『リウーを待ちながら』全3巻の完結巻である。
表紙の少女は鮎澤潤月(あゆさわ うづき)と言って、1巻で少し紹介した中学生の子。
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リウーを待ちながら【3巻あらすじ】
最終巻なので、横走市を襲ったペスト騒動の顛末の結びまでと、その後が少し描かれて終わる。
というか、正直最初に1巻だけ読んだときは「これ3冊でまとまる話なの?途中で打ち切られたの?」とか思ったものだが、ちゃんと綺麗に終わっているからご安心を。
リウーを待ちながら【3巻ネタバレ】
2巻の終わりで脱柵した自衛隊員の人だが、結局捕まるというか、観念して出頭する。母が既に死んでいることを知って、心が折れてしまったのだ。このエピソードに関してはそれで終わりである。
詳しいことは描写されていないものの当然この作中の日本で起こっていることは世界的にも注目を浴びているはずであり、横走市民に差別の目が向けられたりしていると同時に、海外から多くの医師が救援に駆け付けたりもしている。
たぶん「国境なき医師団」とかそういう人であろう。詳しいことはよくわからないが、玉木の父もそういう国際的に活動する医者だったらしい。
さて、今巻の実質的な主役は潤月である。両親は離婚しており、母親は死んでしまい、そして母親が死んでまもなく横走が封鎖されてしまったのでとりあえず一人暮らししているのだが、アパートの隣人が感染者だった。赤ん坊がおり、その隣人が死亡したあと赤ん坊が泣いているのを聞きつけた潤月は、ベランダ伝いに部屋に入って赤ん坊を救出する。だが、そこで薬剤耐性ペスト菌と「濃厚接触」をしてしまった。
とりあえず自宅で隔離状態になるのだが、結局感染したことが分かり、横走中央病院(の一部であるところのテント)に運び込まれる。もう助からないかと思われたのだが、結論から言えば助かった。薬剤耐性ペストから生還したのである。日を同じくして、他に二人、回復者が現れていた。
このへん専門的な話になって難しいのだが、なんでも一度ペストにかかって回復し、そのあとで薬剤耐性ペストにかかった人間は抗体のようなものを持っていて、助かるらしいのである。
というわけで、疫病騒ぎは山を越えた……のだが。最後の悲劇が玉木たちを襲う。原神が感染したのである。
原神は研究者であるから、もちろんすぐに、自分が抗体を持っているかどうか調べた。そして、持っていないことをすぐに知った。そして玉木の前で、「僕は100%死ぬ」と言い切る。
ここまで冷徹でクールなキャラで押してきた原神であるが、「死にたくない」と言って涙を流し、玉木に「手を繋いでくれ」と懇願するのであった。
それでなんか、そういう描写ほとんどなかったんだけど、玉木と原神、ひそかになんか想いを寄せ合う同士になっていたらしく、玉木は医者としてこれだけはやるまいと思っていた、神社への神頼みに行く。
だが結論から言えば、原神は死ぬ。
そして、遺品として、カミュの『ペスト』を玉木に託すのであった。読んでごらん、面白いから、と言って。
ちなみに玉木は横走中央病院を出て、自分の病院を建ててそこの院長になった。これで物語は終わりである。
リウーを待ちながら【3巻の感想】
あえてここまで一言も触れてこなかったが、この作品の話をするのはこれが最後だから流石に言及するとしよう。皆様言わずともご存じではあろうが、2020年晩夏現在、日本はコロナ禍の最中にあるわけである。
実際に世界を襲ったコロナ禍は、この『リウーを待ちながら』が描いた世界と同じようである部分もあればそうではない部分もあった。
ただ、これを読んでいる途中でテレビを付けたら、コロナ患者への差別の事件がどうしたとニュースをやっていたのを見たときにはゾッとしたものである。
この作品の結末は、カミュの『ペスト』の引用で結ばれている。長くはないのでここにも引き写そうかと思ったが、流石にそれは卑怯だと思うので、ぜひその一文は諸氏ご自身の目で確かめていただきたい。
リウーを待ちながら
富士山麓の美しい街・S県横走市──。駐屯している自衛隊員が吐血し昏倒。同じ症状の患者が相次いで死亡した。病院には患者が詰めかけ、抗生剤は不足、病因はわからないまま事態は悪化の一途をたどる。それが、内科医・玉木涼穂が彷徨うことになる「煉獄」の入り口だった。生活感溢れる緻密な描写が絶望を増幅する。医療サスペンスの新星が描くアウトブレイク前夜!!
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