漫画「愛と呪い」ネタバレ感想!精神を抉ってくる著書の自叙伝!

愛と呪い

代表作『ぼくらのへんたい』で知られるふみふみこ氏による、「半自伝的」自叙伝だそうである。

テーマは家族、愛、宗教、セックスなどなど。何がどこまで本当なのかはよく分からないが、基本的に描写はえぐい。エログロナンセンスとかそういう方向性じゃなくて、メンタルにくる感じでえぐい。

漫画「愛と呪い」あらすじ

自叙伝であるので、幼少期の回想から始まる。たまに現代篇から過去を回想しているシーンが挟まったりしつつ。

1巻は幼児期から、中学校あたりまでである。ちなみにシリーズはまだ完結しておらず、現在最新刊は2巻。

漫画「愛と呪い」ネタバレ

しょっぱなから幼い女児(主人公。そして作者自身の投影体)が父親に性的虐待を受けているところから始まる。なんか、架空の宗教なんだけど新興宗教をやっている一家である。主人公の祖母の代からの信徒であるらしい。問道教、と作中では表記されていて、教祖は「猪木」なる人物。見た目はまるっきりアントニオ猪木である。いいんだろうか……。

ちなみに主人公、暴力も受けている。えげつない家庭である。

小学校編は割とあっさり飛ばされて、中学編からが本編開始という感じ。

小学校の頃は虐待を受けても「世界はそういうものなのだ」という感じに受け止めるしかなかったわけなのだが、中学校に入ってくると「世の中というのは実際にはそういうものではない」というのが分かってくるわけである。要するに思春期だ。

さて、松本という同級生の少女が登場する。不良というほどではないが、世をすねた目で見ている少女である。おっと、書くのを忘れていたが通っている中学校は(あとで分かるが小学校からずっと一貫校の)例の新興宗教の運営している学校であるらしい。

松本という少女は、阪神大震災で弟を亡くし、祈りというものが信じられなくなった、という子である。半グレ状態であるので、この醜い世界を浄化してやる、とか言い出し、刃物などを学校に持って来たりするようになる。だいぶ危うい。

松本さんは主人公と親しくなる。「自分と同種の人間だ」というようなことを言って。

学校の行事で教祖の猪木某が来ることになっているので、刃物を隠し持ち、教祖を殺す、とかいう秘密を打ち明けて主人公にキスをする。まあ、青春というのは病なのである。

ところが行事のある直前、とある世間を騒がせる事件が起こる。なんと言ったか、神戸の少年Aによる劇場型犯罪である。実話ベースなのでこういうあたりは本当にあった事件が起こるというわけだ。

それに前後して、主人公は失恋が原因の不登校に陥る。しばらく経って学校に行ってみたら、松本さんは学校の生徒を皆殺しにする(と自分では言っていたのだが)どころか、他の女生徒たちと打ち解け、友達ができていた。

なんでも、神戸の事件で殺された方の子供が彼女の死んだ弟と同じ年だったとかで、それで学校で落ち込んでいたら慰めてくれる生徒たちがいて友達になったということらしい。

セカイが綺麗にしてもらえなかったことを、ずっと後年の主人公が覚めた目で回想しているシーンが差しはさまれて、とりあえず1巻は終わり。ちなみに松本さんと主人公の関係は決定的にこじれて修復されない。

漫画「愛と呪い」感想

愛と呪い

こういうのが刺さる人にはたまらない感じで刺さるのだろうなというのがよく分かる漫画である。

ところで愛と呪いというタイトルだが、タイトルの意味がもうちょっと具体的に浮き上がってくるのは2巻に入ってからなのだが、個人的には「愛アンド呪い」というよりは「愛イズ呪い」という感じだなーというのが作品から受ける印象である。


愛と呪い

愛と呪い

原作・著者ふみふみこ
価格638円(税込)

物心ついた頃には始まっていた父親からの性的虐待、宗教にのめり込む家族たち。愛子は自分も、自分が生きるこの世界も、誰かに殺して欲しかった。阪神淡路大震災、オウム真理教、酒鬼薔薇事件……時代は終末の予感に満ちてもいた。「ここではないどこか」を想像できず、暴力的な生きにくさと一人で向き合うしかなかった地方の町で、少女はどう生き延びたのか。『ぼくらのへんたい』の著者が綴る、半自伝的90年代クロニクル。

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