図書館の大魔術師、第5巻である。
概略というか感想だが、差別であるとか封建社会の旧弊であるとか、エンターテイメントの枠に囚われないなんかすごいところに踏み込み始める巻となる。
図書館の大魔術師【5巻】あらすじ
4巻から引き続き、シオは大図書館の見習い(というか実態はほとんど生徒)をやっているわけだが、なにしろその期間は作中時間で一年あるわけで、とりあえず今巻はずっと見習いとしての修行が描かれる。あと何巻続くのかは分からないが。
図書館の大魔術師【5巻】ネタバレ
ここまでで紹介していなかったキャラクターで、この巻から注目があたるのはアヤ=グンジョーとシンシア=ロウ=テイの二人。
いずれもシオの同期の少女であり、シンシアは表紙のキャラであるがそれ以外のことは後述する。アヤは過去にも(名前は出していないが)本稿で言及したことがある。3巻に出てくる、試験の際にフクマ体のことを教えてくれたラコタ人である。
このアヤはこの期の受験生の中の首席合格者であった。極めて優秀で、体力だけの課題(体力づくりにマラソンまでやらされるのである)などを除けば何をやらせてもピカイチである。三人選ばれる「見習い期間トップ通過者」のうち、一人は彼女で確定だろうと誰もが噂している。
なのだが精神面では若干脆い所があると言うか、アヤは要するにすごい負けず嫌いである。
体力だけならシオにかなわない(シオは石工をやっていたのだから当然ではあるのだが)、という事実に歯ぎしりをしている。
ところが、そうとは知らないシオが「本が好きだから司書を目指したのではないのですか」などと無邪気で呑気なことを言ってくるので、キレた。本など好きではない、お前とは覚悟が違うのだ、という。
シオも別にそんなにメンタルが頑強なタイプではないので普通に落ち込む。で、アヤと親しい他の少女にアヤのことを教わることになる。
なんでも、アヤはもともと学者になりたかったのだが、女は学者になることができないと知って打ちのめされ(この世界はそういう世界なのである)、仕方ないから女でもなることができる司書を目指したのだという。この世界、女性のキャリアパスが司書のほかにはもう数えるほどしか残っていないのだそうで。
ところでアヤには体力のほかにももう一つ、弱点がある。実は方向音痴なのである。で、広大なる図書館の中である日迷子になった。
主席合格者の見栄とかがあるので、素直に弱みを見せることができないアヤを、最初に見つけたシオは「自分が迷子になった」と言って庇おうとした。結局アヤは自ら真相をみなに打ち明けるのだが、この一連のエピソードの結果として、シオはアヤにめちゃくちゃ懐かれるようになる。
さて、シンシアの話を出す前にもう1エピソード触れないといけない。1巻の紹介の最初の方で少しだけ言及したが、シオは差別されている血筋の出身である。で、同期生の一人が、面と向かってシオに向かい「汚らわしい混血が」みたいなことを言い放ったのである。
見習いたちは皆お利口な優等生であるので、その場にいた面々はみな(少なくとも口では)シオのフォローに回った。シオのためにはっきりと怒った者もいた。が、この世界には、確かに差別というものがある(そして、この漫画はそれを直球で描く)のである。
さて、時系列的にはその事件の直後なのだが、シオは空から少女が降ってくるのを目撃する。といっても外部の人間ではなく、実は同期生なのだが、シオの知らない顔であった。
あまりにも強大すぎるマナを持つために、他人の近くにいることができない(相手を殺してしまう)のだという。が、シオは平気。シオも実は超人なので。
二人が名乗り合い、シンシアが重要なキャラクターになるらしきことが地の文で明かされる。5巻はここまでである。
図書館の大魔術師【5巻】感想
いやー……重ねて言うがすごいところに踏み込んできたという感じがする。
いくら日本を代表する一大メディアであるとはいっても漫画というものは基本的にはエンターテイメントである。こんな重たいテーマを、主題でやるのならともかくファンタジー漫画に仕込んでくるとは予想外であった。
ちょっと心配な部分もあるが、やっぱりこの先が実に楽しみだ。というわけで、またいずれ次巻の御紹介で。
図書館の大魔術師
アムンという小さな村に暮らす耳長の少年は本が大好きであったが、耳長で貧乏だった為、村の図書館を使うことができなかった。そんな少年は差別が存在しない本の都・アフツァックに行くことを夢見る。ある日、少年は憧れのアフツァックの図書館で働く司書(カフナ)と出会う。この司書との出会いが、少年の運命を大きく変えることに──。孤独な少年が未来を切り拓く、異世界ビブリオファンタジー堂々開幕!!
※移動先の電子書籍ストア「BookLive」にて検索窓に「図書館の大魔術師」と入力して絞り込み検索をすれば素早く作品を表示してくれます。