漫画「しをちゃんとぼく」ネタバレ感想!奇妙で物哀しさを覗かせる秀逸なギャグ漫画!

しをちゃんとぼく

漫画「しをちゃんとぼく」あらすじ

「ぼく」と名乗る少年と、その「友人」である不死者、通称「しをちゃん」。なぜしをちゃんかというと、彼自身は「死を忘れし者」と名乗ってるのだが、それでは呼び辛いからしをちゃんなのである。

しをちゃんは最低でも二千年以上生きている。なぜそれが分かるかというと本人の記憶があるからではない。二千年前の遺跡から出てきた発掘物に彼の指紋が残っていたことから、客観的に彼が二千歳以上であることが証明されているのである。

しをちゃんは何者なのか。なぜ不死なのか。そもそも元は人間なのか?何も分からない。

形や臓器の構造などは人間と同じなようではあるが、本人が言うには、悠久の時間に耐えきれず脳の記憶容量がパンク状態になっており、遠い過去のことなどはまったく覚えていないし、最近の日常のことすらもの忘れがひどいのである。

また、「死なない」ということで「自分の命のために注意する」という機能を失っているしをちゃんは、やたら事故を起こしたり大怪我をしたりする。基本的にはひ弱である。あっちこっちに血潮などをぶちまけまくるので、地元の警察や消防などの人々は彼の存在に既に慣れ切ってしまっていて、勘違いした一般人が通報しても「ああ、またこの人か」で済まされる。ちなみにしをちゃんは身体の一部を失ってもすぐ再生するというタイプの不死者であるので、雑にネギを(指と一緒に)刻んでそこいらじゅうを切れた指だらけにしたりする。

そんなしをちゃんと、その友人となった少年の物語が、これだ。なお、基本的にギャグ漫画である。たまにしをちゃんが「自分も死んでみたい」「墓というものに憧れる」などと言い出して暗い雰囲気になったりはするが、それもギャグで済まされている。

漫画「しをちゃんとぼく」ネタバレ&感想

しをちゃんとぼく

しをちゃんであるが、100年ほど剣術をやっていたことがある。なぜそんなことを始めたのかは彼自身にも分からない。もしかしたら「誰か守りたい人がいた」などといった事情があるのかもしれないがそれも推測に過ぎない。さて、「100年ほど」というのは彼の時間感覚では100年なんてのはたいした時間ではないからである。

100年を費やしたといっても別にしをちゃんは強いわけではない。100年も練習したのにかれらも上達しなかったし、仮に上達したとしてもその後の数百年で剣術は忘れてしまっただろう。ちなみに100年の間に剣術の師は7代に及び、彼らは同じ一族であったらしく、しをちゃんが「向いてないことに気付いたのでやめる」と言い出したとき、7代目師範と当時まだ存命であった6代目は感涙にむせんだらしい。なお、当時しをちゃんは「ライフレス」と呼ばれていたそうである。

ちなみにしをちゃんは不死であるのでいろんな経験をしている。19世紀のことだが、Dr.グレイなる科学者がしをちゃんの不死の謎を研究していた時期もあったという。50年の歳月の末に、グレイは「何が何だかさっぱりわかんない。法則がありそうでないし、物理法則もだいぶ無視している」という結論になっていない結論に到達、しをちゃんに看取られて死んだ。

しをちゃんにも特技はある。印度カレーを作るのがうまいのである。味はよいらしい。ただし、煮込まれた本人の指(悪意でやっているわけではなく本人は気付いてさえいない)が少々混ざっているのがたまにキズ。

しをちゃんはだいたいいつもぼんやりしているし、認識能力すらもぼんやりしている。「最近(ここ300年くらい)善悪の基準の変化について調べるのを忘れていたが、最近では征服戦争は悪とみなされているのか?」などと言い出したり、「しをちゃんは子供のぼくにも普通に接してくれるよね」と言う少年に「少年は子供だったのか。千歳以上年が違うから人類はだいたい同じくらいの年にしか見えない」などと言い出したり。

ちなみにレギュラーキャラクター二人だけで回すのかと思ったら、「世界征服を企む悪の結社のボス(になりたいと考えているただの人間)」の、自称ネオゴッドという人物が、まあ実質的にしをちゃんの現代における二人目の友人になったりもする。

いちおう1巻末のエピソードは、「しをちゃんが海に落ちて行方不明になる」というもの。しをちゃんは食事をする必要も眠る必要も呼吸をする必要さえもないので、海に落ちたところで死にはしないのだが、しかし自力で海中から地上に戻ってくる能力があるわけでもない。119番してみたが、「死なない人間のために常命の人間が危険を冒すわけにはいかない」と言われてしまう。結局、救助に協力してくれたのはネオゴッドだけであった。かろうじてしをちゃんの救出には成功し、めでたしめでたし。

総評としてはほんの少しだけ物哀しさを混ぜ込んだ、なかなか秀逸なギャグ漫画である。目の付け所がなかなかいいと思う。

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