道満晴明の新しい単行本である。これ一巻で完結している作品だ。
漫画「バビロンまでは何光年?」あらすじ
いわゆるスペースオペラである。宇宙船に乗って、星から星へと旅をするという古典的なやつだ。作者のSF好きを反映してか、いろんな古いSFの要素が散りばめられている。多分筆者も全部のネタは拾い切れていないと思うけれども。
主人公はバブと呼ばれている地球人。なんらかの理由で滅亡した地球の最後の生き残りである。旅の友は、ホッパーという異星人(なんか動物みたいな姿をしている)と、ジャンクという機械生命体(見た目はロボットそのもの)。
漫画「バビロンまでは何光年?」ネタバレ
物語開始早々、バブは女に飢えている。セックスがしたいわけじゃない、いやしたくないわけではないがそうではなくて、子供を作りたいのだという。人類が滅亡してしまったので、種の保存の本能が暴走しているのではないかとのことだ。
で、星々を訪ね歩いて異星人の娼婦を買ったりするのだが、それでは問題の解決にならない。ある星で知り合ったヒッチハイカーの少女カレルレン(オーバーロード人という種族で、かなり地球人に近い姿をしている)が、種族の相性の問題で受精の確率は低いけれども協力してくれるということになった。というわけで二人はせっせと事に励む。やがて目的の星に着き、カレルレンは「子供ができたらちゃんと育てるから」と言って去って行った。
旅の途上、ホッパーは「別に女を見つけて相手に産ませなくても、バブが性転換して自分で子供を産めばいいのではないか」などと言い出す。
それを可能にする技術は、医師であるジャンクが持っている。というわけで身体にナノマシンを仕込まれ、バブは定期的に男と女とを入れ替わる体質になってしまった。
ある酒のうまい星でしこたまビールを飲んだ三人は飲酒運転で事故ってしまい、バブは宇宙パトロールに捕まって投獄されてしまった。禁錮3時間の刑だというのだが、バブの主観時間で3時間経って迎えに来たホッパーたちは、こちらでは10年の時間が経っているという。重力によって時間の流れが違ったせいでウラシマ効果が生じたわけである。
その後、バブはアーカーシャという銀河の記録のすべてが保管されている星で地球の記録を発見、記憶を少し取り戻す。
自分の本名がダニエルで、英国人だったこと、日本に遊びに来ていたときに一人の少女と知り合ったこと。理由は分からないがバビロンという場所に行かなければならないということ。
問題を解決するために、この宇宙の万能の存在である「四次元人」に会いに行くことになる。その途上、ある星でカレルレンに再会したバブ(このままの名で呼ぶ)は、二人の子供アッカとヴィタを紹介される。バブとカレルレンの間の子である。ところがカレルレンは謎の落雷を受けて死んでしまい、バブは二人を引き取って宇宙船に乗せることに。
やがて、バブは四次元人にコンタクトを取る事に成功する。というか、四次元人の方がコンタクトを取ってきたのである。その目的はアッカとヴィタ、より厳密に言えば、「地球人とオーバーロード人の間に生まれた子供」だった。ある数式を解かせて、自分が四次元人から五次元人(他の宇宙へ行き来できる存在)になるためだ。地球が滅びたのも、カレルレンが死んだのも、すべてその目的のために四次元人が画策したことだったのだ。
結局、四次元人の野望はくじかれ、バブは過去へと戻ることになる。バビロンというのは、かつて地球の日本で、知り合った少女とデートの約束をしていたパブの名前であった。おしまい。
漫画「バビロンまでは何光年?」感想
綺麗にまとまっている短編である。道満晴明の作風のファンであるなら是非お勧めしたい。
バビロンまでは何光年?
消滅した地球の生き残りのバブを含める3人組がポンコツ宇宙船で旅をする。ロマン広がる果てなき宇宙で、地球の記憶を求め星から星へ。性に望郷に家族愛。そして旅を続けたその先で知る事実は…!? 宇宙・地球・お台場。壮大だけどなんだか身近な、心に刺さるSF彷徨記!!