高遠るい作「セカイ系漫画」SCAPE-GOD(スケープ・ゴッド)のあらすじ・ネタバレ・感想

スケープゴッド
作品名:SCAPE-GOD
作者・著者:高遠るい
出版社:メディアワークス
ジャンル:青年マンガ
掲載誌:電撃帝王

SCAPE-GOD(スケープ・ゴッド)のあらすじ

高遠るい作『SCAPE-GOD』(スケープ・ゴッド)は、「セカイ系SF百合バイオレンスアクション神伝奇」である。え、そう言われても何だかよく分からない?大丈夫、そのうち分かる。とにかく、作者自身がそう銘打っている以上、それで間違いないのである。

本作品の主人公、牧原緑は、ちょっとばかし借金を抱えた女子高生である。しかしあんまり、薄幸の少女という風情ではない。むしろ漢らしい。あと、同性愛者である。このことはただの出落ちの設定ではなく、物語の重要な伏線となっている。

この物語の世界の地球は、現実の地球とよく似ているが、一点だけ違う点がある。「特異」(エクストラニアス)と呼ばれる正体不明の怪物が時々現れて、人間を襲うのだ。日本国内における特異による年間死亡者数が約7500人で、特異に襲われるのは交通事故と同じくらいの不幸である、と冒頭で語られる。

緑は特異の為に母親を失った。父親は、物語に登場しないが、ギャンブル狂のダメ人間であるらしい。で、借金があるというわけである。

ある日、緑は特異に襲われる。足がすくんで逃げることもできない。そこに現れたのは、巨大な剣を持った、頭に羊っぽい角がある、謎の少女であった。少女は特異を一蹴する、こうして、緑と少女は出会った。そこから壮大なセカイ系SF百合バイオレンスアクション神伝奇物語が始まる。

SCAPE-GOD(スケープ・ゴッド)のネタバレ

少女と緑はなんとなく一緒に暮らすようになる(なお、緑は同性愛者であるわけだが、二人の間にそういう関係はない)。緑は名を持たぬ少女に「ひつじさん」という名をつける。ひつじさんは、自ら説明するところによると、なんと全宇宙の造物主で、すべての特異をこの宇宙に発生させた元凶でもあるという。全宇宙の造物主がポンと現れるあたりがこの物語の「セカイ系」たる由縁である。

ひつじさんと緑は二人で「特異を退治する会社」を設立する。この世界には、特異と戦う能力を持ったヒーローやら超能力者やらはまったく存在しないらしく、市場独占で緑は大金持ちになる(ひつじさんは神であるので、金銭などにはあまり頓着していないご様子)。

ひつじさんは創造神であるはずなのだが、その割には戦闘能力は微妙にしょぼい。まず、特異退治の依頼があまりにも頻繁に来るようになったため、一少女の形態のままでは不便だということになり、千体に分裂する(姿は全部同じ)。あげく「千体に分裂したから一体ずつの戦闘能力は激減した」というようなことを言い出し、たまに戦死者を出したりするようになってしまう。

そのような状況の中、人類はひつじさんによる特異退治独占状態を打破するため、「ブラックゴート」と呼ばれる戦闘用ロボット(見た目は美少女)を世に送り出す。しかしこのブラックゴート、実は「特異」がひつじさんを抹殺するために作り出した「偽りの神」であった。ブラックゴートの大群と、九百何十何人だかのひつじさんは相互に相打ちになり、全滅する。こうして、ひつじさんは「死ぬ」。

神は死んだのである。もっとも、幽霊(?)になってすぐ再登場する。そして、理屈は謎だが「地球にはもういられなくなった」と称し、去っていく。その際、置き土産に、「これを飲めば処女でも子供が産める」という怪しい薬を置いていく。緑はそれを飲み、子を為す。

ひつじさんの死後、特異は日増しに勢力を増して行き、人類はその生存を脅かされるようになる。

さて、緑が産んだ子は、羊(よう)と名付けられた。既に設定上自明であるのでお分かりかと思うが、処女懐胎によって生まれた子、神の子である。まともな子供であろうはずもなかった。羊は、人間によって生み出された、最後の「特異」であった。羊によって、人類は、滅ぼされる。緑だけは生き残るのだが、彼女もまた、既に人ならぬ存在となっていた。

羊は語る。これから、自らの分身であるブラックゴートを過去の世界に送り、「ひつじさん」を抹殺する。そうすることで、人類の終焉は完成する。それを止めたいのならば自分を殺せ、と。

緑は、苦悩の末、羊をその手で殺す道を選ぶ。

世界を滅ぼす魔の王たることを宿命づけられた悲劇の御子は、最後にこう漏らす。
「死にたくないよ 母さん」。
緑は優しく告げる。
「大丈夫 私がそばにいる」。

そして、タイムパラドックスが起こり、世界は再び、ひつじさんの来訪の場面まで巻き戻る。特異による全世界年間死亡者数が「5万人」である世界へと。

そして、戦いは再び始まる。

SCAPE-GOD(スケープ・ゴッド)の感想

なんとも、いわく言い難い、バカバカしいまでに壮大な、コミック一巻分にちょいとばかり設定詰め込みすぎなんじゃないかという感じの、まあ、つまりは、セカイ系漫画なわけである。

ストーリーもよく出来ているとは思うが、凝っているのは小ネタの部分だ。

ここまで説明してこなかったが、「特異」は、それぞれ固有の名もしくは種族名を持っていて、それは、現実の神話などに登場する神や怪物が大半だ。たとえば、アヌビス(エジプトの古代神)、斉天大聖(言わずと知れた中国の英雄神、孫悟空のこと)、リヴァイアサン(旧約聖書に登場する、最強の海の怪物)、アズィ・ダハーカ(ゾロアスター神話の魔龍)といった具合である。作者・高遠るいは、クリーチャーデザインに長けている。ぱらぱらと魔物の登場シーンとバトルシーンを眺めているだけでも、けっこう楽しい。

もう一つの魅力は、物語の各所にちりばめられた高度なオタクネタだ。

たとえば、物語ではじめて特異が登場するシーンでは、空間にヒビが入って割れてそこから怪物が飛び出してくるのであるが、これ、ウルトラマンA(エース)の超獣バキシム登場シーンのオマージュだそうである。いや、ふつうの人は言われなければそんなネタ分かるはずもないのだが、そういった小ネタの数々を、ぜんぶ作中の解説で解説しているのである。あわせて読むと二度おいしいという寸法だ。

ちなみに、本書の紙書籍版は長らく絶版で、入手困難となっていた。幸い、今はこの通り電子書籍版で読むことができる。ありがたいことである。

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