平和の国の島崎へ(3)
著者 瀬下猛 / 濱田轟天
雑誌 モーニング
出版社 講談社
ジャンル 青年漫画
島崎が撃たれたところから続くからハードな展開になるのかと思ったが全然そんなことはなかった『平和の国の島崎へ』第三巻である。
平和の国の島崎へ(3巻)あらすじ
前にも述べた通り、島崎には仲間がいる。LELから足抜けした者のコミュニティ、であるらしき人々。その人たちが撃たれて重傷を負っていた島崎をすぐ確保し、治療を施し、その上新しいアジトまで用意してくれたので、追手はとりあえずまくことができた。めちゃくちゃ急展開であるが、そうなのだから仕方がない。
そのあとの話の展開としては、大きく二つ。島崎が頼まれてスーツアクターの仕事をする話と、またまた殺し屋(しかも同じ人)が差し向けられてくる話である。
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平和の国の島崎へ(3巻)ネタバレ
スーツアクターといっても別に本格的に俳優を始めるわけではない。商店街のマスコット(例の喫茶店は商店街の中にあるのだ)の扮装をして、風船を配ったりとかしていただけだったのだが、たまたま商店街に同じタイミングでヒーローショーの一座がやってきて、島崎の動きの良さに目をつける。
「いい動きだ。どこの一座のやつだ?」
というのだが、島崎は別にスーツアクターではない。その点に絞っていえば(身体能力が並外れて高いだけの)素人である。
島崎は一座のリーダーのおっさんに芸を仕込まれる。「そんな殺気に満ちたパンチはだめだ。それは人を壊すための拳だ。もっと人を魅せるための拳を使うんだ」とかなんとか。
で、ヒーローショーの主役の人が舞台でけがをしてしまい、島崎は代役でショーに出ることになる。演技力はともかく運動神経はずば抜けているし、リアクションの決め方とかはしっかり教えられたので、大成功。大うけであった。
もう一つの話では、LELの幹部らしき人が出てきて、長々と彼らの思想について演説をしたりするのだが割愛する。彼らの動きとしては、島崎の属している一味がアジトを変えたばっかりなのでそれを突き止めるところから、というわけだが、1巻2巻で返り討ちにされた殺し屋氏が名乗りを上げてまた出てくる。責任を取って死刑、とかいう方針の組織ではないらしい。経験者は重用される。結構なことである。
さて、そんなこんなで島崎はまた襲撃を受ける。「今度は早かったなあ」とか思っている。返り討ちにするべきか否か、といったような状況のところで次巻へ続く、となる。
平和の国の島崎へ(3巻)感想
あんまりこの紹介の中で語ってきてはいないのだが、喫茶店のマスターのおっさんもいいキャラをしている。島崎がただものではない、尋常でない過去を背負っている人間であるらしいことにはうすうす気づいているようなのだが、深入りはしてこない。深入りしないまま、今の「平和を希求している島崎」を、「平和な日本で暮らす平和な日本人」の立場から、なんとかしてやりたいと願っている。なんかそんな感じである。ちなみに人質から解放された例のドラ息子はドラ息子のまま喫茶店で働いているようである。
この作品は、週刊少年ジャンプではなくモーニングで連載しているということも作用しているのだろうとは思うが、暴力を描写してはいるものの、おそらくは真の作品テーマを「テロリストの刺客を次々に撃退する、カッコいい元テロリストの主人公」に置いている作品では「ない」。島崎が平和を求める先で何が起きるのか、彼はこの先どうなっていくのか。その点が、この作品を見ていくうえでもっとも重要な点になっていくのではないかと思う。
ちなみに、島崎は「殺し屋」としての能力を駆使し、老齢のために家で倒れた老人を救出するなどのヒーロー的芸当を今巻で見せていて、「自分の能力は、殺し以外のことにも役立てられるのではないか」と本人としては思い始めているのだが……。なんか、危ういものを感じないでもないなあ。大丈夫かなあ。
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