はじめアルゴリズム、完結巻となる第10巻である。
はじめアルゴリズム【10巻あらすじ】
物語はこの巻で終わるわけであるが、やはりここまでの展開同様、大きなストーリー的な盛り上がりなどがあるわけではない。割とふわっとした感じでエピローグに着地する。
とりあえずざっくりと書くと、ハジメはまたスランプにぶち当たって家出を敢行する。そのへんから説明していこう。
はじめアルゴリズム【10巻ネタバレ】
とりあえず9巻でくっついたハジメとその彼女、デートに行く約束をしたりなんだり……というところでテジマが出てくる。お邪魔虫である。それはいいんだが、テジマは「ここを出て、アメリカに行く」と言い出す。それもいいんだが、さらにテジマは、ハジメの数学が「もともと持っていた持ち味を失っている」というようなことを言い出す。
もともとハジメはすごい天才肌で、才能だけで数学をやっていたところがあるわけだが、ここへ来るまで延々9巻かけて、何をやっていたかって普通の数学の基礎を詰め込まれていたわけである。
本人もそれで納得していたのではあるが、テジマは言う。「お前は本来、面白いから数学をやっていたんだろう。今、お前は数学をやっていて面白いか?」というようなことを。その場は取っ組み合いの喧嘩にまでなるのだが、それで解決するという問題ではない。結局、悩んだ末にハジメは例の施設から飛び出してしまうのである。
もっとも、中学生にもなったことだし、あまりそんな無鉄砲はしない。友人知人の家など(過去に出てきた人たちがいろいろ登場)をとりあえず渡り歩きながら、悩み続けるハジメ。
刑務所らしき場所にいるウチダ息子のところにも面会に行ったら、「そりゃ自分探しだな」と喝破される。要するに思春期だから、そのうちトンネルを抜けるときも来るだろう、と。
一方ウチダは何をしているかというと、数学者としての道を再び割と順調に歩み始めている。リーマン予想への挑戦以外にもいろいろやり始めていて、新しい薬の開発に協力したりしている(筆者にはどういう原理なのか理解できないので解説できないが、数学を応用してそういうことをする研究分野というのがあるのだそうだ)。
で、相変わらず自分探しを続けているハジメだが、何かピーンと来たものがあったらしく、いよいよ本格的に失踪してしまう。連絡先を絶ってしまうのである。
ウチダはハジメを探しに行く。探しに行くというか、居る場所がわかっているので、そこに向かっただけという感じ。ハジメがいた場所は、故郷の廃校、ウチダと初めて出会ったその場所であった。
で、よく分からないが、ハジメは「自分の数学が見えた」みたいなことを言い出す。
二人の心の絆みたいなものをまるまる二話かけて描いて、そして後日談的なものを描くラストエピソード。ウチダは売りに出していた自分の家(今更であるが結構な豪邸である)を取り戻した。
ハジメはまだ中学生だが、あっちこっち放浪するような暮らしをしているらしく、その中で時々、オリジナルの数学理論みたいなものを思いつく。それをウチダとテジマが「翻訳」して、普通の数学理論に置き換えていく。天才数学少年の辿り着いた場所はそういう境地だった、ということであるらしい。
ラストシーンは、そんな感じでまたハジメが何かを思いついたところで終わり。
はじめアルゴリズム【10巻の感想】
どういう経緯で完結という運びになったのかは分からないが、まあ美しい終わり方であった。
最終巻なので全体のまとめを書くが、現代の天才数学少年というものを扱うという制約を考えると、よく描かれた物語だったのではないかと思う。
はじめアルゴリズム
老数学者・内田豊は廃校で出会った、小5の少年・関口はじめと。はじめは、数学において天才的な才能があった。内田は彼の才能に惚れて、彼を導いていくことを勝手に決心したのだった・・・。足す足す引く引くワクワクドキドキ。ワンダーボーイ、数字と一緒に世界を大冒険。数字を見るのが少し楽しくなる成長物語。数学と天才が嫌いじゃなくなります。