最近、話題となっている漫画の一つである。
いちおうはファンタジー漫画で、副題の「異種族言語学入門」というのがだいたいそのまま内容を表しているが、言語学だけではなく文化人類学(人類じゃねえけど)的な趣きも強い。あとは民俗学であるとか。そっち系の文系学問が好きな人にはたまらない。かもしれない。
漫画「ヘテロゲニアリンギスティコ」あらすじ
主人公はハカバという異種族言語学の研究者(の助手)。師匠であるところの教授が怪我で倒れたので、そのフィールドワークを全面的に一人で引き継ぐことになり、魔界に赴くことになった。
魔界といっても、人間に敵対的な種族は出てこない(出てくるような場所に行かないだけで居るのかもしれないが、少なくとも1巻時点ではかなり友好的な種族ばかり)のだが、何しろ人間とは五感の機能などから違う種族の間を渡り歩かなければならないので、大変である。
この物語は何か大きな事件を解決しようとか、そういうところに物事の軸足を置いていない。あくまでも、「こういう世界があり、こうなっている」というものの調査、としてファンタジー世界を重厚に分析してみせるのが持ち味となっている。
漫画「ヘテロゲニアリンギスティコ」ネタバレ
とりあえず、最初はワーウルフの集落を訪れる。ハカバは獣人語は(程度問題はともかく)ある程度は理解していて、ある程度までは(あくまでもある程度までは)理解することができる。もっとも、そもそも翻訳不可能な概念なども多く存在していたり、匂いや動作によるコミュニケーションが重要な意味を持っている(しかしハカバは人間なので獣人のような嗅覚を持ってはいない)ので、本当に大変だ。
集落にどうにか辿り着いたハカバは、ススキという「ガイド」の少女に出会う。ススキは人間の言葉を話すことができる。というか、ススキはただのワーウルフではなく、なんとくだんの教授と現地のワーウルフ(女性)との間に生まれたハーフの子である。どうして子どもが作れるのかについてはハカバは追求せず、深く考えないようにしている。
しかし何分どっちかというと人間よりの外見をしている(ちんちくりんだけど)ので、ワーウルフの間での親愛を表すコミュニケーション、すなわち「お互いを舐めあうこと」がどうしてもためらわれるハカバなのであった。
さて、ススキを連れてフィールドワークを続けるハカバ、ワーウルフの里から次はリザードマンの群れのところに辿り着く。リザードマンにはリザードマンの言語があり、文字(あるいはそれに類するもの)もあるようなのだが、ハカバには分からない。幸い、かろうじてワーウルフ語が通じるので、ススキの助けもあってなんとかコミュニケーションを続けることができる。
1巻で登場する種族は、スライム(流動体で、個という概念を持たないが、高い知能を持っている)、クラーケン(海棲の知的種族。身振り手振りでかろうじてコミュニケーションが取れる)、ハーピー、ドラゴンなど。
漫画「ヘテロゲニアリンギスティコ」感想
なんとか分かる部分を拾って解説を書いたが、割と難解な漫画である。内容が難解なのではなく、何しろ物語の語り手役のハカバが魔界でのコミュニケーション能力をカタコト程度でしか持っていないので(それを研究するのが目的なのだから仕方がないが)、何が起こっているのか、画面の中のキャラクターたちがどんな感情を持っていてどんな意思表示をしているのか、分からないことも多いまま進んでいくのだ。
それはそれとして、この作品がこのまま地に足の着いた学問的な漫画として進んでいくのか、それとも何か大きな動きがあっていかにもな冒険ファンタジー的な展開を見せるのか。今後が楽しみである。
ヘテロゲニアリンギスティコ
怪我をした教授に代わり、魔界でモンスターとの言語的&非言語的コミュニケーションの調査を任されたハカバ君。ガイドのススキと共に魔界を旅をする、新人研究者の苦悩と日常を描いたモンスター研究コメディ!