするのが仕事だ。幸せとは何か、という問いに対し、主人公は「死体の山の中に生きている人を見つけること」と語る。

第五話

今度は高射砲の砲兵の話。戦況が厳しくなり、身の回りの男たちが死んだり、重傷を負ったりしているさまを見ていてもたってもいられなくなり、志願したという少女。ほぼ普通に男と同じく兵士として戦っているのだが、戦場の物資供給において女がいるということが考慮されていないので重要な問題が生じる。生理用品が支給されないのである。おかげでお手当てが大変。ナプキン一つ用意されない状況で、血を地上に垂らしながら行軍したこともあったという。実に生々しい、この作品を象徴するようなエピソードである。

第六話

女性飛行士の話。国を問わず、エースパイロットの中にも女性というのは割といたりする。だがそれでも、敵のパイロットが女なのを見るとドイツ兵は驚愕の表情を浮かべた。

第七話

元カメラマンで、書記という肩書で戦場カメラマンを務めた女性の話をはじめ、この七話は七話の中だけでさらにオムニバスになっている。特に面白いのは、「戦場で最も怖いものは何かって? それは『男物のパンツを履いている』ってことさ」と語る老婆のエピソード。ポーランドまで進駐したときはじめて女性用下着が支給されてみんなで歓喜した、という話を聞かされた原著者(ノーベル賞の人)が落涙しているシーンが印象的である。

戦争は女の顔をしていない【書籍情報】


戦争は女の顔をしていない

戦争は女の顔をしていない

原作・著者小梅けいと / スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ / 速水螺旋人
価格1000円(税別)

「一言で言えば、ここに書かれているのはあの戦争ではない」……500人以上の従軍女性を取材し、その内容から出版を拒否され続けた、ノーベル文学賞受賞作家の主著。『狼と香辛料』小梅けいとによるコミカライズ。

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