とらドラ!(6)
著者 竹宮ゆゆこ / 絶叫 / ヤス
雑誌 電撃コミックス
出版社 KADOKAWA
ジャンル 青年漫画
6巻から、文化祭編が始まる。7巻まで続くので、前篇ということになる。
とらドラ!【第6巻】あらすじ
まず、クラスで出し物決めをする。なぜか「プロレスショー(ガチ)」という、あんまりボーイミーツガール青春ラブコメでそれはどうなのかな……というネタが(原作者により)チョイスされる。
ちなみに、本当にプロレスをやる。大河と亜美が。女子プロレスである。
あとミスコンをやる。ベタにミスコンをやる。もちろん、大河は出る。メインヒロインなのだから当然だ。ちなみに亜美ちゃんはなぜか司会。ボンテージに鞭、というファッションで。亜美様、開き直って女王様キャラを前面に押し出し始めています。
あらすじ的には、大河のアピールタイムの途中で、次巻へ続く、になる。
5巻はこちら
とらドラ!【第6巻】ネタバレ
「あらすじ」では文化祭の話しかしなかったが、この巻の真の主題はそこにはない。6巻の裏テーマは、「親と子の物語」だ。
大河の、父親が登場するのである。大河の屈折した性格がいかに育まれたのか、大河のでっかいマンションのひろーい一室に一人寂しく暮らしていた少女の孤独はいかに形成されていったのか。
そして、父無し子である竜児は、彼自身どのような孤独を抱えていたのか。それが複雑に絡み合い、もつれ合い、悲劇的なひとつの、小さな結末を招く。
ハッピーエンドはここにはない。
人生のすべての要素が、ハッピーエンドばかりで終わるわけではない。
これは、そういう物語だ。
さて、ネタバレのはずなのだが、まったくネタをバラしていなかった。
説明していこう。
大河と父親は険悪である。基本情報からいくと、まず、大河の両親は離婚している。親権は父親が取った。で、父親と暮らしていたのだが、それが再婚した。継母と大河は、折り合いが悪かった。ある日、「こんな家出ていきたい」と言ったら、父親は、大河に高級マンションの一室をぽんと貸し与え、要するに、本当に追い出した。
そこで暮らしている中で竜児に出会い、彼との関係に救いを見出していく—というのが大河というヒロインの物語の大筋であるわけだが、結局のところ、大河と父親の関係はどうなるのか?
これが、どうにもならないのである。大河の父は、どうしようもないクズ、性格破綻者としてのみ描かれる。シリーズの結末で、大河は実母との関係を再構築し、実母と継父の家庭に収まるという終幕に至るのだが、実の父親との関係は最後まで修復されない。
だが、この時点では、竜児はそんなことは知らない。大河は、もう薄々「この父親とはダメだ」と悟っているのだが。
この巻の途中で、竜児は大河の父親と対面する。そして、「娘と仲直りしたいんだけど」などというような話をされる。竜児は、大河の父親を信じてしまう。
竜児には父親がいない。ちなみにアニメ版では、竜児の父は竜児が生まれもしないうちに竜児の母を捨てた、という設定になっている。原作では、竜児の父親がどうしなったのかについては、とうとう最後まで明かされない。このコミカライズでは、どうなるのかは分からない。
だが、とにかく、竜児は父親が欲しいのである。それが、竜児の孤独だった。そして、それは己のエゴだということに気付かぬまま、大河とその父の関係を修復させようと、尽力を始める。
間は飛ばそう。大河は、竜児の孤独を知り、それが竜児の為の代理行為に過ぎないということを理解しつつも、父親が自分に差し出した手を取ってしまう。
そして、裏切られる。
文化祭に来てね、待ってるから、という娘の嘆願を、クズ親父は踏み躙る。
そして、大河の父は、それっきり物語の中に姿を見せることは、ついにないのである。
とらドラ!【第6巻】感想
この巻は、重い。
とにかく重い。
そして、エグく心の深いところに刺さってくる。エンターテイメントではない。だからあんまり何度も読み返したいというものではない。特に、大河とその父親にまつわるシーンは、何度読み返しても胸が痛い。とはいえ、原作にある話なのだからコミカイライズしないわけにもいかないのであり、原作で原作者が訴えたかった、これも重要なテーマの一つではあるのだ。
とらドラ!は、単なるありきたりな、「ライトな」娯楽作品ではない。人間ドラマなのである。それを象徴するのがこの巻だ。
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