えー、今からご紹介するのは4巻であるが、本作品は5巻で打ち切り完結となった。それを踏まえてのご紹介となる。
KILLER APE【4巻あらすじ】
3巻紹介で書いた通り、4巻から一応、フォークランド紛争篇が始まる。
この紛争で哲平たちが参加するのはどういう作戦かというと、まず加わるのは英国軍の側。1982年4月30日、アルゼンチン軍に制圧されたフォークランド諸島を奪還するための英国の大作戦が始まりつつある中で、先鋒としてフォークランドに上陸、島にあるなんだか知らないが英国の秘密の研究施設なるものを破壊し、研究者たちを救出してこい、というのが一応の作戦である。
作戦名、オペレーション・ペンギン。
KILLER APE【4巻ネタバレ】
さて、この時点で何かちょっと話がおかしい、ということにお気づきであろうか。フォークランド紛争は史実であるが、こんな作戦が実在していたはずはない。だいたい、英国人が秘密の研究所を作るのはいいとして、なんでそれをフォークランド諸島などという超絶僻地(英国から見て)に作る必要があるというのか。
ここにはからくりがある。あるのだが、先に別のことから説明していこう。
哲平たちはそもそも大手の民間軍事会社WSECに雇われた実験参加者である。だが、彼らの中にスパイが混じっているので、それを暴き出すためのWSECの関係者がフォークランド紛争の仮想現実の中に参加している。
なぜ現実世界でスパイ狩りをせずこんなまわりくどい真似をするかというと、「現実世界では人権問題とかコンプライアンスがあるのでスパイを見つけても無茶はできないが、仮想現実の中なら拷問でもなんでもやり放題だから」だそうだ。なかなか素敵に無茶な発想である。人としてダメだろ。
当然ながら哲平たちはアルゼンチン軍と戦闘に突入するのだが、アルゼンチン側の指導者はアルフレド・アスティス。もちろん実在の人物であり、ちなみに、なにしろフォークランド紛争が最近(つーても38年前ですが)のことなので、まだ存命だ。
日本語Wikipediaが立項されていないくらいマイナーな人物なので(英語ならありますが)、筆者もよく知らんのだが、死の天使、金髪の天使などの異名で知られる危険人物であり、作中では「国土の守護者(キャプテンアルゼンチン)」と呼ばれている。
哲平の仲間が二人ほど、スパイ狩りの連中に拉致されてしまうのだが、哲平はこのキャプテンアルゼンチンを説得して仲間にし、スパイ狩りの連中を攻撃し始める。
スパイ狩りのリーダーはハウザーという、WSECの幹部である。こいつが、WSECの本当の目的を話し始める。その名も「アテネの学堂計画」。ペンギン作戦の目的であった「秘密の研究所」というのは何かといえば、その正体は英国の研究所などではなくWSECの研究データベース、前に出てきたナポレオンだのハロルド王やらといった「歴史上の英雄」たちの心を再現し、そして「ロボットのボディにそれを載せて」現実の世界で戦争をさせる、という計画のための中枢だったのだという。
そしてハウザーは哲平の才能を見込み、一つのことを持ち掛ける。自分の部下となり、彼ら歴史上の英雄たちを率いる英雄にならないか、というのである。4巻はここまで。
KILLER APE【4巻の感想】
急ピッチで話は進むが、4巻の内容に絞って話をすれば、面白いことは面白い。
ただ、推測ではあるがおそらくもう既に「打ち切りのための巻き」に入っているのではないかと思われる。それを踏まれるとどうにも、残念だという思いが断ち切れない。まあ何であれ、次がいちおうの最後となるので、5巻の紹介をお待ちいただきたい。
KILLER APE
人工知能が極度に発達した22世紀末。突如、謎の飛行体「GAYLA(ゲイラ)」によってすべてのAIが停止した。人間の兵士すら一人もいない世界で、戦争勃発の危機を予知した大企業は、兵士の養成を決意。主人公・坂本哲平は「人が人を殺す」技術を学ぶために、歴史の中の戦場に飛ばされる。ミッションは「ナポレオンとの決戦」!? 『バンデット』の河部真道が放つ、驚天動地のSFバトルアクション開幕!!