最初の数ページだけぱらぱら読んで、すごい画力だからこれは名のあるベテラン作家に違いない、と思って調べたらぜんぜん違った。
これがデビュー作という20代の新人作家である。
とはいえ、どこぞの美術学校の絵画科の出だそうであるが。
漫画「映像研には手を出すな!」あらすじ
あらすじだけを簡単に言うととても簡単な作品である。いわゆる青春系なのだが、とある高校を舞台に、三人の高校生女子が映像研と称する部活を作って、アニメを作成する。
1巻のストーリーは、とりあえず「映像研はちゃんと活動してます」というアリバイ証明が必要になったので、とにかく2分くらいの超短いパイロットフィルム的なものを作ることになった。
いちおう、パソコンやら機材やらはあるのだが、3Dアニメではなく、「絵を動かす」タイプのアニメなので、何百枚とかいう動画を描かなければならない。発表日当日まで学校に泊まり込むという修羅場の末、どうにか映像研のショートショートアニメは完成し、披露された。みなが感心する。
「これ、こいつらに予算を出したらどんなすごいものを作るだろう?」
…と言われるところで、とりあえずは次巻に続く。
さて、ここで登場人物たちについて紹介しよう。主人公は三人組。
浅草
子供の頃見たジブリアニメに感化されてアニメの道を志している少女。いちおう三人組の中ではリーダー的ポジションで、とりあえず行動力と爆発力はすごい。才能もあるっぽいが、若者の才能について描く作品というわけではないのでなんていうか、物語のけん引役だ。
金森
いかにもオタク女的な外見をしているが、とても頭がよく実務的なサポート役。実質的に部の運営やら実務を切り盛りしているのは彼女である。浅草の暴れ馬的な勢いを制御し、実際的なエネルギーに変換する役目を担っている。
水崎ツバメ
カリスマ読者モデルをやっている美少女。財閥令嬢で親が映画俳優、親から映画俳優の道に進むことを強要されているらしい。冷静に考えると突っ込みどころだらけの無茶設定なのだが、そういうことを気にする作品ではないからスルーしてほしい。ちなみに本人はアニメオタクで、アニメーターになるのが夢。
漫画「映像研には手を出すな!」ネタバレ&感想

正直、この作品を言語化して解説するのがかなり辛い。漫画であることの強みをこれでもかというくらいに活かした、「ヴィジュアル」が売りの作品なのである。
もう何がすごいって画力がすごい。「上手」というのとは違う。
いや上手なのだろうが、評価する側から見るとその地点ははるかに飛び越している。表紙を見ればお分かりの通り今風の萌え絵ではないしそういう方向性の凄さではないのだが、とにかく、くどいようだが「画力」が「凄い」のである。
この作者、行間からも分かるし、作中に唐突に「未来少年コナン」からの引用が入ったりもするので勅諭的にも分かるのだが、ジブリファンである。
舞台になっている学校というのが、なぜか「水上に建てられた校舎」。一枚絵で、そのなんか名状しがたい複雑怪奇な建物が実際に描かれているのだが、そのリアリティのなさっぷりがいかにも、ジブリファンタジーのテイストなのである。
とはいえ人間描写はあんまりジブリ的画風というわけではない。ジブリに対する隠されてもいないリスペクトのほどが、うまいこと作品の中に吸収され、昇華されているのだ。
率直に書こう。この漫画、正直言って筆者の筆では「その素晴らしさの全容を紹介しきれない」。そして「ぜひ一見の価値がある」。
そういう次第で、せめて試読だけでもしてみていただきたいと心から思う。これはそれだけの価値のある作品だ。
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