作者について調べてみたが、詳しい情報は見つからない。既刊単行本はこの作品だけであるので、おそらくは若い新人作家かと思われるのだが。
漫画「はじめアルゴリズム」あらすじ
夢を諦めた老人が、天才少年に出会う話、である。何の夢で何の天才かといえば、数学、だ。
老人、内田豊は老いたる数学者。さしたる実績もなく、そして既に自分自身で新しい研究をするような能力はもう失って、自分の人生は何だったのかと悩んでいる。
内田はとある小さな島の出身である。里帰りをしていたときに、たまたま、天才的な数学の才能を持つ少年に出会った。
関口ハジメ。小学五年生。
誰も気付いていなかったが、彼は天才的な数学の素質を持った少年であった。
こちらもオススメ
漫画「はじめアルゴリズム」ネタバレ
そもそもなぜハジメが天才であることに内田が気付いたのかというと。もともと、内田がまだ若くこの島で暮らしていた頃、通っていた学校の壁(既に廃校となり、廃墟となっている)に、解きかけの数式を書き残していたのである。
その頃の彼にはその数式を書ききる能力はなかった。懐かしくそれを眺めていたら、しかし自分で書いた覚えのない「続き」が書かれ、そして数式が解かれていることを発見し、内田は愕然とする。これは、どこの何者のしわざだ。
犯人はすぐ近くにいた。小学生が地面に落書きをしているのだが、その内容がすべて、少年自身が創案した独自の記号による数式なのである。
系統的な教育を受けていない、しかし天才的な素質を持っている少年だ、ということを内田はすぐに理解する。
そして、ほんの少し身の上を聞いただけのハジメ少年が老人を警戒し、困惑している前で、稲妻に打たれたように天啓を得る。
「私の人生は この子を教え導くために存在したのだ」と。
ここから先、老人の行動にはまったく迷いがない。まず自宅を突き止める。狭い島のことだから、フルネームを押さえてあればどうでもなるのである。ちなみにハジメの両親も、家族も、別に学者一家とかではなくごく凡庸な家庭である。
そして内田は、困惑する家族の前で、宣言する。
「どうか 彼に数学を わたしなら 彼が必要とするものを与えることができる」
そしてトドメに土下座である。
ハジメはいろいろ逡巡(しゅんじゅん)しはするのだが、内田と少し言葉を交わすうちに、「自分がまったく知らなかった、数学という世界」が存在することに興味を抱くようになり、結局、内田について京都へと向かうことになる。
今巻で重要なのはあともう一つ。
ハジメのライバルになるのであろう少年、というのが出てくる。手嶋ナナオ。
日本を代表する、ハジメと違って既に系統的教育を受けている、もう一人の天才数学少年である。どうでもいいが左目に泣きボクロがあり、気の強そうな顔をしている。ついでに書くとハジメはいかにも天然って感じの顔である。
ハジメとナナオが邂逅するシーンまでを描いて、とりあえず一巻は終わり。
漫画「はじめアルゴリズム」感想
この物語が最終的にどこに着地するのか知らないが、全体的には「プロローグが描かれている」という感じが強い。たとえばモーツァルトの伝記で言うなら「5歳で作曲をした」という逸話だけで一巻になっている、みたいな感じである。
夢を諦めたロートルが天才と出会ってその導き手となる、という物語構造はそんなに珍しいものではない。スポーツものや音楽ものなどによくある構図だ。
しかしこの作品は何しろ数学がテーマである。作者は数学に堪能であるらしい。巻末あとがきで作中の数式について解説があるのだが数ページに渡って完全に筆者には解読不可能であった。
ともあれ。この作品は化けるかもしれない、という予感がある。先が楽しみである。
NEXT(次へ)
おすすめ新着記事