とらドラ!(5)
著者 竹宮ゆゆこ / 絶叫 / ヤス
雑誌 電撃コミックス
出版社 KADOKAWA
ジャンル 青年漫画
夏だ!旅行だ!青春だ!
さて、コミカライズとらドラ!5巻である。
とらドラ!【第5巻】あらすじ
ざっくりあらすじを言うと、竜児・大河・櫛枝・亜美・北村の五人で、旅行に行く。みんなで青春を楽しむ。ちなみに行き先は川嶋家の「別荘」である。
この別荘、とらドラ!シリーズ全体の終盤で再びクローズアップされるのでそのための伏線でもあるのだが……その話はまあ置いておこう。
櫛枝みのりんが「私は怖いのが苦手です」と、まんじゅう怖い的なことを言っているから竜児と大河があえて怖がらせのもてなしをしようとしたところ、「実はみのりんは、自分を怖がらせようと仕込みをしてくる人間を、それ以上の仕込みで逆にビビらせるのが趣味」という割と困った人であることが判明したりするが、そんなことは「青春」の二文字の前ではささやかなことである。
みんなで花火をする。旅行終わり。帰る。
大雑把なストーリー自体は、このくらいだ。この巻は大筋よりもディティールに味がある。
4巻はこちら
とらドラ!【第5巻】ネタバレと感想
本巻は青春巻であり、それはどういうことかというと竜児がモテモテする巻だということである。北村の好きな相手はこの巻には登場しないため、女子三人に順繰りにスポットがあたり、彼女らと竜児の心の交流が描かれる。
まず大河。
大河と竜児は、恋愛について語り合う。大河は、分かったことがある、と語り出す。恋をするのは大変だ。恋する相手と一緒にいるというのも、死ぬほど大変だ。好きな相手と結婚なんかしたら、それはすごく大変なんじゃないだろうか?でも……
「あんたとだったら 全然平気でいられるのに」
……甘い。ああああああ甘い。
だが大河本人には、甘い台詞を吐いているという自覚すらない。そこがまた甘い。竜児と大河が、友達も恋人もすっ飛ばして最初から家族になってしまっている、というのは、つまりこういうことを言っているのである。
次に亜美ちゃん。
旅行にくっついてきている(というか主役)あたりからも分かるが、このあたりまで来ると、大河と亜美はすっかり友達同士である。呼び方も「ばかちー」(大河→亜美)、「クソチビ」(亜美→大河)である。くったくがない。登場当初とはエラい違いだ。
では、櫛枝と亜美の関係はどうなのか?
実はここは、あまり触れられない。この巻では、まだ。のちほど重要になってくるのだが……これもまた、先の巻でのお楽しみ、となる。
そして竜児と亜美の関係である。亜美は、この頃からもう既に、竜児の最大の理解者となっている。何を理解しているかって、「櫛枝を好きであるということ」そして「にも関わらず、大河と家族同然の関係を築いていること」、そしてその決して相容れるはずのない二つの事実が、既に大きな軋みを立て始めていることを、である。
亜美様はお美しいだけではなく、賢く、そして人間関係の機微に通じているのだ。
そして真打ち、みのりん。
この巻は三人にそれぞれスポットが当たる巻であると書いたが、まあ、あえていえば一番大きなスポットがあたっている。この巻の主役はみのりんである。
竜児と、夜のベランダと語らうシーンがある。竜児は「彼氏いるの?」とか不器用極まりない直球を投げてしまったりする。竜児は大河相手には常にイケメンなのだが、みのりんの前では、はなはだ情けない。まあ、それもまた恋と青春というものではあるのだが。
この場面で、みのりんと竜児は重要な伏線となる会話を交わす。
「幽霊って、見える?」というものだ。
みのりんは、自分の恋愛観を、幽霊にたとえて語る。恋愛というのは、自分にとって、幽霊のように遠く、見ることのできないものだ、と。
それに対して竜児は言う。
「お前にもいつかそれが見えたらいいと思う お前に見て欲しがってる幽霊も、この世にはいるから」
……そのまま告白しちゃえよ!というくらい二人の距離が「近い」、というかシリーズ中最も狭まったシーンなのだが、竜児はヘタレであるので、この会話は「伏線」となって物語の中に埋没していく。
まあ、そんなこんなで、この巻まではなんか天然ちゃんとしてのみ描かれてきたみのりんが、実は難攻不落のヒロインであることが分かる巻なのだ。というか、作中で結局、この子に彼氏ができることはないのだが、実際、三人の中で一番付き合うの難しいの、この子じゃないかな?と筆者などは思う。
大河も難しいが、竜児とだけは「破れ鍋に綴じ蓋」の関係がある。しかし、みのりんは……一見屈託がないように見えて、実はものすごく複雑な内面を持ち、心を開かせるのがとても難しい相手なのである。
そして、6巻へと続く。
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