漫画「帰ってきたサチコさん」ネタバレ感想！切ない別れと再会をテーマにした短編集

漫画「帰ってきたサチコさん」は「ハクバノ王子サマ」「つゆダク」「お慕い申し上げます」「神様の横顔」等の作者である朔ユキ蔵先生の作品。紙媒体の単行本は2015年6月に発売、電子版は1ヶ月遅れの2015年7月に配信開始されています。

flowersで掲載された作品を集めた短編集となっており1巻完結型。全5つのエピソードが収録されています。

全ての作品でテーマは「別れと再会」となっており、切ないですが最終的に前を向いて進んでいこうと思わせてくれる素晴らしい漫画です。

全てのエピソードが印象的で心にグッと刺さるモノがありました。泣けて心から温かくなれる漫画。嫌なことがあったけど前向きに生きたい…！なんて人は本当に心に沁みる作品ですよ☆彡

漫画「帰ってきたサチコさん」ネタバレ

帰ってきたサチコさん

この漫画の表題作。

理由はわからないが1930年代〜1940年代にタイムスリップして10年をそこで生活したサチコさんが現代へ舞い戻ってくる物語。

過去の時代でサチコは夫、子供もおり、幸せに暮らしていたが心のどこかにあった元の時代に帰りたいといった気持ちが夫との心を引き剥がしていく。

現代に戻ってきたサチコの肉体は10年の歳月を得ており、過去の10年は現代の10ヶ月分に相当していた。ただ肉体は10年経過しているので周りの友人達より一層と老け込んでいるサチコ。

本題はそこではないが、何十年の時を得て紡がれる夫とサチコの切なくも晴れ晴れしい別れと再会を描いています。

走れみつる

アイドルに憧れてアイドルになった女性：みつるの物語。

アイドルとして落ち目になっていたみつるに舞い込んだ仕事。それは過去に憧れていたアイドル：広沢まりもと再会することであった。自分をアイドルの道へと引き込んだ彼女と出会い、何を感じ、何を想うのか…。

理想と現実の違いが垣間見えたり、憧れたアイドルの最後を看取ることで新たな夢を目標に駆け抜けようとするみつるが最高に眩しく見える短編集です。

かりそめ

脚本家である千代田といった男性の『かりそめ』から脱出をするエピソード。

意外とファンタジーに仕上がっており、妖精（？）が出てきたり、夜空を飛空したりなど少し毛色の違った作品となっています。

昔の出来事を思い出して1人の女性と再会を果たし、夢なのか…現実なのか…2人で夜空の中を飛行して一歩を踏み出そうとする。そんな作品に仕上がっています。

心ここにあらざれば

15歳にして心を捨てた王妃と王の物語。
父に裏切られて15歳で王妃となり国を任されることになる王妃や王は2人で心を捨て国の繁栄に命を捧げていきます。

しかし、裏切り者を絶対に許さない無慈悲な王妃の前に先王と不満を持つ民が集結して打倒・王妃を掲げます。

心を捨てた王妃に死は怖くありませんでしたが最後に心を取り戻した王が王妃を守ります。同時に王妃にも心が取り戻されて死の直前で人間らしさを取り戻す2人。父の想い、民の想いを悟り、息絶えていく切ないファンタジーエピソードです。

劇的

ある本を読書していると必ず弟の悪い知らせが届く井上マキといった女性のエピソード。

幼少期に8巻まで読んでいたシリーズだったが弟の悪い知らせを聞いてから本を読むことがトラウマとなります。20年の時を得てマキのいわく付きのシリーズが完結することになり、作者のサイン会の手伝いをすることに。

本を読むわけではないので大丈夫と安心していたマキですが母親から突然の電話。

それは弟の悲報でした。

弟といきなり死別したマキの心の想いが吐露され、思い出が甦り、一区切りをつけていく作品。

これが最も印象深いエピソードでした。
最後、弟に贈る言葉として「30年の生涯を終え…旅立つ弟を…祝して乾杯！」といった姉弟だからこそ言える死者を祝う言葉は本当に胸に突き刺さる印象深い場面でした。

切ないエピソードだけど最後は晴れ晴れとさせてくれる素晴らしいお話です。

漫画「帰ってきたサチコさん」感想

短編で終わらせるのが勿体無い素晴らしいエピソードが5つも収録されている漫画。内容は切ないのですが人間の力強さや直向きに前を向こうとする人間臭さが滲み出ている作品でした。

各エピソード共に短編なので急ぎばやに物語は進行していく部分もありますが、読了後は非常に充足感に包まれる作品です。

各話を切り取って長編漫画として売り出しても良いくらいクオリティも高く最終的に晴々しい気持ちにさせて貰えました。是非、興味がある方はチェックしてください。名作短編集です☆彡