- 作品名:ハチミツとクローバー(10)
- 作者・著者:羽海野チカ
- 出版社:白泉社
- ジャンル:少女マンガ
ハチミツとクローバー 第10巻のあらすじ
ハチミツとクローバー、最終巻である。
まず、9巻の終わりから10巻の終わりにかけてなのだが、森田が病院でリハビリ中のはぐをさらう。またこのパターンか、という感じだが、それもこれで最後だ。
で、いろいろあるんだが、最終的に、森田ははぐに振られる。
そしてはぐは、ほとんどの読者が予想だにしなかった道を選ぶ。
花本先生、修ちゃんこと、花本修治を、人生の伴侶に選ぶのである。
プロポーズの言葉は「修ちゃんの人生を わたしにください」
花本修治にとっては、それこそが自らの望む道であった。ずっと大人面して澄ましていたが、彼は内心では実ははぐを恋愛対象として考えていたのである。彼は教職を辞し、芸術家・花本はぐみのマネージメントに生涯を捧げる道を選ぶ。
森田はというと、ルーカス・デジタルアーツに就職する。結局、日本画科はろくに通いもしないままやめてしまったらしい。
主人公たる竹本は、いつぞやの自分探しの時に知り合った、宮大工の人々に誘われ、自身も宮大工となるべき道を選ぶ。大学は無事に卒業し、そして旅立ちの日。
はぐが見送りにやってきて、サンドイッチを手渡す。開いてみると、それは「ハチミツと四葉のクローバーのサンドイッチ」
竹本は涙を落としながら、こう思う。
「はぐちゃん 僕は 君を好きになってよかった」
こうして、物語は終わる。
ハチミツとクローバー 第10巻のネタバレ
前巻で復讐を達成した森田だが、苦悩している。彼にとって最大の悩みは、「自分は才能があるが、自分以外の他人には自分ほどの才能がない」ということだった。いや、赤の他人ならどうでもいいが、問題は、兄・カオルである。忍とカオルは兄弟だが、カオルは、自分と忍の才能の差について苦悩していたらしい。
芸術的才能によって初めて人生に価値が生まれる、という、はぐの思想は、森田にとっては苦悩そのものである。
なぜって、はぐは自分一人で完成した人間だから自分の中でだけ人生というものの意味を確立することができるが、森田は孤独な人間であり、そして孤独に耐えきれぬ人間であり、「自分の人生に意味があっても、自分の周囲の人間には生きる意味がないのでは自分も生きる意味がない」と考えてしまうような、優し過ぎる人間だからだ。
森田ははぐをかき抱いて言う。
「描かなきゃ生きる意味がないなんて言うな 俺は お前がいてくれれば いてくれさえすれば それでいい」
で、どきっぱりと拒絶される。
「あなたの言葉 本当に嬉しかった きっと一生 忘れない だけど」
「私の人生は描くことだけ 私の人生は描くことにしかないの 描きたいの 私の人生は 他にはないの」
「あなたのこと 忘れない ずっと 遠くで見てるね」
で、はぐは一人の独立した芸術家として生きていくために、「もっとも自分の支えとして役に立つ」花本修治を人生のパートナーと選ぶのである。
ちなみに森田は森田で、それなりに自力で立ち直るのだが、その過程で、竹本と殴り合いのケンカになるシーンがある。フラレ男二人の、本音をぶちまけあっての格闘。
森田は言う。
「お前なんか俺よりずっと先に振られてたくせにー!」
竹本の容赦のない返し。
「アンタにだけは!取られたくなかった!才能に負けるより、誠実さに負ける方が!よっぽど気が楽だ!」
ちなみに、これ、衆人環視の土手の真ん中でやっている。周囲の人々は、どう見ても青春真っ盛り以外の何物でもない二人を、とても生温かいまなざしで眺めている。ここも、作中屈指のギャグシーンの一つだ。
この後、森田は自力で苦悩を振り切り、ルーカス・デジタルアーツに入る決意をする。
「なんだかんだでさ 俺 あのおっさん(ルーカス監督の事)好きなんだわ オヤジ以外で あんなバカな大人は 初めて見たんだ」
ハチミツとクローバー 第10巻の感想
さて、シリーズ完結であるので、作品全体に対するまとめ&感想といこう。
ハチクロは青春漫画である。野宮や森田は実のところ青春って年齢ではないのだが、青春している。他の連中は言わずもがなだ。
筆者は今までこの本を何度も再読してきたし、これからも再読し続けるだろう。「青春」というものは、大人になってしまえば、二度と戻ることのできない幻想郷である。そこに戻る手段は、一つしかない。フィクションの世界だ。
青春を取り扱ったフィクションの、最高峰に位置付けられる作品。
それが、筆者にとっての、「ハチミツとクローバー」である。
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