漫画「式の前日」ネタバレ感想!1話1話が心に染み入る短編集!

式の前日

漫画「式の前日」あらすじ

本作品は短編集である。従って、あらすじは書きようがないのだが、ひとつ。

この短編集の表題作であり、また巻頭作ともなっている「式の前日」という短編は、作者のデビュー作に当たるとのことだ。

漫画「式の前日」ネタバレ感想

式の前日

八つ違いの姉が結婚する。父母は幼い頃に亡くしており、実質的に母親代わりでもあった姉だ。その、式の前日の、家族として、二人きりの姉弟として過ごす最後の一日の模様が、たんたんと描かれる。淡々と描かれているが故にこそ、ラストシーンの「歩いてやるか、ヴァージンロード」という言葉が逆に胸を打つ。

こういった、「何気ない場面における何気ないがしかし深さや鋭さを持った感情」を描くのが、この穂積という作家は巧みである。

あずさ2号で再会

タイトルから予想できるような内容とはまったく違う。

まず、表面的には、「離婚した父親と母親がいる子供が、離婚した父親と面会をして一日を過ごしているかのような(ただし、台詞回しがところどころ、?となる)、そんな描写があるのだが。

どうも、この日はお盆で、この父親は幽霊であるらしい。

つまり死んだ父親の幽霊と一緒に過ごしているのだ。あずさ2号というのは特急列車ではなく、お盆の茄子の乗り物に書かれた名前である。読み手の心に残る読後の切なさがいかにもこの作者、という感じがする。

モノクロ兄弟

双子の老人の兄弟が、大昔の同級生の女性(二人の初恋の相手)の葬儀の日の帰りに、飲み飽かしながら昔語りをする話。

どっちが先に告白しただとか、彼女は誰が好きだったとか、そんな話をするのだが話の内容そのものは正直他人にはどうでもいいような内容のものだ。

ただ、老人が青春を語る。ありそうで、あんまりない切り口の作品であるように思う。

夢見るかかし-前編-

10年ぶりに故郷のカンザスに帰る一人の男。妹の結婚式であるのだという。男と妹はもともと孤児であり、養父母である伯父夫妻やいとこたちと折り合いが悪く、兄は「自分が妹を守らなければならない」という固い、そして過剰な決意を抱きながら成長していった。

二人を見守るのはただ、畑に立つ一本のかかしだけ。それが彼らの親代わりの存在であった。やがて青春の年頃を迎えた妹は恋人を作り、自分の居場所も役割もなくなった、いや実は最初から無かったのではないか、と思い詰めた男は旅に出る。

夢見るかかし-後編-

カンザスの田舎者は女たらしの男に成長しており、女のヒモになってニューヨークに住みつき、やがてささやかな職を得た。そんな彼のもとに、10年も疎遠になっていたカンザスから、妹の結婚式が行われることを告げる手紙が届く。

差出人は不明。妹ではないし、伯父夫婦でもいとこたちでもなかった。なんだかんだで妹がカンザスで平和に暮らしていることを知った兄は再びニューヨークへと戻っていくが、結局手紙を出したのが誰なのかは不明なまま。その兄の背を見送るのは、特別に結婚式の場に運び込まれたあのかかしであった。

10月の箱庭

幻想的短編。長く筆を断っているダメな小説家のもとに、「親戚である」と称する少女が転がり込んでくる。ダメ中年と少女の絆とかを書いた物語? かと思うとこれがなんかだいぶ違う。

実際には、彼女は親戚ではない。人間ですらない。死んだ少女の肉体に、たまたま同じタイミングで死んだカラスの魂が乗り移った存在である。束の間の日々を「家族」として過ごしたふたりの記憶を、小説家は新しい作品に起こす。

それから

「式の前日」のつづき。というか後日譚というべきか。シスコン弟が猫を飼うようになったという話と、姉が元気な女の子を産んだという話が知らされる。

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