漫画「水上悟志短編集 放浪世界」ネタバレ感想!物語巧手&雰囲気良き大御所の短編集!

放浪世界

漫画「放浪世界」あらすじ

けっこうキャリアのある作家さん(代表作は『惑星のさみだれ』)による、独自の作風の強く打ち出された短編集である。短編集であるのであらすじはなし。

漫画「放浪世界」ネタバレ

竹屋敷姉妹、みやぶられる

見た目がそっくりで、姿恰好もそっくりで、一緒の学校に通っているがよくお互いに入れ替わったりしている双子の姉妹、竹屋敷冬花と竹屋敷雪花。お互いのことはトーカ、ユッカと呼ぶ。基本的に誰も彼女らを見分けることができない上に、行動も極力一緒にしている(友達関係など同行不可能な部分については夜に情報交換して共有している)。

ところがある日、クラスメイトの少年になぜか雪花を名指しされ、二人は激しく動揺する。特に冬花は、見抜かれたのが自分ではなかったということに軽い嫉妬心まで覚える自分を自覚して混乱するのであった。

ラブコメ、までもいかない少女たちのときめきの芽生えを描いた作品である。

まつりコネクション

「地球は侵略されている(かもしれないけど、どうやら違うっぽい)」。人間の頭の上に、なんていうか妖精のような不思議な生き物(異星人?)が住んでいて、それを見ることができるのは主人公の女性だけ、という奇天烈な世界を描いたシュールな現代ファンタジー。彼らは「ドワーフ」と言われているが、いわゆるあのドワーフではない。主人公の頭に住んでるのは、「みそ田楽」と名乗る、しかし外見は抹茶プリンにしか見えない妖精的な何か。ストーリーはあんましなく、よく分からないが雰囲気がしかし楽しい。

今更ファンタジー

唐突に「三つの願いが叶う魔法のランプを貰う」というところから始まる、一種のメタフィクション系ファンタジー。ほとんど一方的に「中学校の頃のヒーロー願望」を叶えられて妻子持ちの中年男が勇者にされ、魔王と数年がかりの激闘を繰り広げ、それがやっと終わったので「全てもとに戻してくれ」という願いで一瞬で夢のようにもとに戻り、あとは「家族の健康」を願っておしまい。なんていうか、寓話的な作品である。中国の古典とかに似たような奴があった気がする。

エニグマバイキング

こんなタイトルだが、妖怪の出てくる時代もの漫画。その男は、妖怪を喰らい、妖怪を狩る「闇喰い」と呼ばれる変わった職業についていた。妖怪を食べたがるもの好きな金持ちのために、妖怪を狩り、毒見と味見をして、商品を納品するのだ。ちなみに、妖怪を食べたがる物好きがそんなにたくさんいる世の中というわけではないので、何が大変ってスポンサーをまず確保するのが一番大変であるらしい。

さて、主人公闇喰い陣道はある日、のっぺらぼうを仕留めてその肉を納品するのだが、のっぺらぼうの肉には問題はなかったはずなのにもかかわらず、その客がお家騒動に巻き込まれて殺されてしまい……というシナリオ。

虚無をゆく

長いなと思いつつも一気に読み進めて、あとがきを読んだらこの話だけで74ページあるそうだ。原タイトルが「放浪世界・盤古」であるので、この短編集のいちおう、表題作でもある。

内容は、えーとまずジャンルはSFで、同じ人間のクローンが宇宙を放浪しながら「怪魚」と呼ばれる宇宙怪獣と、盤古というロボットに乗って戦い続けるというもの。500年くらいかかって、ついに宇宙怪獣の巣に到達することに成功するのだが、そこは実は……という話。

漫画「放浪世界」感想

放浪世界

さすがにベテラン作家の味というか、ストーリーテラーとしての確かな巧手と、それと同時に「特にストーリーは無いが雰囲気的になんとなくいい感じの話」の双方がうまく書かれている。

宵のひとときの時間つぶしなどには是非おすすめの短編集だと思う。


放浪世界

放浪世界

原作・著者水上悟志
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