『KILLER APE』既刊3巻(2019年9月現在)のうちの2巻をご紹介する。
漫画「KILLER APE」2巻のあらすじ
哲平が送り込まれた新たなるVR空間は「ノルマンコンクエスト」である。1066年イングランド、スタンフォードブリッジの戦いならびにヘイスティングスの戦いのことをこう言う。
ちなみに、中で死んでも死なないとはいえPTSDになったりするには十分な訓練環境であるので、1巻ワーテルローの時点では300人いたWSECの訓練兵は50人くらいまで減っている。
ノルマンコンクエスト編は3巻まで続くので、2巻においては主にスタンフォードブリッジの戦いが……描かれない。歴史が変わってしまい(しょせんは仮想現実の上でのことではあるが)、スタンフォードブリッジの戦いとは別の戦いが発生することになってしまうのである。
漫画「KILLER APE」2巻ネタバレ
なんで歴史が変わってしまったかというと、WSECの訓練兵のひとりセバスチャン(1巻で、ワーテルローの戦いにおいてスコッツグレイを利用することを提案したのもこの人)が、訓練の途中で敵陣に走り、敵方の王に内通して情報を漏らしたためだ。
ところで、その前の話をしよう。今回のノルマンコンクエストの仮想空間はワーテルローのときとはちょっと設定が違う。ワーテルローでは銃の扱い方、馬の乗り方、基礎体力などがプログラムとしてインプットしてあり自然にできるようになっていたのだが、今回は生身の肉体と同じ状態のまま戦場に放り出されたのである。ただし、仮想空間上で行った訓練などの身体的フィードバックは現実にも反映されるという寸法だ。
今回WSECが与するのは、イングランド王ハロルド2世。史実ではノルマンディー公ギョーム2世(のちのノルマン朝開祖ウィリアム1世)によって敗死させられる人物であるが、このハロルド2世を助けてギョーム2世に勝たせてしまおう、というのが訓練の趣旨なわけだ。
だがWSECの訓練兵は50人くらいしかおらず、しかもろくに剣も扱えないへっぽこの集団である。何をどうしろというのか。できることと言えば情報戦くらいであるわけだが、しかも味方の中から敵に内通する奴が現れるときた次第だ。
さて、哲平は戦いの勝敗などよりも英雄にインタビューすることが目的であるので、ハロルド2世の知遇を得る。これもなかなか面白い人物であるが、哲平はナポレオンのときに
「くわせものの英雄」というもののヤバさを知っているので、最初は疑ってかかる。最終的にどうなるかは3巻のお楽しみ。
さて、時代が時代であるので、行軍中の村々を略奪しながら軍隊は進む。本人の国であり本人の領地なんですが、リアルガチ中世というのはそういう時代なのである。
哲平はハロルド2世の命令で特別な新兵訓練を受けさせられることになるのだが、もちろんそんなすぐに使いものになるほどの兵士が育つわけもない。そんなこんなをしているうちに、内通者のせいでハロルド2世の軍隊は奇襲を受け、壊滅させられてしまう。この時点でもう史実と違う展開である(ハロルド2世は北から攻めてきたハーラル3世というヴァイキングの王をスタンフォードブリッジで撃破するというのが史実)。
正攻法では打つ手がなくなったハロルド2世だが、捕虜になったふりをしてハーラル3世の陣中に入り、敵陣にいた自分の弟(WSECの関係者とは別)を討ち取り、ハーラル3世にギョーム2世に対する共闘を持ち掛ける。2巻はここまでである。
漫画「KILLER APE」2巻の感想
ノルマンコンクエストはワーテルローに比べるとネタとしては地味なのであるが、今巻はやはりハロルド2世がいい味を出している。前作『バンデット』もそうだったが、やっぱりこういう人物を描かせると本当にイキイキしている作者である。
KILLER APE
人工知能が極度に発達した22世紀末。突如、謎の飛行体「GAYLA(ゲイラ)」によってすべてのAIが停止した。人間の兵士すら一人もいない世界で、戦争勃発の危機を予知した大企業は、兵士の養成を決意。主人公・坂本哲平は「人が人を殺す」技術を学ぶために、歴史の中の戦場に飛ばされる。ミッションは「ナポレオンとの決戦」!? 『バンデット』の河部真道が放つ、驚天動地のSFバトルアクション開幕!!