キノの旅のいわゆる「郷版」、最終巻となる5巻である。
この説明も最後となるが、キノの旅のコミカライズはシノミヤイルカという漫画家によるものとこの郷によるものの二つが同時並行で連載されており、当サイトでもいちいち区別してきたのだが、それもこれで終わりというわけだ。
郷版「キノの旅」5巻あらすじ
キノは旅人である。エルメスというモトラド(オートバイの本シリーズにおける独自呼称。知能を持っており、喋る)に乗り、諸国を放浪する旅をしている。
キノ以外の準主役たちも何人かいる。それ以外については連作短編集形式であるので、個別に語っていくとしよう。
郷版「キノの旅」5巻ネタバレ&感想
たかられた話
キノが出てこない、シズ主役の話。「人のいい人たちの国」に辿り着いたシズは、その国の人々が山賊のような連中に物資をせびり取られていることを知る。シズは義侠心を発揮し、その山賊連中を退治することにする。いわゆるひとり「七人の侍」的なシチュエーションというわけだが、シズは(キノにだけは勝てないが)めっぽう強く、そしてこの山賊たちはたいしたことがない(実戦経験すらあんまりないらしい)ので、対決というより虐殺と言うべき展開となる。さて、山賊を皆殺しにしたシズ、国の人々に感謝されるかと思ったらそれどころか怒りと叱責をぶつけられる。やりすぎだ、残忍だ、というわけである(現場を見ていると確かにそれもそうかもなという気もするのだが)。で、シズは定住を諦め、国を去る。シズの連れの陸という喋る犬が最後にぽつりという。(国の人々に)たかられましたね、と。
議論の国
キノが旅をしていると、山火事を見かけた。自然火災だが、近くに国がある。その国に入国することになったキノ、その国は「なんでも民主的に議論をして決める国」であり、山火事を消すかどうかも議論をしてからでないと決められない、という話になっていることを知る。山火事というのはそう簡単に消せるものではないが、それはさておいて、山火事は自然の摂理だから消してはならないなどと主張する一団もいて、議論は紛糾、なかなかどうするか決まらない。そうこうしているうちに、延焼した火は国の一部をも焼いてしまった。キノは別にそれでどうするわけでもなく国を去るのだが、帰り際に建築資材などを商う商人の一団に出会う。聞くと、例の「自然の摂理だから」と主張して山火事を消すことに反対していた一団、建築資材を売る商人たちとグルだったのだという。なんとも皮肉で、また政治的な色彩の濃いおはなしであった。
神のいない国
キノはまたとある国に辿り着く。なんでも、宗教団体が大事にされている国、であるという。キノはそんなことどうでもいいのでエルメスの修理をしてくれる店を探すのが最優先だったのだが、その修理中に困ったことに巻き込まれた。怪しげな宗教団体の連中が、エルメスをかっぱらっていったのだという。この国にはそういう怪しい宗教みたいなものは昔はなかったのだが最近できて、国の人も困っている。それを聞き、キノはかなり困ったが、実力行使に出ることにする。つまり皆殺しである。ぶじ(教祖ひとりを除いて)教団のメンバーを皆殺しにしてエルメスを奪い返したキノであるが、教祖であるところの危険人物はあえてそのまま放置して国を去っていくのだった。こっちは宗教系の皮肉である。『キノの旅』らしいといえばらしい。
像のある国
この作品は原作のない、コミック書き下ろし作品であるらしい。といっても、長くはない。掌編というやつだ。国自体は何がどうというわけでもないが、かつて国を救ってくれた天使というのを像にして祀っている。ただそれだけの話である。というわけで、少し寂しいがこのシリーズともお別れだ。
キノの旅5 the Beautiful World
ある国に入国しキノは、エルメスのメンテナンスのため、性格には難はあるが腕は確かな整備士に預けた。ところが翌日、エルメスはその国の宗教団体にさらわれてしまう。キノは相棒を取り戻すために説得に向かうが、その手段とは……。「ひとつの国に滞在するのは3日間だけ」というルールで様々な国を訪れる人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅の物語、電撃コミック版最終巻。
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