すごい勢いで走ってきたこの漫画であるが、4巻目にしてようやく安定軌道に乗ったような感がある。
漫画「はじめアルゴリズム」4巻あらすじ
冒頭、謎の怪人(と小学生に言われている人)が河川敷に出没する、というところから話が始まる。その怪人、大貫という青年である。内田翁のかつての弟子であり、挫折した数学者志望だ。紹介していなかったと思うが、読み返したら2巻に少しだけ登場していた。2巻で、河川敷にハジメが書いた数式を見て、その数式を書いた主をずっと探していたらしい。
なんやかんやで結局、大貫はまた内田のもとに通い始めるようになり、ハジメの兄弟子としていい刺激をお互いに与え合うような関係を構築する。
漫画「はじめアルゴリズム」4巻ネタバレ
ちなみに大貫は「素数」の研究者である。素数といえばアレである。フェルマーの最終定理と並んで数学にまったく明るくない(筆者のような)人間でも名前くらいは知っているアレ、リーマン予想である。前の巻でも何度か出てきているけど。
かいつまんで説明すると、リーマン予想というのは「素数に法則はあるか」という問題である。
素数は一見すると不規則に並んでいる。だが、素数でできたゼータ関数(はい、筆者はこのへんでもう自分が何を言っているのか既に分かっていません)の「ゼロ点」が、並べてみると一直線になる。
現状、知られている限りのすべての素数はこの一直線上に並べることができる。ならば、無限に存在する素数のすべてがやはりこの一直線上に並ぶのだろう。これがリーマン予想である。問題は、予想はできるが証明ができない、ということである。ちなみにこの証明ができたらいろいろすごいことになるらしいが、今のところ誰も証明できていない。というお話だ。
さて。その話自体はこの漫画の中で解決するような話ではないから置いておこう。
この4巻では、ハジメは大貫の存在もあってのびのびと数学をやっている。内田とどつきあったり、家出したり、スランプに陥ったりしていた頃が嘘のようだ。その代わり、スポットライトは周囲の人々に当たる。
個々に見ればたいした話ではない。アイドルをやっている幼馴染。恋をするクラスメイト。もしかしたら数学の道に再び活路を見い出すのかもしれない大貫青年。そして、内田の過去。
内田の過去は若干重い。テレビタレントとしての成功、結婚、子供ができる、交通事故、数学の世界での挫折。子供との対立と不和。
内田は相変わらず、ハジメを通してときどき遠くを見ているようなところがある。
今巻の最後は、3巻にも出てきた内田の息子がまた出てくる。何か悪だくみをしているような態度で、大貫に声をかける。4巻はそこまでである。
漫画「はじめアルゴリズム」4巻の感想
冒頭でも書いたがだいたい主な登場人物も出そろったような感じで安定してきたので、安心して読んでいける。内田の息子の存在は不穏ではあるが、この作品のテーマ的にはそんなに重いことやひどいことは起こらないんじゃないかな……どうかな。よく分からない。
今巻のハジメは本当に自由である。
アイドル少女のダンスを見て、黄金比に関する法則を見い出したり。ピアノを聴いていて音楽と数学の調和について考え始めたり。はたまた、天性の才覚だけで、独自にオイラーの多面体定理を再発見してのけたり(これがどれくらいすごいのか筆者にはちんぷんかんぷんだが、内田が凄いと言っているくらいだから凄いのであろう)。
前の巻では苦悩するハジメを内田が励ましたりしていたが、内田が今回は「この世界にもう新しい美しい定理など残っていないのかもしれない それでもお前は進めるか」などと言い出すのをハジメがキラキラした瞳で「進める」みたいなことを言ってみたり、そんな感じだ。
今後とも、続きを楽しみにしていきたいと思う。
はじめアルゴリズム
老数学者・内田豊は廃校で出会った、小5の少年・関口はじめと。はじめは、数学において天才的な才能があった。内田は彼の才能に惚れて、彼を導いていくことを勝手に決心したのだった・・・。足す足す引く引くワクワクドキドキ。ワンダーボーイ、数字と一緒に世界を大冒険。数字を見るのが少し楽しくなる成長物語。数学と天才が嫌いじゃなくなります。