『女の園の星』の作者の、しかしあれとは繋がりのない別作品である。単巻完結。
カラオケ行こ!【あらすじ】
主人公は聡美(さとみ)という中学生の少年。
もう一人の重要人物(ある意味ではもうひとりの主人公)は、狂児という名の(ちなみに本名)ヤクザ。
聡美は合唱部の部長なのだが、あるコンクールの日、客席から発表を聴いていた狂児(初対面)に、突然声をかけられてこう言われる。
「カラオケ行こ」
カラオケ行こ!【ネタバレ】
面食らう聡美に、狂児は説明する。実は自分の組の組長がカラオケ大好き人間で、組で定期的にカラオケ大会をやるのだが、それに負けると厄介な罰ゲームを受けなければならないので、歌がうまくなりたい。ついては、合唱部の部長である君(初対面)を見込んで、歌の指導をしてほしい、と。
ちなみにこの罰ゲームというのが問題なのだが、墨を彫られるのだという。「ヤクザなんだから墨くらい彫られたっていいんじゃ?」といぶかる聡美に、狂児の説明はさらに続く。
もちろんプロが彫るちゃんとした刺青なら別に構わないのだが、最近刺青を自分で彫るという趣味を始めた組長が、自分の手で、下手糞な刺青を彫るので困るのだという。
要求の内容自体はそんなに難しいものではないわけで、聡美は「とりあえず一曲歌ってみてください」という。狂児の選曲は「紅」(X JAPAN)であった。
歌がどうなのか、漫画だから見ただけでは分からないが、聡美によると、「裏声に無理があるので、聴いていて苦痛なレベルで下手」とのことである。
そもそも「紅」という曲は(というかX JAPANの曲は全体的にそうなんだけど)非常にキーが高く、素人が簡単に上手に歌えるようなものではない。もっと自分に合った曲を選ぶことから始めるべきである、云々。
で、その後、聡美と狂児の交流は続いていく。他のヤクザたちの姿も見える。他のヤクザたちも同じ立場なので(同じ組ですからね)、他のヤクザたちに歌の指導をする場面もある。
といっても立派にみんなヤクザなので、組を追い出されて麻薬に溺れているような困ったチンピラの知り合いもいる。偶然、聡美はそいつに絡まれ、窮地に陥る。そしたら狂児に助けられた。聡美は狂児に、たまたま持っていたお守りを押し付けてその場は別れた。
そしてカラオケ大会当日。
狂児は交通事故に巻き込まれた。車は知ってる車なわけで、聡美は見ればそれだと分かる。警察官の話によると、即死だったという。聡美はカラオケ大会の現場に走っていって、狂児の姿がないのを確かめ、激昂する。
そしたら組長に言われた。「狂児のために鎮魂歌を歌っていってやってくれ」
で、聡美は紅を熱唱する。歌い終えたら、隠れていた狂児が出てきた。死んだのは例のチンピラであったらしい。
それから、聡美と狂児の交流はいったん途絶えるのだが、数年後に再会し、狂児は言う。
「カラオケ行こ」
カラオケ行こ!【感想】
絵柄が『女の園の星』より古いなと思ったら、奥付に書いてあったけど2019年にコミティア(知らない人のために説明すると、二次創作じゃない同人を発表するためのイベント)で頒布された作品を商業単行本化したものなのだそうだ。
で、感想だが、実に面白かった。ひねりのないコメントで申し訳ないが本当に面白いときというのは他に言うことがなくなるのである。
まず思ったのは、導入が非常にうまい。「合唱コンクール」という日常から、突然ヤクザが出てきて、なんだこれはと思わせたところで、すんなりと作品の構造の説明に入っていく流れ。確かな力量のある作者なのだと感心することしきりである。
カラオケ行こ!
合唱部部長の聡実はヤクザの狂児にからまれて歌のレッスンを頼まれる。彼は、絶対に歌がうまくなりたい狂児に毎週拉致されて嫌々ながら歌唱指導を行うが、やがてふたりの間には奇妙な友情が芽生えてきて……?話題の作品が描き下ろしを加えて待望のコミックス化!!
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