漫画「鍵つきテラリウム」あらすじ
本作品はいわゆる「ポストアポカリプス」ものである。
ポストアポカリプスものにもいろいろあるが、北斗の拳とかマッドマックスみたいな荒野のような世界で斬った張ったをするやつではなく、人類は絶滅寸前、文明も完全崩壊寸前、それを何とか食い止めるために旅をしながら生き残ったロボットたちとコミュニケーションを重ねていくという、どっちかというと人情ものとでも言った雰囲気の作品である。
ここで過去に紹介した中で言うと、『人類は衰退しました』がやや近いラインかもしれない。
漫画「鍵つきテラリウム」ネタバレ
主人公はチコという少女。……少なくともそう見える。詳しい解説はないが、多分人間。ピノというロボットを相棒にしていて、これを「弟」と言っている。
チコの職業は「技官」である。人間もロボットも診ることのできる医師。この世界は、「アルコロジー」と呼ばれている。おそらくは、文明崩壊時に人類を守ったシェルターのようなものの内部なのだと思われる(詳細は不明だが)。外がどうなってるのかは分からないし、チコはアルコロジーに外があるという認識すら持っていない。
チコとピノはアルコロジーの内部、人の住んでいない荒廃が進んだ区画を旅している。目的は3つ。やはり技官だったが、かつて行方不明になった母親を探すこと。アルコロジーが崩壊に向かっている原因を突き止めること。そして、生き残って活動しているロボットたちから、「コア」を回収することである。コアを回収すると、「お母さんの鍵」なるものが完成させられるらしいのだが、それが何なのかも説明はない。
さて、物語冒頭から話を進めていこう。チコとピノは、とある居住区に辿り着く。居住区と言っても、かなり昔に放棄されたものであり、生存している人間はいない。そこを探検していると、病院のようなものがあり、白骨死体が並んでいた。そのうちの一体の脇に、人形が置かれていた。そして、死体の古さからすると妙に新しい、点滴針やドレーンなどの医療器具。人形は、持ち上げると崩れてしまった。
以上の情報のみから、チコはこの場を管理しているロボットがまだ残っていることを推理して突き止める。積もった埃の上にボロボロの人形が置かれていたということは、人間ではない精密なアームを持った何者かの仕業である可能性が高いわけである。
探してみると、それはいた。古い医療ロボット。生きてはいるが、正常に機能してはおらず、コアが損傷していると考えられる、という。
チコはロボットに声をかけた。ロボットはN-511型医療ロボット「ネイバー」と名乗った。友好的である。
しかしネイバーは故障しているので、ベッドごとに並んでいる白骨死体のそれぞれを、まだ生きているものと認識していた。そして、チコに助けを求めてくる。
チコは介入した。といっても死体をどうにかできるわけではない。ネイバーの自認機能を修復して、「自分は故障していて、もう患者達の役には立てない」ということを認識させたのである。ネイバーは全機能を停止し、その後のこと(コアも含めて)をチコに委ねて永遠の眠りについた。
また別の場所。迷子になっている郵便配達のロボットが見つかった。JPK-35、通称ケイ。まだ届けなければならない郵便物を持っているというのだが、マップデータを喪失していて彷徨っていたらしい。
ロボットの心に寄り添いたい思想の持ち主であるチコは今回もケイのやりたいようにやらせることにした。実際に配達するのである。行ってみると、意外なことが分かった。
配達先の人間はとっくに死んでいるだろうと思われたのだが、配達先にいたのはアンドロイドだったのである。といっても壊れていたのだが、割と最近まで生きていたようであった。結局、残りの手紙も配達してから自分の家に来るようにとケイに言い、チコはまた旅立つ。1巻はここまでである。
漫画「鍵つきテラリウム」感想
斬った張ったをするポストアポカリプスものではないので、心の温かくなるような物語の繰り返しからできている作品である。といっても、やっぱり世界が滅亡寸前なので、ところどころヒヤッとするような描写が混じったりもするのだが。
鍵つきテラリウム
人類が衰退し、荒廃した世界――。生き残った数少ない人類は、【アルコロジー】と呼ばれる完全環境施設でのみ生きることが許されていた。しかし【アルコロジー】の機能は少しずつ低下し、人類は確実に滅びの道を辿りつつある。“調査技官”のチコとその弟のピノは、世界崩壊の原因を探す旅をしているが、ある日、ひとりぼっちで稼動し続ける医療ロボットに出会い……? 少女とその弟が紡ぐ、終末冒険ファンタジー。