【傑作アメコミ】ウォッチメンのあらすじ・ネタバレ・感想

ウォッチメン

ウォッチメンは洋書であり、電子版は英語で書かれた原書のみAmazon Kindleストアで取扱いがある。ただし、Amazonでは日本語訳版が単行本として存在。日本語で読みたい方は電子版はないが紙媒体ならウォッチメンを読むことが可能になっている。

ウォッチメンのあらすじ

ウォッチメン電子版

作品名:Watchmen: The Deluxe Edition
作者・著者:ALAN MOORE / DAVE GIBBONS
形式:Kindle版
ジャンル:アメリカンコミック

ウォッチメン

作品名:WATCHMEN ウォッチメン
作者・著者:アラン・ムーア / デイブ・ギボンズ
翻訳:石川 裕人 / 秋友 克也 / 沖 恭一郎 / 海法 紀光
形式:単行本
ジャンル:アメリカンコミック

これは、「ヒーローの禁じられた世界」の物語。

アメリカンコミックスというのは、ごく一部の例外を除いて、ヒーローと悪人の戦いを描いたものがほとんどだ。そして、出版社ごとに世界観は共有されている。つまり、「DC」社のヒーローであるスーパーマンとバットマンは、同じ世界で別々に活動している。(たまに一緒に活動したりもする)。これを総称して「DCユニバース」という。もう一つ、マーヴェル社の「マーヴェルユニバース」というのもある。

しかし、ウォッチメンは、DC社が出した作品ではあるが、DCユニバースとは別の、独自の世界を舞台にしている。この世界には長い歴史があり、多くのヒーローたちの物語があり、また多くの悪人たちの物語がある。

だが、ある日、ヒーローの活動は非合法化され、ヒーローたちは世界から姿を消した。それから長い日々が経ったある夜、一人の男が死んだ。彼は元、「コメディアン」と呼ばれるヒーローだった。

ヒーロー禁止法の下で、非合法に犯罪との戦いを続けているクライムファイター(ヒーローの一種で、人間の犯罪者と戦う人間を指す)、ロールシャッハが、事件の真相解明に向けて動き出す。果たして、誰がコメディアンを殺したのか?

ウォッチメンのネタバレ

ウォッチメン

ロールシャッハは地道に調査を進めていく。その過程で、割と気さくに、人を拷問する。悪漢から情報を得るためにはそれがもっとも効率的だからだ。特に、指をへし折るのが得意技で、「ロールシャッハ」といったら「指を折る」というのが定番ネタになっているくらいである。

もう一つ、ロールシャッハには奇妙な習慣がある。彼は、缶詰しか食べない。しかも、冷たいままの缶詰を、皿も使わず缶のまま食べる。唯一の友人である元ヒーロー「ナイトオウル」(二代目)のところに、情報交換などの目的で時々訪れるのだが、来るたびにドアノブを破壊して侵入し、勝手に部屋にある缶詰を食べる。ロールシャッハ自身にユーモア性のようなものがまったくないだけに、本人のまじめさとやっていることの落差がなかなか笑える。

紆余曲折を経て、ロールシャッハは次第に真相に近づいていく。コメディアンが殺されたのは、ある重大な秘密の計画について知ってしまったからだ。その重大な秘密というのは何か?どうやら、元ヒーローの一人でいまは大企業の経営者になっている、オジマンディアスが関わっているらしい。

ざっくり結論を言ってしまうと、コメディアンを殺したのはオジマンディアスだ。だが、そこは話の通過点でしかない。オジマンディアスの秘密の計画とは何か?それが話の中核となる。

ロールシャッハと、ヒーローに復帰したナイトオウルは、南極にあるオジマンディアスの基地を襲撃する。で、割とあっさり返り討ちを食らう。オジマンディアスは超人ではなく生身の人間なのだが、半端なく強い。銃弾を素手で掴んだりするくらいの真似をガチでやる。

