中間管理録トネガワのスピンオフ漫画「1日外出録ハンチョウ」内容やネタバレ感想

1日外出録ハンチョウ

まず前提として。この作品は、福本伸行の代表作の一つである『カイジ』シリーズの、スピンオフである『中間管理録トネガワ』の、そのまたスピンオフである。トネガワの巻末おまけ漫画として描かれた「ハンチョウ」という短編が、好評を博したらしく、独立連載化されてこのたび刊行されたのだ。

1日外出録ハンチョウ
作品名:1日外出録ハンチョウ(1)
作者・著者:福本伸行/萩原天晴/上原求/新井和也
出版社:講談社
ジャンル:青年マンガ

漫画「1日外出録ハンチョウ」あらすじ

主人公・大槻は、通称「王国」という、地下労働施設で強制労働のようなことをさせられている債務者たちの中の顔役で、「班長」という地位にある男である(ちなみに班長は他にもいる)。

カイジに出てきたときは悪党だったのだが、この作品では、なんか意外と気さくな、色々あるけれどなんだかんだで人生楽しんでいるみたいな人物として描かれている。

「王国」には、「一日外出券」という制度がある。王国で流通している「ペリカ」という独自通貨を支払うことで(ちなみに非常に高額だが、大槻は王国内での賭場を仕切って荒稼ぎをしているので、ペリカを沢山持っている)、一日(一泊二日、丸24時間)、外に出て自由を満喫することを許されるのだ。

この漫画は、大槻がその一日外出券による自由を思うままに満喫しているさまを描いた作品である。前半では主に彼がグルメを堪能しているさまが描かれ、後半では主に、地下賭博の経営者としての苦労や活動などが描かれる。

漫画「1日外出録ハンチョウ」ネタバレ&感想

この作品はよく名作グルメ漫画孤独のグルメ』と比較されたり、もじって「班長のグルメ」などと呼ばれたりする。なぜか。それは、孤独のグルメと同様、大槻の美食道には、独特の哲学があるからだ。

第1話。一日外出券により解放された大槻は、まずスーツを用意して着る。それを見ている監視役(王国を運営している金貸し企業『帝愛』の黒服たち)が解説を始める。「なぜスーツを!?」「おそらく……“ドレスコード”のある店に行くつもりだ……奴は……!」と言った調子。

だが大槻はドレスコードのある店には行かない。なんと、なんということもない、サラリーマンでにぎわう昼間の安蕎麦屋に入る。

しかしそこで、あたふたと蕎麦をたぐるサラリーマンたちをしり目に、大槻は軽い料理と、そして「ビール」を注文する。

「そうか……!奴がスーツを着たのはまさにこの為……!もしも平服でこれをやれば、社会の落伍者だと思われるだけ……だが、スーツを着ることで奴の行為は一般の労働者の“羨望”の対象となる……!そう、まさにいま奴は蕎麦屋に“君臨”しているのだ……!」

なお、この謎のテンション高い解説は筆者が勝手にやっているのではなくおおむね作中の通りである。

また別の話では、大槻は25年前、まだ学生だった頃に行きつけだった中華料理屋に行く。好物だった「カニチャーハン」を注文するつもりだったのだが、「オムレツライス」という謎のメニューがあったので、好奇心に負けてこれを注文したところ、チャーシューと中華だしが使われた中華風オムレツがメインの定食であり、食べてみたらうまい。

そして、店主は、「ミニカニチャーハン」を持ってきて大槻のテーブルに置く。「頼んでないですよ?」と怪訝な顔をする大槻に店主は言う。「アンタ、これ好きだったからな。勘定はいらんよ」。

25年を経て、老いた店主は大槻のことをなお覚えていたのである。大槻は感動する。完全に人情もの漫画みたいなノリになっている。

ところで、前述の通り、1巻の後半あたりからグルメ漫画的な色彩は薄れ、大槻とは別の班長が地下で映画鑑賞会を始めて賭場の客が減ったのでそれに対する対抗策を考えなければならない、と言ったような話が描かれるようになっていく。

これについては、ちょっと寂しい。

そっちの話も面白いことは面白いのだが、やはりグルメ系の話の秀逸さには少しだけ及ばないからである。ネタが尽きたのか、編集方針が変わったのか、詳しいことは分からないが。

とはいえ、地下鑑賞会にどう対抗するかというと、次巻予告によれば、その主催者を「食の接待」で懐柔する話になるらしい。やっぱりグルメは主題から外れたわけではないのかもしれない。そう期待したい。


1日外出録ハンチョウ

1日外出録ハンチョウ

原作・著者福本伸行 / 萩原天晴 / 上原求 / 新井和也
価格660円(税込)

地の獄…! 底の底…! 帝愛地下労働施設…! 劣悪な環境である地下にいながら「1日外出券」を使い、地上で贅の限りを尽くす男がいた…! その名は大槻…! E班・班長にして、1日を楽しみ尽くす匠…! 飲んで食って大満喫…! のたり楽しむ大槻を描く、飯テロ・スピンオフ!

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