テレワァク与太話
著者 山田金鉄
雑誌 モーニング
出版社 講談社
ジャンル 青年漫画
とてもよいラブコメをご紹介する。何故ならとてもよいからである。山田金鉄『テレワァク与太話』、全1巻完結済み。
テレワァク与太話(あらすじ)
山田金鉄という漫画家はもともとキャリアのあるプロの作家で、代表作は『あせとせっけん』。調べたら週刊少年ジャンプのデビューでキャリアをスタートしていたり、『鬼滅の刃』の作者の元アシスタントだったりと色々な情報が出てくるが、まあ際限がないからそのへんのことは置いておこう。
で、『テレワァク与太話』についてである。
まず、舞台となっているのが現代、といってもほんの少し過去、具体的にはコロナ騒ぎ中のころの日本である。主人公は(本人曰く)ブラック勤めのプログラマー。もともと普通に通勤していたが、コロナのせいで在宅勤務(テレワーク)になった。
自宅で仕事をしていたら、隣人と出くわした。考古学をやっている大学院生だという。若い女性。メガネ。そこから、物語は始まる。
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テレワァク与太話(ネタバレ)
とてもよいラブコメなのだが、いざネタバレを書こうとするとちょっと悩むな。そんなに、大きな事件みたいなものは起こらない。日常の中で、少しずつ二人は親しくなっていく。いちばん最初の出会いは、ベランダ(バルコニーと言うべきかも)であった。
主人公は、庭になんかアンティークの石像を飾り、植物をたくさん生やしている。賃貸だと思うのだがよくやるものだ。ヒロインは何しろ考古学が専門なので、それを指して、アンコール・ワットの様式やね(大阪弁)などと言う。そんな感じで、二人はなんとなく親しくなっていく。
なんとなく、そこはかとなく、さりげなーく、ヒロインは主人公に好意を示したり示さなかったりする。そのへんがなんとも蠱惑的なのだが、主人公はもう気が気ではない。
いつの間にやらお互いの部屋を出入りするようになり、お互いに本を貸し借りしたりして、ふと気が付いたら彼女の部屋の椅子の上で寝落ちしていた主人公、目覚めたら目の前にヒロインがいてびっくり。
「襲われるかと思った?」というヒロインに、堅苦しい喋り方の主人公は「そんな選択肢があなたにはあるんですか」と返す。そう言ったら、「あるかも?」とかなんとか言って、キスされた。お互いの好意をいちおう確かめ合ったふたり、帰り際に今度は主人公の方からキス。
ここからはいちおう、交際スタートということになるわけだが、少し後にクリスマスがあって、「こういう場合はカップルなんだからお出かけとかするべきだろうか」と主人公は思うのだが、ヒロインは「家でまったり過ごしたい」と言う。結局、そうなる。
主人公は逡巡しつつも、通販でコンドームを注文した。が、クリスマスのせいで遅配になり、当日には届かなかった。そのことに気付いたヒロイン、「じゃあ、うちが買うてくるわ」と言い出し、二人は無事ベッドインするのであった。
そこから先はいきなり急展開になる。
ヒロインは念願かなって研究旅行に出るのだが、スマートフォンが故障しただかなんだかで連絡が取れなくなってしまう。スマートフォンの修理が終わってぶじ連絡が取れた主人公、「会いに行きます!」と絶叫、実に地球の裏側(南米)まで会いに行く。
それから二人はよく海外を旅するようになり、籍も入れた、ということが後日談的に語られてエピローグ。めでたしめでたし。
テレワァク与太話(感想)
本当に、とてもいいラブコメだった。波乱らしい波乱をろくに起こさず、ヒロインの日常的な魅力だけでこれだけのラブコメを、しかも全一巻完結で書き切る力量は並大抵のものではない。
ただね。本編で一つだけ気になることがある。本当にどうでもいいことなんだけど、気になったので書いておく。
クリスマス当日、「おなかすいたら出前でもとって夕食にしよう」というプランニングなのだが、クリスマスのそれも夕食の出前は、だいぶ前から予約しないと大変なことになります! いや、それだけ。本当にそれだけなんだけど、どうしてもそれが気になって……。
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