えー、新作である。『宙に参る』。
ツイッターで作者が書いていた簡単な漫画が面白かったので作品をチェックしてみた次第。作者はこれしか商業出版作品がないようなので、新人と思われる。
宙に参る【1巻】あらすじ
SFである。それもかなりハードな。実はもうちょっとスペースオペラ的なものを想像して手を出したのだが、ハードSFである。
大雑把にいえば、主人公の女性(若い未亡人)が宇宙船に乗って宇宙を旅する話。というとやっぱりスペースオペラ的に聞こえるのだが、その基本構成の上でかなりハードSFなわけである。
宙に参る【1巻】ネタバレ
主人公の名前は鵯(ひよどり)ソラ。
宙二郎という息子がいるのだが、外見はどう見てもヒトではなくロボットである(ソラは普通の人間。亡き夫も写真見る限り普通の人間)。どういうことなのかよくわからないのだが、ロボットを作って息子を呼んでいる(そしてこの世界ではそういったことはありふれている)ということなのか、なんかそんな感じだ。
夫の葬儀を済ませたソラと宙二郎は、遺骨を抱えて地球にある「先祖代々の墓」へと向かうことになる。
船に乗るのだが、巨大な船である。「渡航船」と呼ばれているのだが、控えめに見積もってもどでかいショッピングモールくらいはある。銀行もあるし、警察まで中にいる。なお、厳密には単独の船ではなく船団。主人公がいるのはその中で、「第2客橋ユニット ニイノ」と呼ばれる部分。キンバリー・マダンというニイノの機関長とソラは知り合いなのだが、どうもソラは昔このニイノで働いていたことがあるらしい。
行程は乗り継ぎと待合を含めて45日間。けっこうな長旅である。ちょうど四十九日くらいになる計算でもある。
さて、主人公ソラはフリーランスエンジニアという肩書なのだが、凄腕のハッカーでもある(他にもいろんな属性がありそうだが、謎が多い)。とりあえず、暇つぶし程度に将棋AI(人格を持った人工知性体)にアクセスし、コンタクトを取ったりする。
また、おでん屋で「ドラゴン」という隠しメニュー(本来、常連しか注文できない)を、これもハッキングして注文してのけたりする。なお店員もロボットなのである。
次の場面、ニイノのところにやってきたソラ、工作機械を借りてちょっとした作業をしているのだが、次の寄港地で飲みに行く約束をする。で、寄港地イオア港に到着する。
そこで、ソラはよくわからない連中に接触を受ける。公安であるらしい。どうも警察のようだ。が、連れていかれるのは嫌なソラ、「夫がコロニー技師でね」と言って、コロニーの気象を操って光学兵器にすることができるのだとうそぶき、本当なのか嘘なのか、とにかく突き付けられていた公安のロボットの持つ銃を破壊する。
想像を絶する話である。コロニーのセキュリティを突破するなどというのは、国家クラスの力を敵に回すに等しいらしい。だからソラの言ってることが本当なのかは分からない。
その後、ニイノと飲みに行く話があり、それから回想シーンに入る。ソラが亡夫にプロポーズされるシーンが描かれる。場所はなんとおでん屋である。おでん屋でジャガイモ食ってるときにプロポーズをするな、とソラは怒るのだが、受けるは受けたのであろう。
といったところで一巻はおしまい。
宙に参る【1巻】感想
主人公のバックボーンが少しずつしか明かされず、全体的に謎が多い。SF的世界を表現してそれをエンターテイメントにする、というスペースオペラの常道からはやはり少し外れた感じである。
面白い、というより、うならされる作品であった。
宙に参る
宇宙船が今で言うセスナ機ぐらい身近になった世界のお話。機械やプログラミングに妙に長けている主婦・鵯(ひよどり)ソラは、病気で亡くなった夫の遺骨を義母に届けるため宇宙へと旅立った。道中のお供は人工知能を搭載したロボットである息子の宙二郎(ちゅうじろう)。長期渡航を目的として作られた巨大宇宙船、経由するコロニーやテラフォーミングされた星、いつか訪れそうな宇宙時代への期待が膨らむ、近未来サイエンス・フィクション。
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