藤本タツキ短編集17-21【ネタバレ】鬼才・藤本タツキの原点となった初期作品がここにある!

藤本タツキ短編集

チェンソーマンの作者の、いわゆる「初期短編集」である。

藤本タツキ短編集17-21【あらすじ】

藤本タツキ短編集

四つの作品が収録されている。それぞれに内容的なつながりがあるわけではないので、別々に紹介していくとしよう。

ちなみに、収録作のタイトルというわけでもないこの『17-21』という書題だが、おそらく「作者が17歳から21歳にかけて描いた作品群」という意味だと思われる。

この漫画の試し読み
藤本タツキ短編集

この漫画は電子書籍ストア「BookLive!」で取扱い&配信中!

今すぐ試し読みする

※ストア内の検索窓に漫画タイトル「藤本タツキ」と入力して検索すれば素早く作品を表示してくれます。

藤本タツキ短編集17-21【ネタバレ】

藤本タツキ短編集

庭には二羽ニワトリがいた。

17歳のときの作品。作者は17歳のときに美大に入っているのだが、その入学の直前に書かれたものらしい。

で、内容だが、一言で言えばSF、そしてヒューマンドラマである。まず、ここは「異星人に征服された地球」である。その異星人という連中は、地球人を食べる。残酷な化け物というわけではなく、高い知性と理性を持っているのだが、「地球人が牛や豚や鶏を食べるのと同じように」地球人を捕食する。

そんな世界の、とある学校のニワトリ小屋で、ニワトリのかぶりものを被ったふたりの地球人がひっそりと生きていた。青年と少女である。ほとんどの異星人は地球人は食べるが鶏を食べる習慣を持たず、そしてニワトリと地球人を見分ける能力もほとんど持っていないのである。

だが、ある日、その学校にニワトリを食べる風習を持つ星からの転校生がやってきた。同時に、「地球人の生き残りがまだどこかにいるらしい」という噂を、青年と少女が耳にする。青年は決断した。少女を、その生き残りの地球人たちのもとに逃がすことを。

実は、青年の正体は異星人であった。少女に「なぜ地球人を食べるのか。自分が同じ立場になったらどう思うのか」と問われ、その意味を考えるために地球人のふりをしていたのだ。青年は少女を逃がした。だが、少女を含む地球人たちは、その後まもなく滅ぼされたのだった。

佐々木くんが銃弾止めた

この短編集の四作品の中で、作者自身がもっとも高く評価する、と語っている作品。それはいいんだが、ジャンルは……なんだろう。ファンタジーかもしれないし、SFなのかもしれない。

さて、この物語の主要な登場人物は三人いる。タイトルの「佐々木君」は生徒である。川口先生という先生がいる。授業を受けている。そこに銃を持った男が乱入してくる。男は、川口先生に高校時代に振られたせいで人生がうまくいかなくなったことを逆恨みしていたのだ。で、川口先生は「自分はなんでもするから生徒を傷つけないで」と言う。すると男は「じゃあセックスさせろ」と俗物的なことを言い出す。だが川口君は「それはだめだ」と言い張り、撃たれたが、銃弾を素手で止めた。なぜ止められたのか、よく分からないが、止めた。そして犯人を説得し、銃を降ろさせてしまったのであった。

恋は盲目

怒涛のシュールギャグ馬鹿マンガ。こういうのも書けるんだなあ。こういうのも書けるから、チェンソーマンみたいのも書けるんだなあ。話としては、生徒会長の少年が後輩の少女に告白するために頑張り、頑張るけどなかなか勇気が出ない、という構造の話。その間に、強盗に襲われたり、宇宙人が地球を破壊すると言い出したりするのだが、「今それどころじゃないから」と言って、生徒会長君はあっけなく問題を解決してしまうのであった。そして告白もうまくいくのであった。

シカク

「39度の熱が出たので、そういうときにマンガのネーム切ったらどうなるか試してみた」という経緯で生まれた作品。どうでもいいが多分重要であることを一つ言うと、主人公がマキマに(外見的に)似ている。

主人公は殺し屋の少女である。ある日、不死身の吸血鬼に「(人生が退屈だから)俺を殺してくれ」と依頼される。依頼されたが、果たせなかった。不死身だからである。で、なんやかんやで少女は吸血鬼に惚れてしまい、眷属にしてもらうことになった。そういう話である。

藤本タツキ短編集17-21【感想】

藤本タツキ短編集

初期作品集というものではよくある話はあるが、絵柄が安定していない。『チェンソーマン』よりもくっきりしたタッチで描かれている作品とかもある。

作者の自薦がある通り、四作品でいちばんうまく描けているのは『佐々木くんが銃弾止めた』だと思う。ただ、個人的には筆者は『庭には二羽ニワトリがいた。』の持つ、独特の寂寥感が好きかもしれない。

これを17歳で描いた、というのは本当にすごいものを感じるのである。


藤本タツキ短編集

藤本タツキ短編集 17-21

原作・著者藤本タツキ
価格459円(税込)

『チェンソーマン』を生んだ鬼才・藤本タツキの原点! 漫画賞初投稿作『庭には二羽ニワトリがいた。』から、思春期の熱情が暴走する『佐々木くんが銃弾止めた』、迸る恋心が全てを蹴散らすSFラブコメ『恋は盲目』、ネジがぶっ飛んだ殺し屋少女の恋『シカク』まで――剥き出しの圧倒的才能が炸裂する、初期短編集!!

今すぐ試し読みする


※BookLiveで取り扱いあり!電子書籍ストア内の検索窓にて「藤本タツキ」と入力すれば素早く絞り込んで作品を表示してくれます。

\\ NEXT //
藤本タツキ短編集22-26【ネタバレ】チェンソーマンらしさも溢れ出す鬼才の初期短編集2弾!