最終巻である。全ての謎が明かされ、エンドマークが打たれる。
adabana~徒花~【下巻】あらすじ
もういっぺん藍川美月の視点から、しかし今度は警察とかにしている供述の内容ではなく彼女の本当の視座から見た「真相」が描かれる。時系列で言えば、真子が叔父を殺害した直後からである。
警察に出頭したりはしないと決意したふたりであるが、人ひとり消えたらそりゃあ誰かしら気付くやつは出る。これに関していえば、例のストーカー、暁が真っ先に気付いた。暁はラーメン屋(営業してないが)にやってきて、何かを探ろうとしている様子なのだが、美月はといえば物陰でスコップを構えて、殺すべきかどうか迷っている。
しかし、結論からいえばスコップで殴りかかったりはしなかった。良心が咎めたとかではなくて、殺す前に情報を引き出さなければならないと判断したからである。で、接触を図ることになる。
暁の方も、表の顔は女たらしであるので、割と簡単に釣られる。
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adabana~徒花~【下巻】ネタバレ
なんだかんだで、美月は真子の置かれていた状況の全容を知るに至る。撮影であるとか動画の販売であるとか、そういったことをである。
そうこうしているうちに真子が死ぬ。死の真相はといえば、自殺であった。暁のナイフで手首を切り、失血死したのである。美月が調べたところ、スマートフォンに暁からの脅迫だとか、そういったものがいろいろと残されていた。
ここで美月は決意をする。おおむねすべての元凶である暁を地獄に落とすことを、である。真相をすべて公開するよりもより打撃が深くなるようにという、その目的のために、真子はまず「自分が殺した」という状況を作り上げた。死体をめった刺しにした上に、持ってきたノコギリでバラバラにしたのである。
回想はここまでとなる。これが「事件の真相」というわけだ。ページ数的には下巻の半分くらいであり、こっからは「美月逮捕のその後」の話である。
ざっくり結果だけを書くと、美月の暁に対する復讐は成功する。法廷に証人として引っ張り出し、最終的には逮捕に追い込んだのである。もっとも罪状はストーカー規制法違反と、危険ドラッグ所持のみなのだが、美月は暁の日常を破壊したことで満足であるらしい。
一方の美月自身は、殺人・死体損壊・死体遺棄で、実刑を食らった。ちゃんと服役した。エピローグは、何年後か分からないが出所する場面が描かれる。これで終わりである。
adabana~徒花~【下巻】感想
前の感想で「この漫画に出てくる男はクズばっかりである」というようなことを書いたが、訂正する。モブレベルのキャラクターは除外するにしても、美月の弁護士(二人いるんだが、片方は男)は割とまともな人間であった。
逆に言うとまともなのはこの人だけで、美月の実の父親が実は叔父とグルで真子の写真や動画を売っていた真犯人であったとか、さらにどうしようもない話もあるのだが、話の本筋においてあまり重要ではないのでまあそれはよしとしよう。
最終的な感想だが、サスペンスとしてはまあよくできていると思う。美月は分類としては間違いなく悪人なのだが(実際にやった犯罪行為は死体損壊と遺棄くらいであるが、性根の問題として)、少なくとも情念はすごかった。復讐するは我にあり、みたいな。
作中で殺人を犯すのは美月だけなのだが、彼女は精神性でいえば作中善良な部類である(その行為が法的に見て正当防衛の条件を満たしているかどうかは別の問題として)。あとはゲスと外道と復讐鬼、そいつらによって構成される物語だ。爽快さとは無縁であるが、それでもこの作品はピカレスクロマン的な文脈から見るのがよいのだと思う。
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