新シリーズ、『可愛そうにね、元気くん』を御紹介する。とりあえず現状、一般商業単行本化作品はこれだけ、という割と新人の作家の作品である。
可愛そうにね、元気くん【1巻あらすじ】
一言でいうと、「リョナ」の漫画である。
この単語では分からない方も多かろうと思うから説明するが、リョナというのは一種の性癖をあらわす用語で、例えば女の子が暴力を振るわれているとか、そういったものに性的興奮を感じることを言う。
ちなみにSMとは多少似通った部分はあれど微妙に異なる。そんなに古い言葉ではなく、近年インターネット上で生み出されて広まった概念だ。
さて、主人公・廣田(ひろた)元気はそういったリョナ趣味を心のうちに秘めた17歳の高校生(ちなみに共学)である。八千緑七子(やちみどり ななこ)というクラスメイトのことが好きなのだが、その好意の内容というのは「八千緑さんが暴力を振るわれたりなんだりしているところを妄想する」という形のものなので、本人も自覚があるのだがまともな恋愛感情とは異なるから自分には通常の恋愛は縁がない、とか思っている。
可愛そうにね、元気くん【1巻ネタバレ】
さて、元気であるが、リョナ趣味を完全に心のうちだけに秘めているわけではない。具体的に言うと、漫画にして描いているのである。完全に八千緑さんそのもののヒロインが出てきて、陵虐を受ける漫画を。ネットで公開している(そしてその筋の人たちの間で好評を博している)上に、学校で描いていたりもする(いちおう部活動なのだが、ほかに部員はいない模様)。
さて、1巻時点で主要登場人物として動いているのは元気、八千緑さんともう一人、鷺沢という少女がいる。いわゆる普通の「クラスのアイドル」的な美少女である。クラスのアイドルであるが、元気にとっては八千緑さんの方がいい。
鷺沢さんは元気のことが好きなんだかなんだか、アプローチをかけてくる。一緒に帰ろうとか言い出したり。その路上で神社に寄るのだが、そこで元気は告白を受ける。といっても愛の告白ではない。
ネットにアップしている例の漫画を突き付けられ、「これ、書いたの元気くんでしょう?」的にやられるのである。
元気の反応からその事実を確信した鷺沢さん、なんだか知らないがいきなり元気の顔面に鉄拳制裁をかましてくる。だが怒っているとかそういうことではない。鷺沢の眼は、嗜虐の眼であった。元気が変態なのとはまた別の方向性で鷺沢さんもだいぶ頭のいかれている人で、人をなぶるのが楽しいらしい。
で、漫画をネタに脅されゆすられる立場になった元気くん、事実上鷺沢さんの奴隷である。
奴隷にして何がしたいのかは正直よく分からないが、鷺沢さんは元気をけしかけて八千緑さんとくっつけよう、とかいうようなことを言い出す。そして八千緑さんちに押しかけ、三人でラーメン食べに行ったりして遊ぶ。
その帰り際。鷺沢さんは、元気がいないところを見計らって八千緑さんに対して言い出す。
「廣田くんの漫画のこと、どうして(知ってるのに)気付かないフリしてるの?」と。
1巻はここまでである。
可愛そうにね、元気くん【1巻の感想】
手元に既刊の4巻がすべて揃ってはいる状態なのだが、あえて1巻しか読んでいない状態でここまで書いてきた。そういう紹介の仕方をすると重要なシーンを紹介しそこなったりとかすることも多いのだが、それより、この漫画を読んだときに感じる「困惑」のようなものを正直に伝えた方がいいと思うからである。
1巻を見た感じ、八千緑さんは(あるいは八千緑さんも、というべきか)廣田に好意があるようである。しかし実際にはまったく違うのかもしれない。そういう先の読めなさも含めて、興味深い作品ではある。
可愛そうにね、元気くん
主人公・廣田元気には、周囲に言えないある“性癖”があった。その異常さから、恋をすることすら諦めようとしていた元気だったが、どんくさいクラスメイト・八千緑七子への想いはどんどんくすぶっていき……!?
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