随分と久しぶりの紹介になるが、道満晴明の新作「ビバリウムで朝食を」である。去年の夏に出ていたものなのだが、単行本はまだ一巻のみ。とか言ってる間に別の新連載が始まったらしいけど大丈夫なのかなあ。
ビバリウムで朝食を【1巻】あらすじ
小学生が街の七不思議を追っかけるジュブナイルもの。……の皮をかぶった、藤子不二雄（というか、ドラえもん）オマージュの強いSFである。
正直、一巻だけ読んでもストーリーはともかくどういう設定でどういう世界観の作品なのか、よく分からない。読んでる側の読解力の問題ではなく、わざわざ謎めかし、設定を少しずつ開示していっている構成なのである。
さて、主人公は小学６年生の三人組。木花（コノハナ）ヨキ、多児ミコト、櫛田キクリ。仲良し三人組というやつで、どっかに作った子供の「秘密基地」によく出入りしている。一巻を読んだ限り、中でもヨキが主人公である模様。
いちおう、この三人が「七不思議」の謎に迫っていく、というのが大雑把なあらすじになっている。
ビバリウムで朝食を【1巻】ネタバレ
最初、普通の日本の現代社会の小学生っぽく描写されているのだが、それはミスリードであるらしいのだが、最初からネタを明かしているときりがないのでまず最初の話をしよう。七不思議と言っているが別に七つあるから七不思議なわけではない。ここは「不思議な街」である。不思議なことがたくさんある。その中から七つセレクトして七不思議にしよう、と勝手に三人組が主張しているのである。
中でもっとも重要な七不思議は「ノッポマン」と呼ばれるもの。謎の大男が子供をさらって路地裏に消える、と言われている。
さて、ヨキはわりとあっけなくそのノッポマンに遭遇する。ただのでかい青年ではないのかと思えばさにあらず、これがただものではない。ノッポマンと街でぶつかったヨキはそのあとをつけ、仲良くなることに成功する。ノッポマンとヨキはなぜか言葉が通じないのだが、ノッポマンが出したあやしげな「コンニャク」を、おでんにして食べたら会話できるようになった。そう、「ほんやく」されるようになったのである。ノッポマンはライモンと名乗り、探偵で、四人の人間を探している、と言った。ヨキは「助手」になると言って、ライモンにくっついて歩くようになった。
さて、このライモンはいろいろと不思議なガジェットを持っているのだが、「ほんやくするコンニャク」をはじめ、明らかにドラえもんに出てくる的なアレばっかりである。だいたい、なまえも「ラいもん」だしなあ。
ちなみにライモンが探しているうちのひとりは海馬フタハと言って、ヨキたちの学校に転校生として現れる。子供の外見をしている。
ほかのもう一人は、三人組がプールに遊びに行ったらそこにいた。豪快な感じの性格の女の人であった。その後も年がら年中街中をうろうろしているのだが、なぜかライモンとは遭遇することがない。謎である。ライモンはなんらかの理由で四人とは出会うことができないようになっている。らしいのである。
多分、彼は探偵ではないし、探している四人も、何者なのかはよくわからないがそもそも人間ではなさそうだ。で、うすうすわかってくるのだが、この世界はたぶん「街」ですらない。ライモンは「未来から来た」と自称しているのだが、タイムマシンで未来から過去の世界にやってきた、という感じではない。これ以上は何を言っても推測にしかならないので、とりあえずこのくらいにしておくが。
ビバリウムで朝食を【1巻】感想
これからすごく面白くなってきそうなワクワク感に包まれた1巻である。
ずっと前に紹介した『ヴォイニッチホテル』の切れ味にはちょっと劣る、みたいなことを言われてはいるのだが、まあ過去作の焼き直しみたいなものに堕するよりは、新しい作風に挑戦してもらった方が読者としては追いかけがいがあるのでもあり。
ビバリウムで朝食を
雲雀小学校6年の木花ヨキ、多児ミコト、櫛田キクリの仲良し3人組は、夏休みに街の七不思議を探検する。最初の「不思議」は、最近よく街で目撃される大男「ノッポマン」の正体だったが…。
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