週刊少年サンデーで『初恋ゾンビ』を連載していた峰浪りょうの初期作品である。全2巻。
漫画「溺れる花火」あらすじ
いわゆるひとつのサナトリウム文学である。つまり、病気のヒロインが物語の中心になるやつ。最近で有名なのだと、漫画じゃないけど宮崎駿の『風立ちぬ』なんかがそうですね。
主人公・泳太とヒロインの小秋は高校の頃からのカップル。
サナトリウム文学には割とよくある事ではあるが、小秋が何の病気なのかはよく分からない。とにかく体が弱く、入退院を繰り返しているのである。
漫画「溺れる花火」ネタバレ
この作品、なんて言ったらいいのかな、まず純愛ものではない。ラブコメでもない。もっと毒のある作品である。
泳太は現在、大学生。19歳。端的に言うと、性欲を持て余す年頃である。実際に持て余している。だがサナトリウム文学なので、我慢せざるを得ない。泳太は小秋を宝物のように大事にしているというか、神格化すらしているふしがある。
既にしてもうこれが不幸な話である。小秋にだって性欲はあるというのに。
ある日、泳太が小秋の病室を訪れると、「小秋がもう一人いる」と錯覚するようなことがあった。髪の色は違うが、顔はそっくり。双子の姉妹とかではなく、小秋の従姉妹の夏澄だと紹介される。
泳太は夏澄に惹かれ始めるものを感じる。夏澄の方も満更ではなさそうだ。という矢先、バイト先の同僚にホテルに誘われてしなだれかかられているところを(この主人公、ヘタレ野郎なんだけどモテる)夏澄に目撃されてしまう。
結局、その誘いは振り払うのだが、泳太は気が気でない。小秋にチクられやしないかと心配なのである。
だが夏澄は小秋にその話をしたりはしなかった。その代わり、泳太を部屋に誘って、我慢するのも限界だろうから小秋の代わりに自分を抱くように、というのである。
泳太はこの誘いを一度は振り切る。だが、次に小秋に会いに行ったとき、小秋を押し倒そうとして拒絶され(もうひと押しすればいけたらしいが、泳太はヘタレなので引いてしまう)、結局夏澄と関係を持つようになってしまう。
別にそれで泳太と小秋が別れるというわけではない。本心は良く分からないが、表面上は夏澄も割り切っているのである。小秋は退院し、泳太に抱いてほしいと言い、家に来た。だが、うまくいかない。いわゆるひとつの「勃たない」というアレである。
初めての相手の時は(初体験の場合は特にそうだが、初体験に限らず“初めての相手”の場合も起こりやすいのである)よくあることなので、小秋も仕方なしにその場は諦める。
だが、泳太は救いがたいことに、その日のうちに夏澄とまた関係を持つのであった。
その後、大学の友人に誘われて海に遊びに行った泳太は、そこで佐保(さお)という女性と出会う。なんとなくいい感じになるのだが、そんなに軽い娘さんというわけではないのでその日のうちにはどうにもならない。
で、泳太はまた夏澄に会いに行く。思わず抱きしめてしまう。1巻はここまでである。
漫画「溺れる花火」感想
ドロドロとした女の情念のようなものが、なんか渦巻き始めている。まだ火を噴いたり或いは泥沼に引きずり込まれたりはしていないが、しかし渦巻き始めてはいる。そんな感じの一巻である。
もう既に色々と手遅れなわけではあるが、小秋との関係はどうなってしまうのか。夏澄の本心はどこにあるのか。なかなか先が気になる作品だ。
2巻はまだ未読であるが、実は既に買ってはあるので、今から読み始めようかと思う。2巻の紹介は先になるが、それはそれということで。ではまた後日。
溺れる花火
夏が近づいてきた頃、泳太はいつも通り小秋の見舞いのため、海沿いの病院へと赴く。昔から体の弱かった小秋は、浅い関係のまま付き合い続けていることに負い目を感じていたが、泳太は十分に深く付き合っていると信じていた。そんな中、小秋とよく似た雰囲気を持つ彼女の従姉妹・夏澄と出会い、泳太の心は揺れて…。峰浪りょうが紡ぐ恋と欲望の物語!!