伊豆漫玉エレジー【ネタバレ】知っている人は知っている桜玉吉のショートエッセイ集!

伊豆漫玉エレジー

えーっと……桜玉吉って漫画家、知ってますか?
知っているとして(特にアラフォー以上の人)、今どこでどうして何を描いているかも知ってます?

知っている、という人には、正直これ以上この作品を紹介する必要はないと思う。だって、多分そんな人はもう買っているだろうから。でも、知らない人の方がよっぽど多いと思うので、紹介します。『伊豆漫玉エレジー』。

伊豆漫玉エレジー【あらすじ】

伊豆漫玉エレジー

本作品は、客観的な観点から記すのならば「ショートエッセイ集」である。数ページずつのショートエッセイと、合間合間を埋める何本かずつの四コマ漫画から構成されている。それ自体はいい。そんな漫画本はたくさんあるだろう。

問題は、この桜玉吉とは何者か、ということであるが。それも並列して語ろう。いちおう、各エッセイにタイトルがあるので、それを紹介していく。全部ではなく抜き書きであるが。

伊豆漫玉エレジー【ネタバレ】

伊豆漫玉エレジー

水芸

桜玉吉という人物は、伊豆山中(かなり山深く)に山荘を構えて、ほとんど世捨て人同然の暮らしを送る漫画家である。伊豆は温泉地なので、最近はしょっちゅう共同浴場に通っているらしいが、そんなある日。シャワーホースを水圧で動かして遊んでいたら知らない子供が真似をした。調子に乗ってもっとやっていたら、子供の父親に怒られた。58歳(※執筆当時。現在は還暦を回っている)にもなって怒られるのは久しぶりだった。という、それだけの内容。

同期の桜

桜玉吉というペンネームはその昔(この人、キャリアは非常に長いのである)、桜上水のあたりに住んでいた頃にそれにちなんでつけた名前で、別に桜が好きなわけではない。ある日、舞い落ちる桜があんまりうっとおしいので庭の桜の枝を落としたのだが、翌年もっと激しく花が落ちるようになった。という、それだけの話。

グーグルのコレ

伊豆に「はりつけの松」と呼ばれるスポットがある。玉吉氏がコンビニで買った蕎麦を食べるのによく使う防波堤の近くになにげなく存在するただの松の木なのだが、なんか歴史的由来があるらしい。それを知ったら驚いた。という、それだけの話。

伊豆漫玉エレジー【感想】

伊豆漫玉エレジー

三本書いたところで、あまりの起伏のなさに作品の内容そのものを紹介する気力が尽きたので、だから桜玉吉その人それ自体について語ろうかと思う。

1980年代ごろ、『ファミコン通信』(のちファミ通に改称)という雑誌があり(いや、今でもあるらしいけど)、その雑誌の人気連載として『しあわせのかたち』という作品があった。それの作者が、この桜玉吉。

しあわせのかたち自体、全5巻のうしろ半分くらいはエッセイ漫画なんだけれども、それから三十余年、桜玉吉という人は世間の流行とかとは無関係に、延々エッセイ的な漫画ばっかり描いている。

「好きな漫画家」という意味では筆者にとって人生で三指に入る漫画家なのだが、面白い漫画を描く漫画家なのか、と言われるとちょっと困る。いや面白くないわけじゃないけど、そういう文脈でいえば他に紹介する漫画家はいくらもいる。

じゃあ、何が楽しくてこの作家を追い続けているのか(デビュー作のしあわせのかたちから三十余年、多分全作品チェック済み)。

多分、同じ時代をずっと生きているこのくたびれた老人の、これまでの人生のすべて、これからの人生のすべて、それをずっと見ていたい。そういう気持ちが、正直ストーリー性も何もない、似たり寄ったりのエッセイばかり描いているこの世捨て人の漫画を読みたいと思わせる原動力なのではないかと思う。

正直なところ、桜玉吉をまったく知らない方がこれをいきなり読んでどういう感想を持つのかは筆者には想像もつかない。が、エッセイ漫画としては一つの枯淡の境地に達しているのもまた事実なので、よろしかったらどうぞ。


伊豆漫玉エレジー

伊豆漫玉エレジー

原作・著者桜玉吉
価格968円(税込)

年々こたえる夏の日差し、冬山の底冷え、そして忍び寄る新型ウイルスの脅威。それなのに、嗚呼、今月も〆切がやってきた!!伊豆山中で自粛生活を送りながらも常に緊急事態宣言出っぱなし!!ギャグ漫画家・桜玉吉による魂の哀歌!!

今すぐ試し読みする


※移動先の電子書籍ストアの「検索窓」に「漫画タイトル」を入力する事で作品を素早く絞り込んで表示させる事ができます。

記事は参考になりましたか?
はいいいえ