- 作品名:恋愛ディストーション(5)
- 作者・著者:犬上すくね
- 出版社:小学館
- ジャンル:青年漫画
- 掲載誌:サンデーGX
恋愛ディストーション 第5巻のあらすじ
5巻目である。全8巻の折り返し。
そしてこの巻から、クライマックスに向けた伏線が敷かれ始める。
冒頭で突然、まほに聴覚障害を持つ双子の姉がおり、結婚している、ということが明かされる。大塚なほ、そしてその夫大塚政広(手話学校教師。そして婿養子)。ついでに言うと、なほは妊娠中である。
さらにもう一つ、重大な新展開がある。山野辺が、「妙な女」と出会う。里中秋子(しゅうこ)。すらりと背の高いさっぱりとした感じの美女だ。
この巻の主役は山野辺と秋子、そして大塚家のひとびとである。
恋愛ディストーション 第5巻のネタバレ
まず、さっくり身も蓋もないネタバレをすると、まほとなほ、そして政広は、三角関係にある。あった、と言うべきか。いや、政広が二股をかけていたという話ではない。彼は恐ろしく一途になほだけを愛している。
だが、まほもまた、政広を好いていたのである。昔。まほ先生の哀しい過去というわけだ。
5巻冒頭(33話、長い休日)で、まほは数年ぶり(なほが結婚して以来)の帰郷をする。そして、いきなりお見合いをさせられる。相手は悪い人ではないのだが、まあ当然断る。
そして、政広と久しぶりに会う。想い人と双子の姉が結婚して、しかもその相手が婿養子になって自分の実家にいるという事実が辛くて、実家に帰っていなかったまほである。しかし、「義兄」と「義妹」としての会話をそつなくこなし、「自分も大人になった」と一人
しかし、話は終わりではない。重大な問題が一つ残っている。まほは今恋人もいて、現在の暮らしに満足していて、それでいいかもしれないが、なほのことである。実の双子の妹が自分の夫に
まほは姉に自分の想いを打ち明けてはいない。だが、昔、溢れる恋心を抑えかね、政広に対する思いの丈を手紙に綴ったことがあった。
その手紙を、まほは出しはしなかった。しかし、日々持ち歩いている間に、紛失した。
ある偶然から、その手紙は、数年の時を経て、なほの手に渡ってしまう。それを知ったなほは、「知ってしまった」という事実を伏せて、まほに会いに来る。そこで、陽一と初めて対面し、まほに今は恋人がいる、ということを知る。だが、実はなほは体が弱いので、いろいろ無理な行動を取ったせいで流産しかかり、入院する。この巻ではここまでである。
次にこの巻のもう一つの主軸、山野辺の話に移ろう。
秋子は、同じ大学の学生である。ある日ある時、教室の中で山野辺が座って開講を待っていると、ほぼ初対面の秋子が、突然そのヒゲ(アゴヒゲ。ちょっとしか生えてはいない)を触り、微笑み、無言で去っていく。
不思議ちゃんである。山野辺は突然のことに心臓バックバクとなる。「なに?あの女、何なの!?」というか、この時点でもう恋に落ちている。世に「童貞を殺す××」という慣用表現があるが、童貞は割と色々なもので簡単に殺せる。まさに、童貞を殺す一撫で。山野辺は(ある意味)死んだ。
それをきっかけに、二人は急速に親しくなっていく。山野辺はヘタレ童貞なので、どんどん距離を詰めていくのは秋子の方である。そんなこんなであるとき、「あのとき、なんで俺のヒゲ触ったの?」と聞く。「……好きな人に似ていたから」。この巻での二人の進展はここまでである。
恋愛ディストーション 第5巻の感想
まほ先生、シリアスパート突入。いろんな伏線が張られている。そして山野辺、脱・童貞への第一歩を踏み出す。お赤飯の準備を始めないといけない感じの流れだ。
……と、いうところで、1巻の紹介のときに書いた通り、この物語は一度、打ち切られた。「ねえなほはどうなるの!?まほ先生と江戸川の今後は?それにどうでもいいけど山野辺は永遠に二次元の世界で童貞のままなの!?教えて少年画報社!」という感じでございました。当時は。
結局、少年画報社版のコミックスは、5巻で止まったままになった。
しかし、小学館が作者を救済し、リミックス単行本を1巻から再刊行し、この続きを描かせてくれたのである。ただし、実は一部の単行本描き下ろしなどが、画報社版のコミックスにしか掲載されていない状態のままだという事情はあるのだが。
では、「ここで終わりではない」という喜びをかみ締めつつ、5巻の紹介を終える。