ストーリー監修として田中ロミオ氏が関わっている作品である。田中ロミオというのは、もとははっきり書いてしまうとエロゲーのライターだった人なのだが、その後ライトノベル作家などに転身し、現在の代表作は……こちらでもコミカライズ版を紹介したことのある『人類は衰退しました』かな。
掲載誌が休刊になったとかで二巻で終わってしまったためマイナーな作品だが、とにかく田中ロミオ関連書籍は基本チェックすることにしているので、こうして紹介する次第である。
漫画「うるわし怪盗アリス」あらすじ
主人公はアリスと言う少女。舞台は……ロンドンなどが出てくるので英国。時代は、電子機器類などが登場することからしてほぼ現代のようである。
おおむね現実世界に近いのだが、この世界では美術品に「宝石(ビジュー)」と呼ばれる魂のようなものが宿っている。ビジューは、人間のような姿を持つ、しかし実態を持たない精霊か妖精のような存在である。このビジューが抜き取られると、美術品はその輝きを失ってしまう。
アリスは美術商だった父を失い、ガラクタだらけの美術品に埋もれてメイド働きの身にまで零落していた。失われたビジューを求めて、怪盗になることを決意するのだが……というのが物語の骨子だ。
漫画「うるわし怪盗アリス」ネタバレ
父親を失って一年、アリスは才能のないメイドとしてうらぶれた生活を送っていた。家に帰ればガラクタ同然の、父が遺した美術品に埋もれる日々。ところがある日、偶然から東洋の手鏡を発見し、なんとなく手入れをしてみたらそこから牡丹(ぼたん)と名乗るビジューが現れた。鏡の精であると自ら名乗った牡丹は、それ以後アリスの助手のような、ツッコミ役のような役回りを務めることになる。
牡丹に説明されて、アリスは初めて、家にあるガラクタは価値のない美術品なのではなくビジューを抜き取られてしまったために輝きを失った美術品なのだということに気付く。そうとわかったら、失われたビジューを回収して、輝きを取り戻した美術品を売り払って一攫千金、とアリスはそう考える。
とりあえず父の上客だった金持ちの屋敷にメイドとしてもぐりこんで情報収集をはかったアリス、その家に夜中、怪盗と名乗って忍び込む。ちなみに衣装はメイド服を改造して作ったものである。
金持ちはある怪しげな美術商の女と一緒にいた。クイーンと呼ばれる、アリスと同じビジューを見ることのできる「目利き」である。
忍び込んだ収穫はあって、アリスの家の美術品の一つから奪われたビジューが、人形のような姿でケースに展示されているのを発見、ガラスを破って無事救出に成功するのだった。そのビジューはロゼと言い、元は絵画の精であった。
ちなみに用が済んでもメイドはやめない。いきなり辞めたら怪しまれるし、女美術商クイーンの情報を集める必要があるからである。いろいろ調べて、彼女はただ目利きであるだけでなく、ビジューを本体から抜き取る能力を持っている、ということも分かる。
巻末のエピソードは、ヘンリー・コンランという没落貴族にまつわるもの。彼も美術商であったのだが、妻を亡くして落ち込んで商売をやめてしまっていた。一枚だけ、妻に似たビジューの入った絵を愛玩しているのだが、アリスはそれを取り返すべく動き、結局、そのビジューを元に戻した美術品をコンランに売り、コンランは美術商としてのやる気を取り戻すのだった。
漫画「うるわし怪盗アリス」感想
率直な感想としては、特に田中ロミオっぽくない。その一点でチェック入れて読み始めたのだけれども。だが別に面白くないというわけでもない。作品としては結構よくできていると思う。
いずれにせよ次巻で終わりなので、次はそれを紹介するとしよう。
うるわし怪盗アリス
美術商の父と死別したアリスは、メイドとして働き日々食いつないでいた。そんなある日、家の倉庫の片隅で、ホコリを被った手鏡を発見する。その鏡には“妖精”が宿っていて――。