オジマンディアスは語る。「私は数百万の人間を殺す。それをエイリアンのしわざに見せかける。そうすれば、アメリカとソ連(この世界にはまだソ連がある)の間に融和と協調が生まれ、世界には平和がもたらされるだろう」

ロールシャッハは「そんなことをさせるものか」と言うのだが、オジマンディアスは冷たく突き放す。「君たちに妨害される可能性がわずかでも残っている状況で、私が計画を話したりすると思うのかね?35分前に実行済みだよ」。

さて、実際にオジマンディアスによって多くの人が殺戮されるのだが、と同時に、米ソ両首脳が対話を開始し、オジマンディアスのもくろみ通り、世界には平和がもたらされる。

「わたしのしたことは間違っていなかった。君たちもそう思うだろう?」
と語るオジマンディアスに、ナイトオウルや、その場に駆け付けた他のヒーロー数人も説得されてしまう。

ところが、ロールシャッハだけが違った。ロールシャッハは言う。

「笑わせるな」

そして、ロールシャッハは、すべての事実を公表する、と宣言する。させたくないなら、自分を殺せ、と。ヒーローの一人が、実際にそれを実行する。ロールシャッハは、南極の地に散った。

しかし、ロールシャッハは、南極に向かう直前、捜査記録の一部始終をまとめた日記帳を、ある新聞社に送り届けていた。新聞社の若い社員が、その日記帳を手に取ったシーンで、この物語は終わる。

ウォッチメンの感想

ウォッチメン

重厚な、おそろしく重厚な作品である。総評としては「素晴らしい」の一言。アメリカン・コミックスの長い歴史の中でも、控えめに見積もっても五指には入る作品だ。ちなみに、作者の名前はアラン・ムーアという。彼自身は英国人だが、アメコミ界屈指の天才ライターだ。

さて、この物語の解釈で難しいのは、「結局のところ、オジマンディアスとロールシャッハはどちらが正しかったのか」という問題だ。表面上のことを見れば、世界に平和をもたらしたのはオジマンディアスであり、それをぶち壊すのがロールシャッハだ。ならば、オジマンディアスこそが正しかったのか?

読者の中にも、オジマンディアスを支持する声は少なからずある。しかし筆者が思うに、そもそも、作者アラン・ムーアの真意は簡単だ。彼ははっきりと、ロールシャッハを正義、オジマンディアスを悪として描いている、と考えられる。

なぜなら、ヒーローというものは、「効率」を優先して動くものではそもそも、ないからだ。一人の人間を犠牲にすることで十人を救えるとしても、決して一人の人間を犠牲にすることはしない。それが、(少なくともウォッチメンが描かれた当時の)一般的なアメコミにおけるヒーロー観であった。

オジマンディアスは、神として君臨することで人類を救済する道を選んだ。それは英雄的ではあったかもしれないが、ヒーロー的では決してないのだ。ヒーローは、自分の手の届く範囲で人を救い、自分の手の届く範囲で悪を討たなければならない。

ただの人間のヒーローであるロールシャッハが、神のごとき知恵を持つもう一人の、究極の悪人である人間と戦い、命まで投げ打って、ついに勝利を収める。ウォッチメンはそういう作品である。そして、その戦いを、アラン・ムーアは完璧なまでに描き切ったのだ。

筆者は随分とアメリカン・コミックスを読んできたが、これを「超える」といえる作品は一つもないし、並べて語れる作品ですら五指に満たない。自分の人生において、この作品に出会えたことが幸福であった。これは、そう言うに足る作品である。

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WATCHMEN(ウォッチメン)は洋書である。原書はAmazon Kindleストアで電子版が販売されている。しかし、日本語訳で読みたい場合は単行本としてAmazonで紙媒体販売されている。アメコミ史上最高傑作と名高いウォッチメンを日本語で読んでみたい方はAmazonで購入可能。

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