漫画「アイリウム」あらすじ
アイリウムとは「記憶を飛ばす薬」である。一錠飲んだ場合、かっきり24時間後に24時間分の記憶が消える。2錠同時に飲めば日。3錠なら一週間。それ以上はかなり危険で、オーバードースを引き起こす。
ちなみに錠剤を割って飲むと記憶が飛ぶ時間は減り、4分の1錠なら2時間くらいになる。
この作品は、そのアイリウムという薬がもたらす様々な人間模様を、連作短編集のかたちで綴ったものである。
なお、作品によって微妙にアイリウムの社会的位置付けが異なっている(麻薬扱いされているかと思えば、そのへんで普通に売られている設定の話もあったりする)点から、全てが同じ世界の中の物語ではないのかもしれない。そのへんはよくわからない。
漫画「アイリウム」ネタバレ&感想
映画監督志望
とりあえずアイリウムとは何なのかの説明を兼ねた、ジャブの第一話……と思いきやこれがとんでもない。筆者的にはこの話が一番精神的にキツかった。
主人公はタイトル通り、映画監督志望のさえない青年。いい加減年齢的に限界で、目が出ないで腐っている。同窓会に参加するのが嫌で、一日分の記憶を消す。それだけならよかったが、それでアイリウムにはまってしまい、常習するようになってしまう。
どこかの時点でオーバードースをやらかしたらしく、ふと気が付いたら自分は中年男性になっていた。子供と、妻もいる。それなりにいい人生を送っていたらしいが、記憶は全部飛んでしまっている。というところで、一番初め、アイリウムを知り合いからもらった場面に帰り、主人公は言う。
「どっちが夢なんですか」
この作品だけはアイリウムが「記憶を飛ばす薬」ではないパラレルワールドなのだと解釈することもできなくはないが、おそらくはそうではないのだろう。自分の人生は自分のものなのだから大切にしよう、という重たい話である。
兵士
後の話で出てくる話なのだがアイリウムはもともと軍事用に開発されたらしい。兵士のPTSDの防止というやつだ。それで、どこかの戦場で兵士たちがアイリウムを常用しながら暴れている。この話はあまり教訓めいたところはなく、淡々と戦場の悲しさが描かれて終わる。
ママ友
4人組のママ友女友達グループ。うち一人が主人公。アイリウムを4つに割って飲んで、記憶が消える間に秘密の打ち明け話をしよう、と誰かが言い出す。しかしある日、主人公は打ち明け話の内容が知りたくなり、アイリウムに偽装した風邪薬を現場に持ち込んで……。女は怖い、という感じのエピソード。
ロックンローラー
50歳のロックンローラーに、娘がいた。妻とは別れている。妻と別れた理由を娘に話す。妻は、出会った時点でアイリウムのオーバードースをしていて、十数年分の記憶をいずれ失う事を分かった状態で暮らしていた。その記憶が消えたことをきっかけに、二人は別れることになる。
1話目同様、記憶を失うことの恐ろしさを描いた話という感じ。
ホスト
アイリウムが麻薬扱いされている感じの話。たちの悪いホストクラブのオーナーが、大量のアイリウムを使って、ホストたちを借金漬けにして支配していた。主人公はそこから抜け出すべく、オーナーにアイリウムを盛って奸計を巡らせるのだが……。ちょっと『カイジ』みたいな雰囲気の話である。
女医
この話ではアイリウムは合法。患者の死という大きなストレスから逃れるために、医者たちがアイリウムを常用している病院で、「患者の死と向き合うのが医者だ」というプライドのもとアイリウムを飲まずにいる女医の心の葛藤を描く。
研究者
アイリウムを開発した研究者らしき老人が出てくる、いかにもトリという感じの掌編。
アイリウム
1錠飲めば1日分の記憶を飛ばすことができる薬、アイリウム。薬が効きはじめると、他人から見れば意識もあり普段通りの生活をしているように見えて、その間の記憶がまったくなくなってしまう。つまり、嫌な思いをする出来事の前に飲んでおけば、その事を思い出すことなく日常生活が送れるのだ。記憶を薬でコントロールできるようになった時、その人の生はどんな彩りになるのか…。