新九郎、奔る【3巻ネタバレ感想】新九郎の応仁の乱編クライマックス!?

新九郎、奔る!(3)

新九郎、奔る!3巻である。密度の濃い作品だから随分と読んできたような気がするが、まだ3巻なんだなあ。

新九郎、奔る【3巻あらすじ】

本巻の紹介などには「応仁の乱編クライマックス!」などとある。

てっきり応仁の乱の終結(西暦1478年)まで話が一気に進むのかと思ったら違った。応仁の乱に揺れる京での新九郎の動向が描かれるパートが終わり、新九郎が別の場所に移動する(荏原-えばら-という、伊勢氏の領地のあるところに行く)ということであって、乱そのものはそのまま続いていく。まあ一巻で10年近くも話が進んでは色々と大人の事情的にアレだし、当然か。

今巻の、応仁の乱はまあ基本的に史実ベースで進んでいくのだろうが新九郎視点からの一番大きな話の流れは、兄の死と伊勢氏嫡男の座に就くことである。

新九郎、奔る!(2巻)
新九郎、奔る!

新九郎、奔る【3巻ネタバレ】

新九郎、奔る!(3)

さて、前に紹介したかもしれないがいちおう説明しておこう。新九郎の兄、母親は違うのだがこれが八郎という。足利義視に仕えており、しばらく京都を離れていたのだが、戻ってきたところで落ち武者狩りにあって大怪我をした。そのとき義視も一緒であった。もともと義視のことをあまりよく思っていなかったはずなのだが、そういういきさつがあって義視に心酔するようになってしまった。

さて、権謀術数渦巻く京都の情勢下なので、誰が敵で誰が味方なのかも複雑怪奇に揺れ動く。義視はもともと乱の片一方の側の総大将であり、いちおう将軍継嗣の座にあるのだが、義政との仲はあまりうまくいっていない。というのは、義視はもと僧侶だったということもあって、こういう乱世を渡って歩くには清廉潔白すぎる気質の持ち主なのである。

と、言ったようなことをみんな言い、義視からは距離を置く者が多いのだが、八郎は聞かない。立派な将軍になれるはずだ、と言い張る。

しかし状況はどんどんきな臭さを増していく。最終的に、義視は義政を裏切って出奔し、もう片方の軍の総大将の座に収まってしまうのだが、その逃走劇に際して事件が起こる。八郎が、その逃走を助けるために義視に協力していたところ、新九郎が何とか説得してやめさせようとする中、伊勢氏の当主、新九郎の伯父に討ち取られてしまったのである。

これはだまし討ちとか暗殺とかではなく、八郎のやったことは謀反そのものなので、誅殺されて当然の流れではある。だが、「家の中から謀反人が出たので成敗しました」と公言するのは、まず謀反人を出したという時点で体裁が悪い。そこで八郎は、事実としては射殺されたのであるが、病死したということにされてしまった。

兄とはそれなりに仲の良かった新九郎は無念を噛み締める。兄の無念のためでもあり、自分の無念のためでもあった。

いちおうこれで、伊勢氏の当主の後継の座が自分に転がり込んできたということになるのだが、あまり喜んでいる風はない。まあ、そんなことを考えるような性格の主人公でもないのだが。

で、兄の死でその後も落ち込んでいる新九郎がグズグズしていると、家臣たちからハッパをかけられる。いつまでもめそめそしてないで、この家を引っ張っていく者としての自覚を持ってください、と。

で、巻末、16歳になった新九郎は前述の通り荏原へと送られ、その地の統治に当たることになる。次巻からは荏原編であるらしい。

新九郎、奔る【3巻の感想】

新九郎、奔る!(3)

年表が……巻末に年表が欲しいです……

応仁の乱に関する研究は近年急速に進んでいるようで、これでも随分かいつまんでいるのだろうと思うが、それでも本当に複雑怪奇でどうしようもない。登場人物の数も多い。まあ、歴史ものの宿命と言ってしまえばそれまでだが。


新九郎、奔る!

新九郎、奔る!

原作・著者ゆうきまさみ
価格660円(税込)

戦国大名の先駆け、伊勢新九郎の物語! 織田信長、豊臣秀吉、徳川家康…… かの有名な武将たちが活躍する時代の少し前、戦乱の世のはじまりを生き抜き、切り開いた男がいた――― その名を伊勢新九郎。彼はいかにして戦国大名となったのか。彼はそもそも何者だったのか。知られざる伊勢新九郎の生涯を、まったく新しい解釈で描く意欲作! 「戦国大名のはしり」とも言われる武将を描く、話題騒然の本格歴史コミック、待望の第1集!!!!!

今すぐ試し読みする


※移動先の電子書籍ストア「BookLive」にて検索窓に「新九郎、奔る」と入力して絞り込み検索をすれば素早く作品を表示してくれます。