天国大魔境、いろいろと動きのある第6巻である。
天国大魔境【6巻】あらすじ
6巻はわりとくっきり前後二つに分かれ、前半は「旅する二人」編、後半は「施設」編となっている。
天国大魔境【6巻】ネタバレ
巻中とは前後するが、あえて施設編の方からいこう。施設こと「高原学園」、ここの子供たちは「ヒルコ」なのだそうだ。
「旅する二人編」に出てくるヒルコとは違って人間の姿……のように一見見えるのだが、施設にいる子供の一人に「幻覚を見せる能力」とされるものを持っているのがいて、その能力を経由して視た彼らの姿は、怪物としてのヒルコそのものである。
といっても、ヒルコというのがそもそも何なのか、ということは旅する二人編のほうでもたいしてよく分かってはいないので、やっぱり謎だらけなのだが……。
もう一つ。施設の「外側」がついに描かれる。
何者の仕業か分からないが壁が爆破され、子供たちのうち数人が外に出たのである。外は密林であり、空がちゃんとあった。つまり施設と称されるものが実は異次元空間にあるとか、そういう可能性は排除されたと思われる。もっとも、旅「旅する二人」編から見て過去なのか未来なのか同時間軸なのか、というあたりはやっぱりまだ分からないが。
さて、「旅する二人」編の方だが、キルコが探し人に再会したまでが前巻。相手はロビンという男(正確には稲崎露敏と書き、たぶん日本人)である。会いに行くときマルは別行動だったのだが、相手が昔馴染みだということでキルコは完全に油断していて、実はこのロビンというやつが割と悪党なのだが、ともあれ最初は昔話に花を咲かせることになる。
で、風呂を勧められ、何も疑わずに風呂に入って出てきたら服を盗まれていた。そして襲われて手錠をかけられてベッドに繋がれてしまう。マルが助けに来たりもしない。現実は非常である。南無南無。
二晩ののち、いくらなんでも連絡が遅すぎるのを不審に思ったマルが(居場所は分かっているわけなので)キルコを探しに行き、事の次第を知ってしまう。
マルはロビンを殺そうとするのだが、とどめが刺さる前にキルコが止めた。二人は街を出る。
理由は不明だがロビンも姿を消し、キルコの一件以外にもなんかいろいろ悪いことをしていたのが他の街の幹部にバレて、指名手配されることになる。キルコとマルにも追手がかかった。賞金稼ぎみたいな雰囲気のやつが追っかけてくるらしい。というあたりで6巻はおしまい。
天国大魔境【6巻】感想
ぶっちゃけポストアポカリプスものというのは別にそんなに珍しいものではないわけであるが、この作品で荒廃した世界の非情さみたいなものをきっちり叩きつけてきたのには驚いた。
キルコも他の相手だったらああまで油断しなかったろうと思うのだが、人間誰しも心の中に弱点とか隙というものがあるわけですからね……。
さて、もう数巻に渡って「訳が分からない」という以外の解説をほとんどしてこなかった施設編の方であるが、今巻は語るべきことがいろいろとあった。
推測を交えて語るが、ここは多分、ヒルコを育てている研究機関であるらしい。「旅する二人編」の方と設定などがまったくリンクしない方がおかしい(そんな作劇の仕方はふつうしない)わけで、まあ言ってしまえばそんなに驚くような話ではないけれども、一番肝心な「二人が探している天国とやらはこの施設のことではないのか」という問題には答えが示されないままである。どうなんでしょうね。
巻末の次巻予告によれば、次の巻ではキルコとマルは追跡者たちに追っかけ回される羽目になるらしい。追跡者というかその「用心棒」(と街の幹部からは呼ばれている)、名前は竹塚。顔は若い。今巻では三コマくらいしか出てこないので性別は確言できない。まあ、7巻を読めば分かるだろう。では、またそのときまで。
天国大魔境
美しい壁に囲まれた世界で暮らす子供たち。少年・トキオはある日、「外の外に行きたいですか?」というメッセージを受け取る。一方、外では、マルとおねえちゃんがサバイバル生活をしながら、天国を求めて、魔境となった世界を旅している。未来の日本を「あね散歩」。二つの世界を縦横無尽に行き来する、超才・石黒正数最新作、極大スケールでスタート!!
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