『不滅のあなたへ』現世編突入、第13巻である。なお、アニメ版は2021年4月からの予定だそうだ。
不滅のあなたへ【13巻】あらすじ
さて、前の話から現世編に移るまでの時間経過は「数百年」だそうである。
千年は経っていないらしい。数百年の間に、産業革命とか文明の勃興とかいろいろあったようで、原宿駅にしか見えない建物も立っていれば、街ではタピオカ屋が軒を連ねている。
もっとも、「西にある古都レンリル」とかいうセリフもあることから、ここが地球ではないことはかろうじて分かる。
そんな世界で、フシは目を覚ました。完全に意識を断っていたらしく、状況をまったく把握していない状態で。
不滅のあなたへ【13巻】ネタバレ
いつもの姿に戻ったフシ、「平和な世界」が訪れたことに歓喜している。が、非常にのんきなことに、生き返らせるべき面々を「それぞれの故郷で」生き返らせてしまう。
おかげでひと騒動巻きおこるのだが、それは後で語ろう。
ちなみにフシは根っこで星全体を覆い尽くしているわけだが、そのままでは空を飛んだりするのに不便である。困っていると、例の黒服の「観察者」が現れて、新しい能力をくれる。
切断したものと再接続する能力、だそうである。
さて街へ出たフシ君、車というものを知らないのでいきなりトラックにはねられる。不死身だから平気だけど。
そんなこんなで彷徨っていたフシだが、魚の姿で泳いでいたら人間の少年に釣られてしまった。結局その人間の家に「居候」することになる。
テレビなど見ることができるので、いろいろなことが分かる。まず、いかに世界が変わったとはいえ、やはり連続している部分もあって、まずボンの存在は「有名な歴史上の人物として」あの恰好とともによく知られている。
そして「ティスティピーチ財団」なるものが活動していて、フシのことを把握している。
これはボンが生前に作った団体で、フシについての情報を神話としてではなくきちんと事実関係として把握していて、フシが復活するのをずっと待っていたという団体だ。
かれらの尽力で、各国に離れ離れになっていた(フシのせいですが)みんながどうにか再集合することができ、みんなフシの居候先に集まってくる。
同時に、フシは一人の少女に出会う。ミズハといって、ハヤセの末裔であり、18代の当主であるという。
フシは「幸せに暮らしているか」と問うのだが、少女はよく分からない顔で生返事をする。フシはそれで満足そうである。
しかし、この少女がやっぱり尋常ではなかった。
なんかまだよくわからんのだがかなり歪んだ精神性の持ち主で、ふと気が付いたら母親を包丁で刺していた。なんだかよく分からないのだが、自分は特別な存在で、特別な何かにならなければならない、なれないくらいなら17で自殺する、という、普通なら思春期の気の迷いだがこの作品ではそうは済みそうもない心のアレを抱えているのである。
で、母の死(?)にパニックに陥って逃げ出すのだが、ふと現れて声をかけたフシに言う。わたしと友達になって、と。
不滅のあなたへ【13巻】感想
この巻を読み終わった後、しばらく息ができなかった。
というのはもちろん比喩だが、そんな気分にさせられるくらい読後感の深い13巻である。
大きくストーリーと設定を巻き直すということで失速するのではないか?という危惧もほんの少しだけ心中にあったのだが、そんな心配はまったく無用であった。流石と言うほかはない。
現代編は「平和な世界」を描いている。
しかし、その平和が、平和であるがゆえに不穏である。死をも克服したフシを、この先待ち受けているのはどのような運命であるのか。これからもこのシリーズ、目を離せない。
不滅のあなたへ
何者かによって”球”がこの地上に投げ入れられた。その球体は、情報を収集するために機能し、姿をあらゆるものに変化させられる。死さえも超越するその謎の存在はある日、少年と出会い、そして別れる。光、匂い、音、暖かさ、痛み、喜び、哀しみ……刺激に満ちたこの世界を彷徨う永遠の旅が始まった。これは自分を獲得していく物語。
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