最初にちょっと書いておくと、この作品の原作者は萩原天晴。『中間管理録トネガワ』や『一日外出録ハンチョウ』で最近ブレイク中の注目作家だ。もっとも、デビュー作はこちらの方なのだが。
漫画「さぼリーマン 飴谷甘太朗」1巻のあらすじ
さぼリーマン飴谷甘太朗は都内の企業に勤める敏腕営業マンである。切れ長の瞳に鋭い眼光、シャープなマスクで、いかにも「デキる男」という感じだ。クールで、同僚との付き合いはあまりよくないが、そこがまたカッコいい、みたいなことを社内のOLたちには囁かれている。
だが彼には隠された秘密があった。飴谷甘太朗は……実は!大の甘党だったのだ!(どーん)
- 作品名:さぼリーマン 飴谷甘太朗(1)
- 作者・著者:萩原天晴 / アビディ井上
- 出版社:講談社
- ジャンル:青年マンガ
漫画「さぼリーマン 飴谷甘太朗」1巻のネタバレ&感想
実際、だから何なのかという話なわけであるのだが、本人が自分が大の甘党だということをひた隠しにしているのだから仕方がない。まあ、甘党というだけならよいが、問題は、甘太朗はできる男のふりをして仕事をサボって都内スイーツ名所めぐりをしている、という点である。
いや、仕事をせずに外回り中に遊んでいるわけではない。仕事はきっちり終わらせている。できるサラリーマンだというのは、フェイクではなく事実である。実際営業成績もいい。
だが、彼は営業マンとして評価されたくて敏腕な営業マンをやっているわけではない。そもそも彼が営業をやっている理由はたった一つ。外回りなら、仕事の合間などに甘味処巡りができるからである。
彼は、ちゃんとこなしてはいる仕事の合間に、その日によって「今日は90分の時間的余裕ができた」といったような具合にきっちり空きの時間を作って、その時間を、自身にとって至福の時間そのものである、スイーツ名所めぐりをしている。空きの時間を作る必要があるから敏腕をやっているのである。敏腕だから空きがあるわけではないのだ。
彼の人生において、甘味はすべてに優先されるのである。
ちなみに、出てくるお店は全部実在のお店で、電話番号とかも載せて紹介されている。
さて。それでどういう話なのか。
基本的にはこれはギャグ漫画である。
自分が甘党であるという事実を社内でひた隠しにしようとする男が、その事実を暴こうとする同僚のOL土橋さんからの追及をひたすらにかわしたり(ちなみに、甘太朗は自分が怒られたりするのではないかと思っているが、OLさんは自分も甘党なので同じ趣味の友達が欲しいだけである)、営業成績で追い抜いた真面目な営業の同僚に自分の趣味を暴かれたけどそいつは「こんな不真面目な営業マンに成績で抜かれるなんて」と悔しがるだけで別に社内で報告されたりはしなかったり、という平和な日々が描かれる。
もう一つ。グルメ漫画と一口にいってもいろいろな漫画があるわけだが、これは、食べる専(甘太朗は自分でお菓子を作ったりする様子はない)の話であり、また、リアクション芸が主となる作品である。
リアクション芸。グルメ漫画においては重要な要素だ。
マンガにせよアニメにせよ2次元媒体である。「味」そのものを示す手段はない。そのような制約の中で、「食べたものがおいしかった」ということを、いかに表現するか。長いグルメ漫画やアニメの歴史の中で、様々な方法論が試みられてきた。
ある漫画は、なんでもかんでも「うまいゾ!」で済ませる。(その芸風で何十年も連載を維持しているのだからあれはあれで成功しているのであろう)
ある漫画は、「シャッキリポンとヒラメが踊るわ!」みたいな珍妙な表現でネタになったりする。
この甘太朗の漫画はといえば、「シュール系」だ。過去に類似の作品がないわけではないが、そういう中で比較すれば、表現力は高い。
たとえば、いちごパフェの回における甘太朗の反応はこんな感じ。
- パフェが届く
- 「今日は私のあまおう記念日……!」とか言い出す
- 巨大ないちごが隕石となって地球に飛来してくるイメージ画
- 宇宙空間でいちご隕石を受け止めんとする甘太朗
- 地球に激突するいちご隕石
滅茶苦茶といえば滅茶苦茶なのだが、宇宙レベルでおいしかったのだろう、ということが分かることは分かる。ストーリーは一切無視して甘太朗のリアクション芸だけ読んで行ってもそれなりに面白い。良作である。
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