オカルティック・ボーイズラブ漫画『光が死んだ夏』、第3巻である。
光が死んだ夏【3巻】あらすじ
ページ数の比率でいえば話の大半は相変わらずぐだぐだとのんきな日常漫画をやっているページに尺が割かれているのだが、大きな動きが三つほど。
まず、霊媒を仕事にしているみたいな感じの人（村の外からやってきた。なんか『会社』と称する組織に属しているらしい）が活動を本格化する。
次に、よしき（主人公）と光の女友達に、実はかなり強めの霊感があったことが明らかになる。彼女は「光に何かがとりついている」と認識していて、そいつに対して「あなたは誰ですか」と語りかけるのだが……。
といったところで、あとはネタバレで話を進めていこう。
光が死んだ夏【3巻】ネタバレ
さてまず霊能者の人の話から。
山に入って、「ノウヌキ様」と呼ばれる怪異について探っている。山の中には色濃い怪異の色が立ち込めて、というのかと思ったら逆である。「何もいない。何もいなくなっている。もぬけの殻」だそうである。じゃあ問題はないのかといえばそうではない。
明示はされていないがおそらくノウヌキ様というのは光になっている何者かであるか、そうでないとしてもそれに近い状態にある何かであるわけで、「ノウヌキ様は山から離れて里に下りている」ということを霊能者の人は突き止めたわけである。彼の動きは今巻ではその程度。
さて、夏なのでみんなで花火とかやっているのだが、ライターが切れたとかなんとかで買い物に行く道すがら、少女と光の偽物だけになったタイミングで光が言われる。「あなたは誰ですか」。
少女は完全に状況を把握しているわけではない。光のオリジナルが死亡している事実は知らないし、光である存在に「何ものか」がついている状態、と認識しているうえ、「人ならざる何者か」の中にも話が通じる善意の存在が多く存在するのだと思っている。実際そうなのかもしれないが、光に化けているなにかはそんなにいいものではない。
で、正体を知られたと思った光の偽物、反射的に少女を殺そうとしてしまう。が、主人公が割って入って止めた。
そしてこんこんと説諭をせねばならない。なぜ殺そうとなんかしたのか、と。光の偽物は言う。「え、生きてるのと死んでるのってそんなに違いはなくない？」と。
主人公に対しては害意を向けず、生きていてほしいと願う怪異君であるが、人間と道徳観や社会性を共有しているわけではなかったのだということがこれですっかり明らかになる。主人公はかなりショックを受けている。
光は、自分は何か問題を抱えているらしいと漠然と理解はするが、どうしたらいいかはわからない。学校をさぼって光を連れて一日映画館に行ったりなんだり遊びまわった主人公、その夜に自宅で、光の胸を包丁で刺す。
だが、知れ切ったことだがそこに致命的な臓器があるような身体の存在ではないので、死にはしない。死にはしないが刺された、殺されそうになったという事実にはかなり苦悩している怪異君。自分の「一部」を引きちぎって主人公に手渡し、「これで多分、人を殺したりはできなくなったと思う」という。彼なりに適応しようという意思はあるのである。
主人公、光の正体を突き止めることを決意する。以上、4巻に続く。
光が死んだ夏【3巻】感想
「見える子ちゃん」とかでもそうなんだけど、この手の漫画では「本職の霊能力者」が出てくるのがお約束である。この漫画の霊能力者（霊能力ではなく道具を使って活動している霊感は持たない職人らしいが、ともかくそんなような仕事をしている何者か）、どの程度の底があって「ノウヌキ様」に対してどれほどの力を発揮できるのかはよくわからないが……
いずれにせよ、この漫画は「そして二人は幸福に暮らしました」には落ち着けない気がするんだよなぁ。というか、そこに落ち着かせてはいけない気がするというか。
光が死んだ夏
ある集落で暮らす少年、よしきと光。同い年の2人はずっと一緒に育ってきた。しかしある日、よしきが光だと思っていたものは別のナニカにすり替わっていたことに確信を持ってしまう。それでも、一緒にいたい。友人の姿をしたナニカとの、いつも通りの日々が始まる。時を同じくして、集落では様々な事件が起こっていき――。新進気鋭の作家・モクモクれんが描く、未知のナニカへ堕ちていく物語、開幕。巻末には在りし日の2人を描いた、描き下ろし短編も収録。
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