作画:郷「キノの旅」漫画ネタバレ感想!入門用におすすめの一冊!

郷作「キノの旅」

先にシオミヤイルカ版『キノの旅 』を紹介したが、こちらは別の漫画家「郷」による、同原作のコミカライズである。区別のため、こちらは「郷版」と呼称する。

キノの旅(1)

作画:郷「キノの旅」あらすじ

キノは旅人である。エルメスと名付けられたモトラド(注:二輪車。空を飛ばないものだけを指す)に乗って、諸国を渡り歩く旅をしている。

郷版1巻には4つの国が登場する。「人を殺すことができる国」「撃ちまくれる国」「過去のある国」「優しい国」だ。

ちなみに、現在シオミヤイルカ版が2巻まで、郷版はこの1巻まで刊行されているが、おそらく意図してそうしているのだろうが登場する国やエピソードに重複はない。

また、現在アニメ版(田口智久監督)も放映中なのだが、筆者は観ていないのだがそれの1話目がこの郷版の1話と同じ「人を殺すことができる国」であったらしい。これも意図的なものであろう。

作画:郷「キノの旅」ネタバレ

人を殺すことができる国

キノが辿り着いた国は、「殺人の禁じられていない国」であった。もともと、「人を殺すことのできる人間」を優先的に入国させることで形成された国なのだという。キノとほぼ同時期に入国したある無法者は、自由に無法を働けるものと思ってキノを襲うのだが、キノが反撃する前に、国民たちが男を殺した。そして言う。

「この国では、誰でも人を殺すことができる。この国で無法を行うことは、禁止されてはいないが、許されていないんだ」

キノは定住を勧められるのだが、断って再び旅に出る。

撃ちまくれる国

前の話と似ているようだがこっちは寓話的要素などは薄い、ライトな短編である。国民全員がガンマニアで、ホテルの部屋にまで射撃スペースが併設されており、パースエイダー(この世界における銃器のこと)の店もわんさかあるが、銃を犯罪に用いることは重罰をもって禁じられている、という国の平和な様子が描かれる。

過去のある国

キノの「師匠」について言及される。キノの師匠は昔、旅人だったので、キノにも多くの国のことを話している。今から行く国は、師匠が訪れた数十年前、無人の美しい廃墟だったのだという。

ところがキノが訪れてみると人がいて、人々は国の立派な歴史を語って聞かせた。この国が無人であったことがあるという事実は語り継がれていないようだった。話が違うのでキノがいぶかしんでいると、国の長老が秘密の話をしたい、という。

この国は流れ者が数十年前に興した国で、歴史はすべて作り話なのだが、その事実は自分しか知らない。もしかしたらかつての住人が戻ってきてトラブルが起こるかもしれないという問題があるので、この恐ろしい秘密を、どうかキノにだけは知っていてほしい、と長老は語るのだった。

優しい国・a

キノは「評判の悪い国」に辿り着く。住民の愛想が悪く、態度が冷たいのだという。ところが、キノの前ではみな親切であった。あの評判は何だったのかとキノはいぶかしむ。

優しい国・b

滞在3日目。キノがふと「もう1日いようかな」と滅多に言わないようなことを口にすると、親切だったはずの入国審査官がにわかに顔色を変え、それは許可できない、すぐに予定通り国を去りなさい、と告げる。

キノが国を出てしばらくすると、突然の火砕流が街を飲み込み、あっという間に「優しい国」はその中に消えた。

キノは、国で渡されていた手紙を読む。

「我々は国の滅びを知り、あえてこの地に残りました。評判が悪いまま滅びるのは心残りだったので、最後の旅人を精一杯もてなそうと決めて」。

作画:郷「キノの旅」感想

郷作「キノの旅」

「優しい国」という作品は、原作『キノの旅』の中でも屈指の人気エピソードである。というか、各話別人気投票というのをやったことがあるのだが、確かそれで1位になったエピソードなのだったと思う。

キノが師匠から託された銃を見て顔色を変える、どうやら師匠の知り合いらしきガンスミスが登場するなど、伏線の多いエピソードでもある。

他のエピソードも、比較的ライトで、軽めのものが選ばれている。あとがきによると漫画家・郷氏はガンマニアなのだそうだが、その影響で銃に関する逸話が多いのも特徴だ。その代わり、けれん味のようなものはほとんどない。

もう片方のシオミヤイルカ版と比べた場合にも言えるのだが、『キノの旅』が初めてだという読者、入門で1冊だけ読んでみたい、という読者には、この「郷版」が一番おすすめであると言える。


キノの旅2 作画:郷

キノの旅2 the Beautiful World

原作・著者郷 / 時雨沢恵一
価格638円(税込)

かつて師匠と相棒が訪れたその国の住民は、全員が首から鍵を下げていた。どうして鍵を下げているのかと師匠が問うと「わかりません」と住民は答えたのだった。その不思議な国をキノが訪ねると住民の首には鍵はなく、キノが鍵のことを聞くとすでに多くの人々が鍵を下げるのをやめてしまったという。鍵は師匠が訪れたころから伝統として国の中央にある石版に差し込まれて、石版には読むことができない文字が刻まれているのだが、果たしてその内容は……。

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キノの旅 the Beautiful Worldの注意点

漫画「キノの旅 the Beautiful World」は複数のシリーズがあります。今回レビューした漫画を試し読み、購入する場合は作画担当をしっかりと確認してから購入してください。