最終巻となる3巻である。
1巻は主に変態性癖の漫画、2巻は主に青春の漫画であったわけだが、3巻は原点回帰と融和を兼ねて、変態性癖と青春の巻となっている。
漫画「R-中学生」3巻のあらすじ
最初は、椎名という不登校の少女の話から始まる。いつもの三人組が、不登校の椎名さんを登校させよう、とか無茶を言い出し、自宅を直撃し、そして軽く追い払われる。
そんなこんなをしている間に、大倉というクラスメイトの少年(けっこう美形)の性癖が「女装」であるということが判明する。本人は、性嗜好はヘテロ(つまり、女が好き)で、女装が好きなだけの、女装娘(ジョソコ)であると語っている。ちなみに、どうでもいいが、学術用語ではこういうのをトランス・ヴェスタイト(TV)、異性装者と呼ぶ。
趣味が発覚した大倉君、三人組がうっかり「可愛い」とか言っちゃったもんだからテンション超アゲアゲとなり、三人組を自宅に呼び出して一人でファッションショーを展開する。
ところで、大倉の女装名は大蔵麗華という。その名前で、通販で「α(アユム)」というブランドの女物の服を買っている。だから何だと思ったら、これが椎名さんの話に繋がってくるのである。
αというアパレルメーカー、住所を調べるとこれが近所で、なんと椎名さんの家と合致するのである。つまり、不登校の少女は、学校に通わずに服屋を営んでいたというわけだ。
ちなみに大倉君はその後、クラスメイトの前で大カミングアウトをかます。椎名さんは、大倉との出会いをきっかけに学校に来るようになる。
漫画「R-中学生」3巻のネタバレ
さて。ここまでは序章だ。本巻の本当に重要な部分はここからである。
細かいところは重要ではないので、ざっくり説明しよう。
汚物フェチ、伊地知君の性癖が、発覚する。発見したのは不良生徒だが、そこから教員たちに伝わり、親とかにも伝わる。最終的には友人たちにも伝わる。
クラスメイトの反応は様々である。親友2人と、もはや3人目の親友となっている伴君(例の野球少年)は、理解を示そうとする。だが伊地知自身が、その差し延べられた手をはねのける。
で、伊地知少年はいじめに遭う。具体的描写は控えるが、きっかけがきっかけだということもあり、かなりハードなやつだ。
しかし、伊地知の友人たちは、そのいじめに参加する連中と、そして伊地知に酷薄な態度を取る教員たち(と言っても、主犯格は一人)に対し、反旗を翻す。
最終的に、「本学を来年から共学にし、オナニーを校則を以て禁じる」とか、頭がおかしくなったのだとしか思えないことを全校集会で演説し始めた女教師の前で、生徒たちが「でも私オナニーします」「僕も」「私も」とか言い出し、最後はオナニーコール一色になって、女教師はその場から逃走し、伊地知は性癖そのものはともかく「女子トイレのゴミ箱を漁ったりしていた」という事実について全校生徒の前で謝罪、事件は一件落着となった。
漫画「R-中学生」3巻の感想
筆者が思うに、この巻の後半の物語は、1巻の短編「赫色少年(かくしょくしょうねん)の素晴らしき日々」、例の2009年第60回ちばてつや賞大賞受賞作に対する、アンサーとして自ら記したものなのではないかと思う。
「赫色少年の素晴らしき日々」は、ちばてつや賞の審査員の人々がどう思ったのかは知らないが、問題作と言うべき作品である。伊地知のやっていることは実際、軽犯罪に触れているわけだし、単に「青春のワンシーン」で切り取って済むような話ではないのだ。
だからこそ、この「R-中学生」というシリーズを終わらせるに当たって、この一連のエピソードは避けては通れなかったのだろうと思う。
もしこれを描かずに、2巻のノリで青春したまま終わらせてしまったら、読後感はもっと爽やかだったかもしれないが、しかし、残してはいけない別の種類の澱(おり)のようなものが、残ってしまったと思うのだ。
というわけで、「R-中学生」シリーズの紹介を終わる。良作であった。
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